こんにちは、飛雄です。
今回のテーマは、長期のインデックス投資家が必ず理解しておきたい
「株式投資のリターンの源泉」についてです。
結論から言うと、この記事でいちばん伝えたいのはこの一点です。
株式というアセットに期待できるリターンは、
長期的にはどんな国・どんな指数でもほぼ同じになる
だから指数選択は「リターン」ではなく「リスク設計」の問題である
「オルカンとS&P500はどっちがいいの?」
「両方買っちゃいけないの?」
こうした疑問は、この前提を押さえていないと正しく考えることができません。
この記事を読み終える頃には、
自分の信じるインデックスを腹落ちさせて持ち続けられる、
そんな“握力”が身につくはずです。
※「オルカン」はMSCI ACWIの配当込み円建てへの連動を目指す
eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)の愛称です。
この記事では指数名としてMSCI ACWIまたはACWIという表記を使いますが、
≒オルカンと考えてもらってOKです。
※この記事は、長期のインデックス投資で資産形成を目指すことを前提としています。
株式の平均リターン=リスクプレミアムとは何か
個別株とインデックス投資の決定的な違い
個別株の場合、数年で10倍になる銘柄もあれば、
倒産して紙屑になってしまう銘柄もあります。
一方、インデックス投資は、
「個々の銘柄の値動きなんて誰にもわからない。
だから市場全体をまとめて買ってしまおう」
という発想に立つ投資手法です。
数年で何倍にもなるチャンスは放棄する代わりに、
倒産して無価値になるリスクも回避する。
その代わりに得られるのが、「市場平均のリターン」です。
株式の期待リターンはどのくらいか
投資の世界でいう「リスク」とは、
基本的に「値動き(不確実性)の幅」を意味します。
そして、リスクを取る以上、それに見合うリターンが要求されます。
これを リスクプレミアム と呼びます。
歴史的には、株式というアセットに期待できるリスクプレミアムは
無リスク金利+5%前後 とされることが多いです。
無リスク金利は通常、信用力の高い国の国債利回りが使われます。
2026年2月時点では、
- アメリカ10年国債:4.218%
- 日本10年国債:2.237%
なので、理論上は 年率7〜9%程度の期待リターン が見込める、
という計算になります(もちろん15年以上の長期投資が前提です)。
※これらは期待値ベースの話であり、実際の年ごとのリターンはこれより上下します。
リスクプレミアムの正体は「企業の努力」ではなく「価格形成」
ここで大事なのは、この5%という数字は、
「企業が株主に5%くらい還元しようと決めている」
から生まれているわけではない、という点です。
実際には、
すべての投資家の期待リターンの平均が
その水準になるように株価が形成されている
というのが本質です。
つまりリスクプレミアムとは、
投資家がリスクを取ることに対して要求する報酬の平均値
だと言えます。
株式の平均リターンを100%受け取る理論解
理論上の正解は「世界中の株式を時価総額加重で保有する」こと
ここまでの話を整理すると、
株式の平均リターンを余すことなく享受する方法
は、理論上こうなります。
世界中で投資可能なすべての株式を
時価総額加重で保有する
これが「市場ポートフォリオ」と呼ばれる、理論上の最適解です。
しかし、それは現実には不可能
ただし、これは現実的には不可能です。
個人投資家はもちろん、巨大な機関投資家であっても、
- 世界中すべての株式を網羅的に保有することはできない
- 仮にできたとしても、売買コスト・管理コストが膨大になる
ため、実用的な投資商品として成立しません。
だからこそ、MSCI ACWIという指数が存在する
ACWIは「市場平均」をどこまで再現しているのか
この理論解の 現実的な近似値 を目指して設計された指数が、
MSCI ACWI(All Country World Index) です。
ACWIは、
- 先進国23カ国
- 新興国24カ国
- 合計約2,500銘柄(2025年7月時点)
を時価総額加重で組み入れ、
世界の株式市場時価総額の約85% をカバーしています。
ACWIはなぜ“十分すぎるほど”分散されているのか
構成銘柄数は年々変動しますが、
時価総額カバー率と銘柄数の絶対値の両面から見て、
「株式というアセットの平均リターンを受け取る」
という目的においては、
すでに十分すぎるほどの分散が効いていると言えます。
運用期間を「永久」とした場合、ACWI以外の選択肢はなくなる
なぜ期待リターンはすべて平均に収束すると考えられるのか
ここで、少し思考実験をしてみましょう。
もし運用期間を、
「資本主義社会が続く限りずっと」
という 永久 に設定したとすると、
どんな国の株式市場も、どんなセクターも、
最終的には株式というアセットの平均リターンに収束する
と考えるのが合理的です。
なぜなら、ある国や産業が永遠に市場平均を上回り続けるなら、
資本はそこに集中し続け、最終的には割高になって
期待リターンは平均に引き戻されるからです。
国別シェア推移グラフが示していること
こちらは、1784年から2022年までの
世界株式市場における国別時価総額シェアの推移を示したグラフです。
見てわかる通り、市場をリードする国は常に入れ替わっています。
19世紀はイギリス、
20世紀後半は日本、
そして現在はアメリカ。
どの国も、永遠に覇権を握り続けたわけではありません。
ACWIは、このすべてを丸ごと保有し、
「資本主義社会全体の成長を取り込む」
ことを目的とした指数です。
したがって、運用期間を永久と仮定するなら、
ACWI以外の指数を選ぶ合理的な理由はなくなります。
なぜなら、期待リターンは同じなのに、
リスクだけが増える構造になるからです。
それでも現実の投資では、ACWI以外を選ぶ合理性もある
投資期間が有限である以上、勝ち続ける国・セクターは存在する
ただし、現実の投資家が運用を続けられる期間は、
せいぜい数十年です。
すると、ある特定の期間を切り取れば、
市場平均よりも高いリターンを出す国やセクター
は必ずどこかに存在します。
例えば1960年から1990年の30年間で見れば、
ACWIよりもTOPIX(日本株式市場平均)の方が
リターンが高かった時代もありました。
また、過去約150年、とくに1860年以降は、
アメリカが急速に世界市場シェアを拡大していますので、
結果としてACWIよりS&P500の方が
高いリターンを出してきました。
S&P500とNASDAQ100が過去に優れていた理由
「ACWIとS&P500、どっちを選んでも変わらない」
と言われることがありますが、
これは、
現在、世界株式の約60%をアメリカが占めており、
短期的には値動きが似通いやすい
という状況が前提にあります。
また、「ACWIよりS&P500の方がいい」という意見は、
アメリカは今後も市場平均を上回る成長を続ける
という仮説が前提にある、ということになります。
NASDAQ100についても同様です。
こちらは過去200年のアメリカ市場における
セクター構成比の推移を示したグラフです。
NASDAQ100は、NASDAQ市場に上場する企業のうち
金融セクターを除いた上位100銘柄で構成されており、
市場自体が通信・情報技術セクターに強く偏っています。
とくにこの100年ほどはハイテク企業の時価総額が急拡大したため、
結果としてS&P500を上回るリターンが得られました。
ただしこれは、
ハイテクセクターが今後も市場平均以上の成長を続ける
という前提に立った投資であることを、
自覚した上で選ぶ必要があります。
それでもオルカン以外を選ぶなら、必要なのは「目的の明確化」
これまで見てきた通り、
「株式というアセットの平均リターンを取りに行く」
という目的においては、
ACWIが理論的な基準点になります。
それ以外の指数を選ぶなら、
- 自分の運用目的は何か
- ゴールはいつか
- どんなリスクを取る覚悟があるのか
といった 目的の明確化 が不可欠です。
さらに言えば、
投資に回せる余剰資金の全額をACWIに充ててもなお
リスク許容度に余裕があり、ACWI以上のリスクを取りたい
と自信を持って言える人以外が、
ACWI以外を選ぶのは、理論的には合理的とは言えません。
このあたりは資産配分の話とも深く関係しますので、
別の記事で詳しく解説していきます。
僕がオルカン以外を買う理由
ここで、僕自身の話を少し。
僕のポートフォリオのメインは、S&P500です。
ACWI以外をメインに据えるということは、
生活防衛資金・生活費・特別費用を除いた
余剰資金はすべてインデックス投資に回している
という前提に立っています。
投資の目的は「老後資金」。
取り崩し開始までの運用期間は、最長で約20年を想定しています。
そして、
20年程度では、アメリカ1強の構造が崩れる可能性は低い
と考えた上での選択です。
今の収入・支出構造であれば、
ACWIでも目標達成は見込めますが、
20年未満でサラリーマンをリタイアする可能性も考慮し、
意図的にリスクテイクしています。
こうして理論武装しておくことで、
- 途中でACWIより成績が悪くても
- 将来、最終的にACWIの方が良かったとしても
それはすべて自分の意思決定の結果として
納得できるし、ブレずに運用を続けられると考えています。
実際、2025年はS&P500よりACWIの方が
運用成績が良かった年でしたが、
20年後に振り返れば、
「あの時、ACWIより相対的に安くアメリカ株を買えていた」
と思えるんじゃないかな、と考えています。
まとめ:まずは「株式の平均リターン」を受け取りに行こう
今回は、
- 株式のリターンはどこから来るのか
- 株式というアセットに期待できる平均リターンとは何か
- なぜACWIが理論的な基準点になるのか
について整理してきました。
長期で資産形成を考えるなら、
株式というアセットが持つ期待リターンを
余すことなく享受できる投資戦略
が最も合理的であり、
それを現実的に実現できるのが、
ACWIに連動するファンドです。
これを基準点とした上で、
自分に合ったリスクを、
明確な目的を持って取りに行く
そんな設計ができれば、
暴落時にも慌てて売らずに済む、
強力な握力が身につくはずです。
これから投資を始める人が、
もうひとつ必ず悩むテーマがあります。
それが、
「時間分散に意味はあるのか?」
です。
手元にまとまった資金があるとき、
一括投資と分割投資、どちらが合理的なのか。
このテーマについては、こちらの記事で
データと理論の両面から解説していますので、
ぜひ参考にしてください。




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