従業員持株会、本当にお得?気をつけたい落とし穴とおすすめできない理由

基礎知識向上委員会

会社から「持株会どう?」と勧められて、なんとなく加入している方も多いのではないでしょうか。
奨励金が付くからお得、積立だから手間がかからない――そんなイメージが先行しがちですが、実際には“見えづらいリスク”が潜んでいる制度でもあります。

今回は、あえて慎重な視点から「従業員持株会の本当の姿」に迫ります。


従業員持株会とは?簡単におさらい

従業員持株会とは、社員が毎月の給与から一定額を拠出し、自社株を購入する制度です。
多くの会社では「奨励金」として拠出額に上乗せをしてくれます。

たとえば、月1万円の拠出で奨励金10%なら、11,000円分の自社株を購入できます。

一見、魅力的に見えますが――果たして、本当に“お得”なのでしょうか?


表面的なメリットに注意!こんな“落とし穴”がある

1. 投資先が自社株だけという“集中リスク”

持株会の最大の弱点がこれです。
自分の給与も、自分の投資も、どちらも「会社の業績」に大きく依存するのです。

もし業績が悪化すれば、

  • 給与・ボーナス → 下がる
  • 自社株 → 値下がりする
  • 最悪の場合 → 退職とともに株価暴落

というダブルパンチ・トリプルパンチを受ける可能性があります。


2. 自由に売却できない=“流動性リスク”

証券口座のようにリアルタイムで売買できないのも大きなデメリットです。

  • 売却には数日〜数週間かかる
  • ロックアップ(売却制限)期間がある会社も
  • 退職時に一括売却になる可能性も
  • 証券口座が自由に選択できない

つまり、急な資金が必要になってもすぐに現金化できないのです。


3. 株価が下がれば奨励金も帳消しに

奨励金が魅力とはいえ、株価がそれ以上に下がれば元本割れします。

たとえば、奨励金10%でも株価が20%下がれば、全体で見れば大きなマイナスです。

しかも、自社の経営状況に不安を感じたときほど、売りたいのに売れないというジレンマに陥りがちです。
また、奨励金そのものは購入金額に対する割合で決まるため複利効果は得られず、保有株式の評価額が大きくなればなるほど奨励金の効果は薄まっていきます。


4. 投資の自由度が非常に低い

つみたてNISAやiDeCoのように、投資対象を選ぶこともできません。
他の銘柄に分散もできず、経済全体が伸びていても自社が不調なら自分の資産も増えないという構造です。


それでも加入すべき人っているの?

以下のような条件がそろっているなら「一部の資産として持つのはアリ」かもしれません。

  • 奨励金が非常に高い(20%など)
  • 自社の業績が安定していて、長期的にも将来性がある
  • リスクを理解し、持株会は資産全体の一部にとどめている
  • すぐに使う予定のない余剰資金で拠出している

つまり、「よくわかってやってる人」にとっては使いようがある制度です。


まとめ|資産形成の軸にすべきではない

従業員持株会は、奨励金などの“目先の得”に目が向きがちですが、
本質的には「リスクが高く、分散もできない、自由度の低い投資方法」です。

資産形成の基本は、
✅ 分散投資
✅ 自由な売却
✅ 長期的な成長性を重視

この3つが揃うNISA・iDeCoなどを効果的に使ったインデックス投資のほうが、はるかに安定性と将来性に優れています。


自由に売却できないことは、すぐにお金を使ってしまいがちな自分にとってはメリットだ。そう感じる方もいるかもしれません。その場合でもiDeCoの方が断然お勧めです。

確定拠出年金についても紹介記事を書いていきますので、お楽しみに!

余談|だからと言ってすぐに売却する必要はない

ここからは余談として僕の経験談を少し。

僕はここまで書いてきた知識を得た段階で、すぐに持株会を解約しました。(売却したわけではない)
しかし、「余剰資金の一部で積み立て、単元株(100株)以上になったら売却してインデックスファンドを購入」といった使い方をしている方がいることを知り、「これでも良かったかなぁ?」なんて思っています。笑

僕の場合は手数料の高い大手証券会社に口座を限定されているため、それでも解約して良かったと思っています。こういった使い方もあることを知って、ご自身に合う運用方法を考えてみてください。

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