60代二人以上世帯の貯蓄額・負債額 60代からの資産形成でやるべきこと 

基礎知識向上委員会
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60代の皆さん。皆さんの勤め先に定年制度はありますか?あるとしたら何歳まででしょうか?
定年後に悠々自適の生活を謳歌している人、仕事が大好きで働き続けている人、働かざるを得ないから働いている人、いろんな方がいると思います。
この記事では、日本の二人以上世帯における貯蓄額・負債額に関するデータを元に、60代の皆さんが資産形成に取り組もうと思えるように、そして、取り組むにあたってまずはどんなことをやっていけばいいのかについてアドバイスしていきます。
私は今40代中盤のサラリーマンです。この歳にして資産形成にようやく本気で取り組み始め、真剣に学んで得た知識を元に、同世代の大切な友達や将来の子供達にアドバイスするとしたらどんなことを伝えるのか。そして私自身は60代で何をすべきと考えているのか。そんな趣旨で60代の皆さんの背中をそっと押せたらいいなと思っていますので、ぜひ参考にしてみてください。

※この記事では特に注記がない場合、以下で公表されている情報を用いています。
  家計調査年報(2023年)貯蓄・負債編(二人以上世帯)

60代二人以上世帯の詳細データ

使用するデータの前提や全体の平均値などはこちらの記事「日本人(二人以上世帯)の貯蓄と負債の現状 資産形成を始めよう!」を参考にしてください。
また、平均年収のデータについてもこちらの記事「日本人の平均年収は? 自分の現在地を確認しよう」で紹介していますので、参考にしてください。

60代の貯蓄額・負債額

こちらが60代二人以上世帯の平均的な貯蓄額・負債額です。
純資産の欄は単純に貯蓄額ー負債額を僕が勝手に追加したデータです。この貯蓄額には不動産などの現物資産は含まれておらず、厳密な意味(簿記的な意味)での純資産ではありません。
詳細データをチェックしてみましょう。

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✅ 調査世帯数:1,035世帯
✅ 世帯人員:2.61人
✅ 有業人員(世帯あたりの勤労者数):1.45人
✅ 世帯主の年齢:54.7歳
✅ 持家率:91.6%

60代の特徴としては18歳未満人員がほぼいなくなること(0.07人)でしょうか。ほとんどの世帯で子供の手が完全に離れていると思われます。
収入は大きく減っていますが、負債はそれ以上に減少しており、貯蓄額が一気に増えています。間違いなく退職金の影響と言えるでしょう。
持ち家率は90%を超え、上昇率も40代から50代よりも大きくなっていますので、このタイミングで家を購入する世帯も多い印象です。キーポイントは急激に増えた現金資産を今後どうしていくか。といった点になるでしょう。しっかりとライフプランを考えていきましょう。

60代の貯蓄・負債の内訳

貯蓄と負債について、内訳を見ていきます。

では考察していきます。
そう貯蓄額が50代の1,705万円から一気に増えていますが、資産の種類の割合には大きな変化は見られません。生命保険などが初めて減少しているのは特徴的です。その分は「定期性預金」にまわっている印象です。有価証券も若干増加していますが、この要因が運用益なのか、退職金の一部が回された結果なのかはこのデータからでは判別できません。
割合としては減っているとはいえ、「通貨性預金」が800万円以上というのは少し多いかなぁという印象です。40代・50代よりは確実に生活費が下がっているはずですので、収入の範囲で生活できる世帯であればまだまだ資産形成を考えることは有効な年代です。

ただし、投資経験がほとんどない人には、この年代からの株式投資はお勧めできません。特に退職金が入ると銀行などから運用を勧められるケースが多々あるようですが、ほぼ間違いなく「金融機関側がより儲かる商品」しか勧めてこないですので、人に言われるがまま購入するのは絶対にやめましょう。定期性預金よりは十分なメリットが期待できる債券での運用が検討のメインになってきます。

長期間投資を続けてきた方は、できれば定年前に改めてご自身の出口戦略を見直しましょう。
年金・退職金・確定拠出年金などは受け取り方によって税金がかなり変動します。勉強すべきことはたくさんありますが、今後の生活に大きく影響しますので、面倒がらずに情報収集に努めましょう。
インデックス投資などを継続してきた方は、取り崩しを定額で行うのか、定率で行うのか、改めて検討し、自分の判断能力が鈍る前に仕組み化しておくことを推奨します。


60代から始める資産形成

これまでのデータを踏まえた、60代から資産形成を始める方へのアドバイスです。
これは私が40代にして資産形成に本気で取り組み始めて学び、50代で実践しようとしていることを書いています。もちろん本気のアドバイスですが、鵜呑みにすることなく、自分で勉強を始めるきっかけにしてくれたらと思います。
(ここに書かれていることを実行したことにより何らかの損失等を被った場合でも、一切責任は負えませんのでご了承ください)

60代へのアドバイス

まず最も強く意識して欲しいのは、「今ある資産を死守する」ことです。先ほども書きましたが、退職金を手にするとそこらじゅうから「資産運用しませんか」と声がかかってくるようです。投資対象は株式・投資信託・不動産・コモディティ(金などの現物資産)など様々ですが、人が勧めてくるままに購入するのは「絶対にNG」だと心に誓ってください。

「今までずっとお世話になってきた銀行だから信用できる」そう考えてしまう気持ちはとても理解できますが、必ず自ら資産運用に関して勉強してから話を聞くようにしてください。ただ、私がこう言い切る背景には、「現代の60代ならある程度インターネットは使える。」という想定が入っています。(このブログを読んでいただける方なら間違いなく使えるでしょう。)もし、インターネットなんてほとんど使えないという方であれば、100歩譲ってお世話になった銀行員の話を聞くことはOKですが、「信託報酬0.2%を切る毎月分配型でない投資信託なら考える」と伝えて相手の反応を見てみるようにしてください。そしてその場で即決せず、その条件で進められた投資信託の目論見書を穴のあくほど読んだ上で、「投資した資金がたとえ一時的に半値になっても大丈夫だと思える金額」の範囲で購入を検討してください。

今まで投資をほとんど経験したことはないが、インターネットは使える。という方は、ぜひ自らネット証券を開設し、債券に投資することを検討してみてください。2年以上使わない見込みの金額であれば、変動金利10年の日本国債を購入すれば、元本保証で定期預金以上の利回りを確保できるはずです。
なぜそう言えるのかは理解してから購入しましょう
特にこれまで投資の経験がない方は、自身の年齢と現状の資産、残された運用期間がどの程度あるかについて十分考えた上で判断する必要があります。より早く資産形成に取り組んできた方より「難しい判断」を迫られますので、その覚悟を持って臨んでください。

なお、健康寿命(男性約72歳、女性約75歳)を考えると、60代前半であればまだぎりぎりインデックス投資に回して長生きリスクに備えるという判断ももちろんありだと思います。ご自身の資産状況・生活費などを鑑み熟考した上で、10年(できれば15年)以上保有を続けられそうな金額であれば、インデックス投資も選択肢に入れて考えてみましょう。

Point

✅ 他人が勧めてくる投資商品の購入はNG!
 →60代以降は「貯める・増やす」から「守る・使う」フェーズに入ります。自分の資産を死守しましょう。
✅ 退職金を確認しよう!
 →定年を迎える前であれば、退職金を事前に正確に把握しましょう
✅ 年金受給額を確認しよう!
 →ご自身及びパートナーが受給できる年金の見込額を確認しましょう。
 →勤務先に企業年金制度がある場合はその受給額と年数も確認しましょう。
 →勤務先で確定拠出年金(企業型DC)に加入している場合は、運用状況を確認しましょう。
✅ 定年後の生活費を把握しよう!
 →子供が手を離れた後の生活費をベースに、老後の生活費を把握しましょう。
✅ 老後戦略を立てよう!
 →勉強した投資の知識と把握した現在及び未来の資産情報から、今後の戦略を立てましょう。

かなり抽象的なアドバイスになってしまいました。老後に向けた戦略は、各自の状況によって全く変わってきますので、どうしてもご自身で考えていくしかないと思います。
これまであまり投資をしてきてない方であれば、メインで考えるべきは「各種年金制度の受け取り方」戦略です。年金について解説する記事も今後書きたいと思いますが、種類だけでも「国民年金・厚生年金・確定拠出年金(DC,iDeco)・企業年金(DB)」など数多くあります。受給開始年齢や選択肢もそれぞれ異なりますので、ご自身の今後の生活にあった受け取り方を検討しましょう。

一例ですが、最も判断が難しいのが確定拠出年金(企業型:DC、個人型:iDeco)です。退職金と同時に受け取るのか、どちらかをずらすのか、一括で受け取るのか、年金として受け取るのか。などの判断によって同じ金額でも支払わなければならない税金が大きく変わってきます。しかも誰にでも適用できる正解がなく、収入の額や加入年数などによって最適解が個人個人変わってきますので、しっかりと知識を身につけましょう。

また、実際には投資をしないとしても、投資に関する勉強は退職前までに絶対にしておいた方がいいです。目的は、定年後に退職金を目当てにした各社の営業マンに余計なものを買わされないようにするためです。ろくに勉強せず、とんでもなく高コストな投資信託を買わされてしまうくらいなら、運用期間があまり長く取れないことを承知で自ら信じたインデックス投信や債券に投資されることを強くお勧めします。

これまでのデータを見て、「自分は平均以下だなぁ」という人はもちろん、平均以上の貯蓄額を持っている人でも、何となく将来には不安を感じていると思います。金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査2023年」では、老後の生活への心配について、「多少心配」と「非常に心配」を合わせて78.5%もの人が不安を感じていることがわかります。
それでも、資産形成について勉強し、実際に取り組み、計画通りに進めることで、この不安はどんどん薄くなっていきます。収入の大小はあまり関係なく、目指す目標がはっきりしていて、着実にそれに向かっているという実感が安心を生むのだと思います。

投資について勉強を始めると、60代は「もっと早く勉強して投資を始めていれば良かった」と考えてしまう年代かもしれません。また、「今からでも間に合うかも。退職金で十分現金はあるし、リスクが多少高くても、一気に増やせる可能性に賭けてみよう」という危険な考えを抱いてしまう可能性もあります。それでも何も知らずに老後に突入するよりは、どんなタイミングからでも勉強して知識をつけていくことで良い老後生活を迎えられることは間違いありません。
これからも資産形成に役立つ情報を発信していきたいと思いますので、参考にしてください。

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