経済評論家の山崎元さんは、大学で講義を持っていた頃、毎期必ず学生にこう伝えていたそうです。
一緒に買い物をする時にリボ払いを選ぶ恋人とは、結婚しない方がいいですよ
『山崎先生、お金の「もうこれだけで大丈夫!」を教えてください。』より
初めて聞くと、冗談に聞こえるかもしれません。
支払い方法ひとつで、結婚まで持ち出すのかと。
でも山崎さんは、笑いを取るためにこれを言い続けたわけではありません。
リボ払いを「選べてしまう」ことには、その人のお金への向き合い方が凝縮されている——そう考えていたからです。
この記事では、なぜそこまで言えるのかを、感情ではなく数字で確かめます。
リボ払いとはそもそもどういう仕組みで、年に何%を払っていて、もしあなたがNISAで積み立てながら支払いをリボにしているなら、それは家計として何が起きている状態なのか。
読み終わる頃には、山崎さんの言葉が冗談でも極論でもないことがわかるはずです。
そして、いま残高がある人が今日から抜け出す手順まで書きます。
👉 リボ払いは「支払い方法」ではなく、年15〜18%で借金をする「契約」です。
リボ払いとはどういう仕組みか|見えているのは「今月の1万円」だけ
まず仕組みの確認からです。
リボ払い(リボルビング払い)は、カードの利用額がいくら増えても、毎月の支払額が一定に固定される支払い方式です。10万円使っても50万円使っても、口座から引き落とされるのは「月1万円」のような決まった額だけ。
一見、家計管理がしやすそうに見えます。
実際、カード会社の案内にも「毎月の支払いを一定にできて安心」と書かれています。
でも、この仕組みを裏から見ると、こうなります。
- 支払額が固定される代わりに、使った分は「残高」として積み上がっていく
- 毎月の引き落とし明細に見えるのは今月の1万円だけで、積み上がった残高は自分から見に行かないと見えない
- そして残高には、毎月、手数料がかかり続ける
具体的な数字で見ます。残高50万円、手数料率15%、月1万円の支払いの場合。
✅ 最初の月の手数料:50万円 × 15% ÷ 12 = 6,250円
✅ 1万円払ったうち、元本の返済に回るのは 3,750円だけ
✅ 残高は50万円 → 49万6,250円。ほとんど減っていない
支払っている感覚はあるのに、残高が減っていかない。
これがリボ払いの構造です。「毎月一定で安心」の正体は、返済のペースを最も遅く、手数料の合計を最も大きくする設計です。
👉 「支払いを平らにならす」仕組みは、コストを見えなくする仕組みと同じもの。
(この「月々を平らに見せて総額を隠す」構造は、リボ払いに限りません。この見方は他の金融商品にも使い回せるので、覚えておいて損はありません。)
手数料は何%か|15%が「18%」に引き上げられつつある
では、その手数料率はいくらなのか。
長らくリボ払いの相場は実質年率15.0%でした。
ところが今、業界全体で引き上げが進んでいます。
| カード会社 | 手数料率(実質年率) | 備考 |
|---|---|---|
| JCB(提携カード含む) | 15.00% → 18.00% | 2026年10月1日利用分から順次改定 |
| 三井住友カード | 15.0% → 18.0% | 2026年3月31日以降の新規入会分 |
| 楽天カード | 15.00%〜17.64% | 券種により異なる(一般カードは17.64%) |
※2026年9月1日時点の各社公式発表より
18%という数字に、ピンとくる人もいるかもしれません。
カードローンやキャッシングの上限金利(利息制限法で元本10万円以上100万円未満なら年18%)と同じ水準です。
つまりリボ払いの手数料は、消費者金融でお金を借りるのとほぼ同じコストになりつつあります。
「そんな金利、法律の上限に引っかからないの?」と思った人は鋭いです。
実は、ショッピングのリボ手数料は法律上「利息」ではなく、割賦販売法という別の法律が扱う「手数料」。利息制限法のような上限金利の定めは、そこにはありません。18%への引き上げが合法なのは、この建て付けのおかげです。
比較のために書いておくと、住宅ローンの変動金利は現在1%未満〜1%台。
リボ払いは、僕たちが日常で接する「借り入れ」の中で、最も高い部類の金利を払う契約です。
👉 リボ払いの手数料は年15〜18%。日常にある借り入れの中で最高クラスです。
50万円をリボで払うと何が起きるか|手数料29万円・完済まで6年半
仕組みと料率がわかったところで、通しで計算してみます。
残高50万円を、月1万円の支払いで返していくケースです。50万円は、家電の買い替えと旅行が重なれば届いてしまう金額です。

| 手数料率 | 完済までの期間 | 手数料の総額 | 元本に対する割合 |
|---|---|---|---|
| 15% | 6年7ヶ月(79回) | 約29.0万円 | 58% |
| 18% | 7年10ヶ月(94回) | 約43.1万円 | 86% |
※月利=年率÷12の元利定額方式で計算した概算です。実際の各社の計算方式(残高スライド等)により多少前後します
50万円の買い物に、29万円の手数料。
18%なら43万円——元本とほぼ同じ額を、手数料として上乗せで払うことになります。
しかも6年半という期間は「その間、新しくリボを使わなければ」の話です。
月1万円の支払いで元本が月数千円しか減らない一方、生活は続くので新しい利用額が残高に足されていく。返しても返しても残高が減らないというリボ利用者の典型的な状態は、こうして出来上がります。
👉 50万円のリボは、6年半かけて79万円払う契約。18%なら、93万円になります。
月2万円に増額すれば、15%でも手数料は約10.3万円・2年7ヶ月まで縮みます。
この差が、後半で説明する「出口」の核になります。
NISAで積み立てながらリボで払う、とはどういう状態か
ここまでは、リボ払い単体の話でした。
ここからが、この記事でいちばん伝えたいことです。
新NISAが始まって、毎月コツコツ積み立てている人が増えました。それ自体は素晴らしいことです。
でも、その同じ財布で、カードの支払いがリボになっているとしたら。
真剣に考えて、理解してほしいので、あえてきつい言い方をします。
NISAで積み立てながら、支払いをリボにしている。その人がやっているのは、金利18%で借りてきたお金で、期待リターン5%の投資をしているということ。合理性の全くない投資行動です。
冷静に並べると、こうなっています。
- リボ残高には、相場に関係なく確実に年15〜18%の手数料がかかり続ける
- NISAのインデックス投資の期待リターンは年5%前後。しかも不確実で、マイナスの年もある
確実な18%を払いながら、不確実な5%を狙う。
この構図に気づかないまま積み立てを続けても、家計全体では確実にマイナスです。
山崎さんの「結婚しない方がいい」は、ここにつながります。
あの言葉は恋愛の批評ではなく、「これに気づけないリテラシーの人と家計を共にすると、確実にあなたが将来苦労することになる」という警鐘なんです。
では、どうするか。この構図は、裏返すとそのまま出口になります。
いま残高がある人なら、返すこと。残高がない人なら、この先もリボを選択しないこと。どちらも、年15〜18%のマイナス金利を発生させない行為=それだけのリターンを確実に生む「投資」と同じ価値を持ちます。
投資で年15%を安定して稼げる人は、プロにもほぼいません。その利回りと同じ価値が、「一括払いを選ぶ」という一手だけで、確実に手に入ります。
👉 リボの15%を返すことは、年15%で運用するのと同じ効果を持つ。世界最高の投資家でも難しい利回りが、確実に手に入る。
だから、いま残高がある人がやるべきことは明確です。
NISAの積立より先に、リボの返済。期待値で比べれば、順番はこれ一択です。
「欲しいものが、お金が足りなくても手に入る。それがリボの価値だ」という反論へ
こんな反論があるかもしれません。
「欲しいものを、欲しい時に手に入れられる。それがリボ払いの価値だ」と。
僕なら、そう主張する人からは距離をとります。
ここまでの数字を見た上でその主張が変わらないなら——それこそが、山崎さんが「結婚しない方がいい」と言った、まさにその相手だからです。
リボ払いでないと買えないものは、そもそも買ってはいけない。
その買い物は、いまの自分の身の丈に合っていない。そう自覚するところが、家計の立て直しの出発点になります。
今日から抜け出す手順|出口は3つある
リボ払いは、抜け出せない仕組みではありません。
むしろ出口は制度として全部用意されています。使われていないだけです。
手順1:残高を見る
カードアプリか会員サイトで「リボ残高」を確認します。ここが一番心理的ハードルが高い工程ですが、金額がわからないと手が打てません。見た瞬間に、この問題の8割は解決に向かいます。
手順2:一括返済または増額返済を申し込む
どのカード会社にも「リボ残高のおまとめ払い(一括返済)」と「月々の支払額の増額」の手続きがあります。
- 貯金で払える範囲なら:一括返済。生活防衛資金を多少削ってでも、年15%の負債を消す方が合理的です
- 一括が無理なら:月々の支払額を可能な限り増額。前の章の通り、月1万円→2万円で手数料は29万円→10万円まで減ります
手順3:リボ設定そのものを解除する
「毎回の支払いが自動でリボになる」設定(自動リボ・マイ・ペイすリボ等)になっていないか確認し、一括払いに戻します。ポイント優遇を餌に自動リボへ誘導する設計のカードがあるので、入会時の設定のまま気づいていないケースが少なくありません。
✅ 残高を見る
✅ 一括 or 増額で返す
✅ 自動リボ設定を解除する
この3つで、今日から止まります。
過去にリボを使ったこと自体は、責められる話ではありません。カード会社が最も売りたい商品だからこそ、入口は巧妙に設計されています。大事なのは、仕組みを知った今日以降も選び続けるかどうかです。
👉 リボの出口は3つとも制度として用意されている。足りないのは手続きではなく、残高を直視する2分です。
まとめ:支払い方法の選択は、家計の設計思想の縮図
最後に、この記事の要点をまとめます。
✅ リボ払いは「毎月の支払額を固定する」代わりに、残高に年15〜18%の手数料がかかり続ける仕組み。手数料率はいま業界全体で18%へ引き上げが進んでいる
✅ 残高50万円・月1万円返済なら、完済まで6年7ヶ月・手数料約29万円(18%なら7年10ヶ月・約43万円)
✅ NISAで積み立てながらリボで払うのは、金利18%で借りたお金で期待リターン5%の投資をしている状態。リボを返すこと・そもそも選択しないことが、年15〜18%の確実なリターンと同じ価値を生む
✅ 出口は「残高を見る→一括 or 増額返済→自動リボ解除」の3手順。NISAの積立より先に、リボの返済
月々を平らに見せて総額を隠す商品は、リボ払いのほかにもあります。
この記事で「固定された月々の裏で、残高と手数料がどう動いているか」を見る目を持てたなら、他の商品の前でも同じ問いを立てられるはずです。
浮いた手数料の行き先は、この2本が参考になります。
関連記事
リボをやめて浮いた月々の支払いを、次はどこへ向けるか。家計改善の順番は固定費からです。

返済が終わって残高ゼロになったら、今度は「確実な15%」から「期待5%」へ。新NISAの設計はこの1本で足ります。

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そのたびに検索して、結局どうすればいいのか分からなくなる——心当たりはないでしょうか。
この本は、そうしたお金の判断の「もうこれだけで大丈夫」という結論だけを、90分で読める分量に絞り込んだ1冊です。
冒頭で引用した「リボ払いを選ぶ恋人とは、結婚しない方がいい」——僕がこの言葉に出会ったのも、この本でした。
本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資・保険の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。
