FIREとは? 経済的自由を目指すべき理由とメリット・デメリットを解説

基礎知識向上委員会

日本でも話題になってから十数年。言葉としては定着した「FIRE(ファイア)」。今、流行り始めた10年前とは少し風向きが変わってきています。

Financial Independence, Retire Early

労働ではなく資産が生み出す所得による経済的自立と早期退職を意味するこの言葉は、10年前の「憧れ」から、「誰もが目指すべきもの」へと変貌してきています。
その理由は、「定年まで勤め上げたサラリーマンが、退職金と年金で悠々自適な生活を送る」という昭和・平成の老後の理想像が崩壊しつつあることです。「普通」に生きていれば「終身労働」確定レベルと言えるかもしれません。
つまりこれからの時代、健康寿命を迎える前に「働かない」という選択肢を取れるようになれば、それが何歳であっても「FIRE」を達成したと言えるのではないでしょうか。

そこで今回は様々な種類が生まれている「FIRE」についてあらためて理解し、それぞれのメリット・デメリットについて解説していきます。自分が目指す「生き方」について、考えるきっかけになれば幸いです。

FIREを目指すべき理由

まず、FIREを誰もが目指すべき理由です。

✅ 少子高齢化に伴う社会保障制度の劣化
✅ 減り続ける退職金
✅ 終身雇用の崩壊

今回はFIREの解説がメインですので、この辺はざっくり解説していきます。

少子高齢化に伴う社会保障制度の劣化

アメリカを除く先進国すべての悩みである人口の減少。医療技術や生活環境の向上により寿命は延びているため、どうしても少子高齢化は進みます。結果、社会保障制度は「破綻しないために」改悪せざるを得ない。現代はこんな負のループに入ってしまっています。
統計局のデータによれば、2005年頃から減少に転じ、今や毎年0.6%程度のペースで人口は減り続けています。

Screenshot

ピーク時1億3000万人弱だった人口は、2050年には9500万人まで減少するとの試算もあります。
何かしら革命的な出来事により急に人口増加に転じることなんてあり得ません。だからこそ社会保障制度の改悪は今後も続いていきます。経済的自立を目指しましょう。

減り続ける退職金

退職金については、そもそも支給されない企業の割合が増え続けています。りそな年金研究所の調査では、2002年に10%だった割合が、2022年には28%まで増加しています。
もちろん一時金・企業年金ともにその金額も減少の一途です。こちらは人口減少よりはまだ改善の可能性があるとは思いますが、まあ希望は持てないでしょう。
企業側からすれば法的制約がなく、制度を維持している理由も「いきなりやめちゃうと従業員や世間からの風当たりが強くなるかも」程度のことかもしれません。そう思っておいた方がいいです。
今後もこの傾向は続くのではないでしょうか?経済的自立を目指しましょう。

終身雇用の崩壊

2019年、名実ともに日本のトップ企業であるトヨタ自動車の社長から「終身雇用を守っていくのは難しい」との発言が飛び出し、大きな話題となりました。ここまでの2つとは違い、こちらは「FI(経済的自立)」前に強制「RE(リタイア)」させられる危険性があるということです。
日本でも「転職」がかなり身近になってきました。もともと終身雇用はアメリカを真似た制度ですが、現在のアメリカは完全な実力主義社会となっています。やっぱり日本はこれまで通りアメリカに追従していくことでしょう。

ただこれは、本業に全力でコミットする若者や、スキルアップしてより自分の市場価値を高める努力を続ける若者には悪い話ではありません。これからも頑張っていきましょう。

仕事が楽しくてしょうがない。定年までとは言わず、死ぬまで働きたい。本心からそう思えている人は無理にFIREを目指す必要はないと思いますが、そこまでじゃなければ、経済的自立を目指しましょう。

FIREの種類

FIREには、以下のような種類があります。

FIREの種類

✅ ファットFIRE
✅ リーンFIRE
✅ サイドFIRE
✅ バリスタFIRE
✅ コーストFIRE

ファットFIRE

完全に仕事からリタイアし、娯楽費等を含むすべての支出を不労所得で賄う状態をファットFIREと呼びます。

明確な定義はないですが、次の「リーンFIRE」との区別として「どれだけ使っても使い切れないだけの不労所得がある」このような意味が含まれていますので、達成は相当に困難です。
サラリーマンが最初からここを目標にしてしまうと間違いなく失敗すると思います。(目指す過程で形成した資産は無駄にはなりませんので、目指すべきではないという意味ではありません。
仕事が好きで、莫大な収益を上げることで、気づいたら達成していた。達成するとしたらそんなケースではないでしょうか。ただ、そういう人はそれでも何かしら仕事をしていると思いますので、真の達成者はもしかしたらこの世に存在しないのかもしれません。笑

リーンFIRE

こちらも仕事は完全リタイアですが、ある程度質素に生活する状態をリーンFIREと呼びます。

昭和の終わりから平成中期にかけての退職者は、年金だけで「普通」の生活ができるという点でリーンFIRE達成者が多いのではないでしょうか。(もっと前はファットFIREに近い)
僕は60歳でのリーンFIREを目標にしています。定年も年金受給開始もどんどん後ろ倒しになることが予想される中、少し前までの定年である60歳でリーンFIREできれば、現代では十分早期リタイアだと胸を張って言えると思います。
平均寿命は男女とも80歳オーバーですが、健康寿命は男性73歳、女性75歳と言われています。やりたいことができるうちにFIREを達成したいものです。

サイドFIRE

必要最低限の生活費は不労所得で賄い、労働で得た収入を趣味や娯楽にあてるといったスタイルをサイドFIREと呼びます。

FIREという言葉が生まれる前は、「セミリタイア」と呼ばれていた形でしょうか。人生のどのステージでここに辿り着くかで意味合いは結構変わると思いますが、サイドFIREであればかなり若いうちに達成することも十分可能だと思います。本業・副業でしっかりと収入を得ること、そして資産運用について学び、倹約・投資に励むことが必須ではありますが、誰でも、何歳からでも目指せるFIREの形ではないでしょうか。

バリスタFIRE

サイドFIREと生活スタイルは同じですが、労働の部分をパートやアルバイトといった雇用された労働者に限定してバリスタFIREと呼びます。

アルバイトなどでもサイドFIREと呼ぶことはあり、サイドFIREの方が広く使われますので、言葉だけの紹介にしておきます。

コーストFIRE

資産状況としてはリーンFIREを達成しているものの、趣味の一環として仕事を続けるスタイルをコーストFIREと呼びます。

本当に好きなことだけを仕事にできる。これがコーストFIREの魅力だと思います。実質的には利益なんてなくてもいいんです。赤字はダメですが。実際のFIRE達成者の中では、これが一番多いのではないでしょうか。結局暇すぎて仕事を始めたなんて体験談もよく目にします。

FIREのメリットとデメリット

FIREのメリット

FIREのメリット

✅ 老後の不安がなくなる
✅ 働かないという選択肢が選べる
✅ 金融リテラシーが高まる

FIREを達成するには、資産を適切に運用することが必要です。これにより達成した頃には必ず金融リテラシーが高まっているはずです。
そして、資産がもたらしてくれる利益によって、「働かない」という選択肢が取れるようになり、人生の自由度が飛躍的に向上します。サイドFIREであっても、そこまでに「金融リテラシー」や「貯める力」が十分に高まっているはずですので、目標としたタイミングまでにリーンFIREを達成することは比較的簡単です。いずれは働かないことを選択することができるでしょう。

公益社団法人 生命保険文化センターの調査によれば、約82%の人が老後に何かしらの不安を抱えています。どのような形であれFIREを達成するということは、少なくともお金の面では老後に不安を抱くことはなくなります。


「老後の不安を抱かなくていい」という状態は、老後だけでなく現在の幸福度も上げてくれる最大のメリットだと考えます。

FIREのデメリット

FIREのデメリット

✅ 想定が甘く老後資金が不足する
✅ 急な出費に対応しにくい
✅ 年金受給額が減る

最後にデメリットを紹介しましたが、これらはいずれも「最悪を想定」して準備してあれば、十分対応が可能なものです。そのためには投資だけでなく、社会保障制度などについてもしっかりと知識を身につけておくことが重要です。

まとめ

今回はFIREを目指すべき理由・FIREの種類・FIREのメリットとデメリットについて解説してきました。
誰か一人でも「FIREを目指そう」そう思ってくれたら嬉しいです。

これからの日本はただただ「普通」に生きていくだけでは必ずどこかで行き詰まってしまう時代です。
僕も遅ればせながら60歳でのFIREを達成するために全力で取り組んでいきます。同じように資産形成に取り組むみなさんに、少しでも有益な情報を発信していきたいと思いますので、ぜひ参考にしてください。

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