99%がゴミ?投資信託バトル S&P 500編(1)

握力向上委員会

「約6,000本ある投資信託のうち、99%はゴミ商品である。」僕の大好きな経済評論家である山崎元さんはそう断言する。そして投資の原則は「長期・分散・低コスト」であり、これは山崎さんはもちろん、いわゆる名著と言われる書籍でも繰り返し唱えられている。
しかし2025年現在、最近よく聞く原則は「長期・分散・積立」に変化してきており、これは明らかに忖度、大人の事情だ。積み立てりゃなんでもいいってわけじゃねぇ!
金融業界に長く身を置きながら、顧客ファーストの発信を貫き続けた山崎元さんの凄さを改めて感じつつ、金融業界とは無縁の一個人投資家として、投資信託の実力を明らかにしていこうと思う。

僕のようにある程度余裕資金がある状態で投資を始めた中高年の個人投資家が、商品選びで後悔することがないよう、参考にしていただければと思う。


S&P500インデックスファンド

今回取り上げるのはオルカンと双璧をなす大人気インデックスであるS&P500。言わずと知れた米国の代表的な500社を時価総額加重平均で組み入れた指数である。これに連動を目指すファンドは、新NISA積立投資枠だけでも17本ある。
中でも圧倒的人気を誇るのがeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)だが、なぜこれだけの人気を獲得しているのか、そのほかの16本と何が違うのか、徹底解明していこう。
最後まで読めば自分が持っているファンドがゴミなのかそうでないのか、購入を検討中の方にとってはどのファンドなら購入に値するのか、自信を持って選べるようになるはずだ。


いきなり結論

ではいきなりだが、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)(以下、eMAXIS Slim)が現時点では最強のファンドであることを証明しよう。このグラフがその答えだ。

これはeMAXIS Slimの値動きを基準=0%としてその他のファンドの基準価額の変化をグラフ化したものである。下に行くほどeMAXIS Slimに比較対象としたファンドが負けているということだ。ピックアップしたファンドは4本ともeMAXIS Slimよりマイナスリターンになっていることがわる。

比較対象にした楽天・プラス・S&P500インデックスファンド(以下、楽天)の設定日が2023年10月27日のため約1.5年とちょっと短いが、各ファンドの日毎の基準価額データから作成した。

楽天はかなり実力が拮抗しているものの、それ以外のファンドは「ちょっと今から買う気は起きないかなぁ」という実力である。

同じ指数への連動を目指しているはずなのに、なぜ基準価額にこのような差がついてしまうのか、詳しく見ていこう。


比較対象ファンドの選定

今回比較対象に選んだのは、いずれも新NISAの積立投資枠で選択できるファンドとなっている。
積立投資枠で購入できるS&P500連動ファンドは以下の通り。(2025年5月時点)

ファンド名運用会社
SBIVS&P500インデックス・ファンドSBIアセットマネジメント㈱
たわらノーロード S&P500アセットマネジメントOne
ステート・ストリートS&P500インデックス・オープンステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ㈱
米国株式インデックス・ファンドステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ㈱
iFree S&P500インデックス大和アセットマネジメント㈱  
農林中金<パートナーズ>つみたて米国株式 S&P500農林中金全共連アセットマネジメント㈱
NZAM・ベータ S&P500農林中金全共連アセットマネジメント㈱
はじめてのNISA・米国株式インデックス(S&P500野村アセットマネジメント㈱
iシェアーズ 米国株式(S&P500)インデックス・ファンドブラックロック・ジャパン㈱
つみたてiシェアーズ 米国株式(S&P500)インデックス・ファンドブラックロック・ジャパン㈱
SMBCDCインデックスファンド(S&P500三井住友DSアセットマネジメント㈱
My SMT S&P500インデックス(ノーロード)三井住友トラスト・アセットマネジメント㈱
eMAXIS S&P500インデックス三菱UFJアセットマネジメント㈱
eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)                       三菱UFJアセットマネジメント㈱
つみたて米国株式(S&P500三菱UFJアセットマネジメント㈱
楽天・プラス・S&P500インデックス・ファンド楽天投信投資顧問㈱
Smart-i S&P500インデックスりそなアセットマネジメント㈱

青マーカーが比較対象に選定したファンドだ。これまでに出てきたeMAXIS Slim、楽天、iシェアーズ米国株式(S&P500)インデックス・ファンド、Slimじゃない方のeMAXIS S&P500インデックス、ステートストリートの米国株式インデックス・ファンドの5本をピックアップしている。(以降、eMAXIS Slim・楽天・iシェアーズ・eMAXIS・Sストリートと表記する)


リターンに差が出る要因は?

同じインデックスに連動するはずなのに、なぜこのようなリターンの差が生まれるのか、影響が大きい順に見ていこう。

コスト

リターン差に最も影響を与えているのはコストの差だ。冒頭に書いた投資の原則の1つである。新NISAの積立投資枠で選択できるファンドのコストを以下に示す。

隠れコストは各ファンドの最新の運用報告書から、その他は基本的に目論見書から拾った。このコストは年率で表されているが、実際は日々純資産から日割りで徴収されるため、基準価額に反映される。

よく「信託報酬だけでなく隠れコストがあるから、目論見書や運用報告書で実質コストを確認しよう」と言われるが、最初に示したグラフのように直接比較してしまう方がより正確な実力比較ができる。


純資産総額

純資産総額とは、その投資信託が保有されている金額のことで、基準価額×発行口数で算出できる。(基準価額は10,000口あたりで表されることが多く、その場合は➗10,000が必要)
隠れコストと呼ばれるものの中には運用に必要な書類作成費など(目論見書・運用報告書など)が含まれている。これは純資産額の大小によって増減するものではないため、純資産総額が大きいほど相対的にコストが安くなることでリターンに影響が出てくる。


トラッキングエラー

インデックスファンドは文字通りインデックスへの連動を目指すものであり、上にも下にもできるだけ差がない方が理想的な運用となる。インデックスからのズレをトラッキングエラーと呼ぶ。これは積立投資する際に若干リターンに影響する可能性があるが、数値化して評価する手法を知らないため軽く触れるにとどめておく。(冒頭のグラフから、ピックアップしたファンドの中ではiシェアーズが最もトラッキングエラーが大きそうだと想定できる)


こういった要因がファンドのリターンに影響を与え、結果して同じインデックスへ連動するファンドの成績に優劣が生まれることになる。

一旦まとめ

今回は新NISAの積立投資枠で購入できるS&P500連動のインデックスファンド5本をピックアップし、基準価額で実力比較を行なった。

比較対象ファンド

実力比較グラフ(ついでにSストリートの負けっぷりをカバーしてみた)

はっきり言ってeMAXIS Slimと楽天以外は買わない方がいいだろう。ただし、すでに保有しているファンドを売ってまで買い替えるかは慎重な検討が必要なのでこの記事だけで買い替えは厳禁である。
特定口座の場合は「税の繰延効果」、NISA口座の場合は「枠の消費」を十分検討しよう。

これから購入したいのに、利用している証券会社でこの2本のどちらも購入できないなんてことがあれば、新たに証券口座を開いて丸ごと乗り換えるくらいしたいところである。

次回はこの実力差が金額的にどれくらいの影響を与えるのか、いくつかシミュレーションして検証していく。ぜひ検証記事も参考にしてほしい。

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