「TOPIXから600社除外」——そんなニュースの見出しを見て、少し不安になった方へ。
先に結論です。
何もしなくていい。むしろ、持っている人にとって良くなる変更です。
2026年10月から、TOPIX(東証株価指数)のルールが大きく変わります。
構成銘柄は約1,700から約1,050へ、およそ4割減ります。
数字だけ見ると「別物になるのでは」と感じますが、中身を数字で確認すると、心配は要らないと分かります。
この記事でわかることは3つです。
- 2026年10月からTOPIXの何がどう変わるのか(一次ソース=JPX資料ベース)
- 銘柄が4割減っても「別物」にならない理由
- 個人投資家にとって・インデックスとして、何が良くなるのか
👉 結論:日本市場平均を持ちたいなら、これからもTOPIXでいい。理解した上で、持ち続けるだけです。
TOPIXとは|1968年の東証を「100」とした、日本市場まるごとの指数
まず土台の確認からです。
TOPIX(東証株価指数)は、1968年1月4日時点の東京証券取引所の時価総額を「100」として、市場全体の時価総額の増減を指数化したものです(算出開始は1969年)。
たとえばTOPIXが2,700なら、「1968年から市場全体の価値が27倍になった」という意味になります。
ポイントは時価総額加重という仕組みです。
会社の規模(時価総額)が大きいほど指数への影響が大きく、小さい会社の影響はごくわずか。
つまりTOPIXは「日本の上場企業をまるごと、規模に応じて持つ」設計になっています。
ニュースでよく聞く日経平均株価とは、ここが根本的に違います。
日経平均は225銘柄を選んで株価を平均する方式で、株価の高い銘柄(値がさ株)に引っ張られやすい指数です。
「日本市場の平均」を表す指数はどちらかと問われれば、答えはTOPIXです。
現在、TOPIXに連動する資産は約110兆円(2024年3月時点・JPX資料)。
日銀のETF、年金(GPIF)、そして僕らが買えるインデックスファンドまで、日本株投資の土台と言える指数です。
👉 TOPIX=日本市場をまるごと持つための指数。だからこそ、ルール変更の中身を知る価値があります。
TOPIXはすでに一度変わっている|東証再編と第一段階の見直し
実は、TOPIXの見直しは今回が初めてではありません。
第一段階の見直しは、すでに完了しています。
きっかけは2022年4月の東証の市場区分再編です。
「東証一部・二部・マザーズ・JASDAQ」が「プライム・スタンダード・グロース」に再編されたとき、「東証一部の全銘柄=TOPIX」という紐づけが廃止されました。
そこから第一段階として、次の見直しが行われました。
- 政策保有株(持ち合い株)を浮動株から除外し、実際に市場で売買できる株ベースの計算に厳密化(2022年)
- 流通株式時価総額100億円未満の銘柄を、時間をかけて段階的にウエイト低減(2022年10月〜2025年1月)
この結果、構成銘柄は約2,200から約1,700へ減りました。
ここで思い出してほしいことがあります。
この間、TOPIXに連動するファンドを持っていた人に、何か困ったことは起きたでしょうか。
おそらくほとんどの人は、見直しが行われていたことすら気づいていないはずです。
移行は約2年半かけて段階的に行われ、指数の連続性は保たれました。
今回の第二段階も、同じ思想で設計されています。
👉 500銘柄減った第一段階に、あなたは気づかなかった。今回も同じ設計です。
2026年10月からのTOPIX新ルール|何がどう変わるのか
では本題、第二段階の見直しです。
JPXの一次資料から要点を4つに絞ります。
変更点①:対象が「全市場」に広がる
これまでのTOPIXは実質的にプライム市場(旧東証一部)の銘柄で構成されていました。
新TOPIXはプライム・スタンダード・グロースの全市場が対象になります。
市場の看板ではなく、中身(流動性)で選ぶ方式への転換です。
変更点②:年1回の「定期入替」が初めて導入される
これまでTOPIXには定期入替がありませんでした。
2026年10月からは毎年10月に銘柄を見直す仕組みが入ります(基準日は8月末)。
変更点③:選定基準は「流動性」
新たに入る銘柄の基準は、年間売買代金回転率0.2以上、かつ浮動株時価総額の累積比率で上位96%以内。
すでに構成銘柄である場合は、回転率0.14以上・上位97%以内という緩めの継続基準が適用されます(バッファ・ルール)。
頻繁な出入りで指数が不安定になるのを防ぐ設計です。
「年間売買代金回転率」は聞き慣れない言葉ですが、意味はシンプルです。
市場に出回っている株(浮動株)に対して、1年間でどれだけの金額が売買されたかの割合です。
0.2なら「浮動株の2割に相当する金額が、1年間で取引された」ということ。
逆に回転率が低い銘柄は、取引の相手が少なく、買いたいときに買えず、売りたいときに売れない銘柄です。
110兆円が連動する「日本市場平均」の中身として、それはふさわしいのか——今回の基準は、その問いへの答えです。
変更点④:移行は2年かけて段階的に
基準を満たさない銘柄も、2026年10月にいきなり除外されるわけではありません。
四半期ごとに8回に分けてウエイトを減らし、完全除外は2028年7月。
しかも2027年10月に再評価があり、そこで基準を満たせば除外を免れます。
企業側に「改善すれば残れる」道を用意しているわけです。
何をすれば「改善」なのか——ここは後半で、企業側の事情ごと解説します。
この結果、構成銘柄は約1,700から約1,050へ(2026年3月末時点の試算)。
スタンダード・グロース市場からは約50銘柄が新たに採用される見込みです。
なお、TOPIXから外れる銘柄の受け皿として「TOPIX Next-tier」という新指数(約800銘柄)も同時に始まります。
👉 要するに:「東証一部の名残」から、「流動性で選ばれ続ける日本市場平均」への転換です。
TOPIXの銘柄が4割減っても「別物」にならない理由
「600社除外」「銘柄4割減」。
見出しだけ見れば、指数が別物になるように感じます。
でも、JPXの試算数字を見ると印象は変わります。

| 現行TOPIX | 新TOPIX(試算) | |
|---|---|---|
| 銘柄数 | 1,654 | 約1,050 |
| 市場カバー率 | 約97.5% | 約96.6% |
| PER(加重) | 19.1 | 19.2 |
| 配当利回り(加重) | 1.95% | 1.93% |
※2026年3月末基準・JPX試算。市場カバー率=全上場銘柄の浮動株時価総額合計に占めるTOPIX構成銘柄の割合。
銘柄数は4割減るのに、市場カバー率は97.5%→96.6%とほぼ変わりません。
PERも配当利回りも、ほぼ同じです。
なぜこうなるのか。
答えは冒頭で確認した時価総額加重にあります。
除外されるのは、時価総額と流動性が小さい約600銘柄です。
時価総額加重の指数では、この600銘柄を全部合わせても指数の1%程度しかありません。
お金に翻訳するとこうなります。
TOPIXに1万円投資していたら、除外される600銘柄に入っていたのは合計で100円分ほど。
その100円が、残りの約1,050銘柄に振り直されるだけの話です。
「銘柄が減る=分散が減る」と感じた方は、こう整理してください。
「銘柄数」は確かに減ります。でも「分散の効き目」はほぼ減りません。
分散のリスク低減効果を決めるのは銘柄の頭数ではなく、資産がどう配分されているかです。
指数の中身の99%が同じなら、値動きの性質もほぼ同じ——PERと配当利回りがほぼ変わらないことが、その証拠です。
100人の大合唱にたとえるなら、声がほとんど聞こえない後列の数十人が抜けても、客席に届く合唱の響きはほぼ変わらない、という関係です。
TOPIXの値動きを作っているのは、前列で声量の大きい大型銘柄たちだからです。
👉 「4割減」は銘柄数の話。お金の中身で見れば、変わるのは1%程度です。
新TOPIXで何がよくなるのか|指数として・投資家として
今回の変更は、個人投資家の間でも概ね好意的に受け止められています。
雰囲気ではなく、何が良くなるのかを構造で確認しておきます。
インデックスとして良くなる点は3つ。
1つ目、本当の意味での「日本市場平均」に近づくこと。
これまでは「プライム市場にいるか」という看板で決まっていました。
新TOPIXは市場の区分を問わず、流動性のある銘柄を拾います。
スタンダードやグロースの有力企業約50銘柄が新たに入るのは、この転換の表れです。
2つ目、指数の中身の流動性が大きく上がること。
構成銘柄の1日あたり売買代金の中央値は、約4.2億円から約11.8億円へと2倍超になる試算です(2026年3月末基準)。
売買が薄い銘柄を指数から外すことで、指数に「実際に投資しやすい」性質が備わります。
3つ目が僕は一番大きいと考えているのですが、新陳代謝が仕組みとして入ることです。
これまでのTOPIXには定期入替がなく、一度入った銘柄は基本的に残り続けました。
これからは毎年、流動性という物差しで「選ばれ続けた銘柄」で構成される指数になります。
S&P500が長期で機能してきた理由のひとつは、この新陳代謝です。その構造に一歩近づきます。
市場の中身が入れ替わり続けるのは異常事態ではなく正常運転——このことは主役交代の局面でTOPIXが最高値を更新した話でも書きました。
個人投資家にとって良くなる点も3つ。
1つ目、何もしなくても、持っている指数の中身がアップグレードされること。
これはインデックス投資の強みそのものです。
個別株なら銘柄の入れ替えは自分の仕事ですが、インデックスなら指数が引き受けてくれます。
2つ目、TOPIX連動ファンドの運用が楽になること。
売買の薄い小型銘柄は、ファンドが指数どおりに売買するときのコストや指数とのズレ(トラッキングエラー)の原因になります。
流動性の高い銘柄に絞られることで、この負担が軽くなる方向に働きます。
3つ目、企業側に「改善して指数に残る」動機が生まれること。
ここは少し丁寧に解説します。「改善すれば残れる」の中身の話です。
まず、企業側の都合から見てみます。
TOPIXから除外されると、何が起きるか。
約110兆円の連動資産の保有対象から外れる、ということです。
インデックスファンドによる恒常的な保有が消え、機関投資家のベンチマークやアナリストの調査対象からも外れやすくなる。
その結果ますます売買が細り、流動性がさらに下がる——除外は、この悪循環の入り口です。
だから企業には、指数に残るための努力をする強い動機があります。
では、具体的に何をすれば「改善」なのか。
基準が「浮動株」と「流動性」なので、打ち手は自然と決まってきます。
- 持ち合い株(政策保有株)の解消:取引先と持ち合ったまま眠っている株を市場に放出すれば、浮動株が増える
- 株式分割:1単元を買いやすい価格にして、売買を活性化する
- 資本効率の改善とIR強化:市場からの評価を高めて、時価総額そのものを引き上げる
注目してほしいのは、この打ち手がすべて、株主にとっても良いことと一致している点です。
持ち合い解消は経営への規律(ガバナンス)を強め、資本効率の改善は株主リターンに直結し、流動性の向上は売買コストを下げます。
「指数に残るための努力」=「株主に向き合う経営」になるよう、物差しの側が設計されているわけです。
東証が2023年から進めてきた「資本コストと株価を意識した経営」の要請と、完全に同じ方向です。
👉 企業がTOPIXに残ろうとするほど、市場の質が上がる。「除外」は一面にすぎず、本質はこの循環の設計です。
個人投資家はどう考えればいいか|結論、TOPIXは持ち続けるだけでいい
ここまでの材料が揃えば、結論はシンプルです。
TOPIX連動のファンドやETFを持っている人:そのまま持ち続けるだけでいい。
移行は2年かけて段階的に行われ、指数の連続性は確保されます。
売却も乗り換えも、必要ありません。
オルカンや全世界株で持っている人:こちらも何もしなくていい。
オルカンの日本株部分はMSCIジャパンという別の指数で、今回の変更の直接の対象ではありません(オルカンの仕組みの全体像はこちら)。
ちなみにMSCIジャパンは約200銘柄で日本市場の約85%(浮動株ベース)をカバーする設計です。
新TOPIXは約1,050銘柄・カバー率96%台ですから、銘柄を絞ってもなお、日本で一番広い指数であることは変わりません。
そして、僕自身のスタンスも言い切っておきます。
僕はいまTOPIX連動のファンドを持っていません(全世界株中心のため)。
それでも、もしポートフォリオに日本市場平均を加えたいと思ったら、選ぶのはTOPIX一択です。
理由は、この記事で見てきたことがすべてです。
日経平均は225銘柄の株価平均で、値がさ株に偏ります。
JPX日経400のような「優良企業を選抜する」指数は、それはそれで思想のある指数ですが、もはや「市場平均」ではありません。
市場をまるごと、時価総額どおりに持てる指数はTOPIXだけ。今回の見直しで、その純度はさらに上がります。
最後に、こういうニュースが出たときにやりがちな失敗をひとつ。
それは、自分で仕組みを理解しないまま、他人の評判で持ち替えを考えることです。
今回は評判が好意的なので、慌てて手放す人は少ないかもしれません。
でも、人間には厄介な癖があります。
普段から相場に悲観的な人は、悲観的な解説ばかりが目に入る(確証バイアス)。
そして少数意見でも、声の大きい人や肩書きのある人が「TOPIXは終わり」と言えば、流されそうになる。
話題を聞いてから動く手順そのものに高値掴みが埋め込まれている——M7に乗り換えた人たちの話で書いた構造と、まったく同じです。
対抗手段は、意志の強さではなく構造の理解です。
「除外600社はお金にして1%」「カバー率はほぼ不変」——この2つを自分の頭に置いておけば、どんな見出しが流れてきても、揺れずに済みます。
👉 評判で動く人は、次のニュースでも動かされる。仕組みで納得した人だけが、持ち続けられます。
▼「指数はTOPIXで決まり」の次は、商品選び。同じ指数でもコストで差がつく仕組みはこちら

まとめ:TOPIXルール変更で、僕らがやることは「理解して、何もしない」
最後に要点を整理します。
- TOPIXは1968年の東証を100とした、日本市場まるごとの時価総額加重指数
- 2026年10月から第二段階の見直し。全市場対象・年1回の定期入替・流動性基準を導入し、約1,050銘柄へ
- 銘柄数は4割減っても、市場カバー率は97.5%→96.6%とほぼ不変。除外分はお金にして1%程度
- 流動性向上・新陳代謝の仕組み化で、指数としてはむしろ良くなる変更
- 持っている人がやることは、仕組みを理解して、持ち続けるだけ
インデックス投資の良さは、こういうときに表れます。
指数のメンテナンスはJPXが、銘柄の入替はファンドが、それぞれ引き受けてくれる。
僕らの仕事は、その仕組みを一度理解して、あとは市場に居続けることだけです。
👉 日本市場平均を持ちたいなら、これからもTOPIXでいい。2026年10月を、何もせずに迎えましょう。
▼日本株を「足す」前に。人生まるごとの資産で見た、置き場の順番はこちら

📚 “何もしなくていい”を確信に変える1冊
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ルール変更のようなニュースが流れるたび、「本当にこのままでいいのか」と少しだけ揺れる。
持ち続ける根拠が、まだ自分の言葉になっていないからです。
本書は「市場平均を持ち続ける者がなぜ勝つのか」を半世紀のデータで示し、「何もしない」を放置ではなく積極的な戦略として腑に落としてくれます。
僕自身、インデックスを「持ち続ける側」でいる覚悟は、この本で固まりました。
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TOPIX連動もオルカンも、低コストのインデックスファンドをNISAで積み立てられます。市場まるごと持つ投資の始め方にも最適です。
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※本記事の制度内容・試算数値はJPX総研「TOPIX等の見直しの概要」(2026年5月)に基づきます。銘柄数・カバー率・PER・配当利回り・売買代金は2026年3月末基準の試算値であり、実際の入替結果とは異なる場合があります。
本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資・保険の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。
