ボーナスの使い道を検索すると、たいてい「5:3:2で分けましょう」という比率が出てきます。でも、その比率こそがお金を貯まりにくくしている――というのが、今日の話です。
結論を先に言います。
ボーナスに専用の配分ルールはいりません。
必要なのは2つだけ。
①何に使うか決める前に整える「資産形成の土台」と、②その都度「これは買っていいのか」を測れる、一生使える1本の物差しです。
比率を覚えるより、こっちのほうがずっと長く役に立ちます。
【反転フック】ボーナスの使い道に「黄金比率」はない|5:3:2をすすめない理由
「貯蓄5・投資3・ご褒美2」。
こういう黄金比率は、一見わかりやすくて親切です。
でも僕は、この手の比率をおすすめしません。
誤解してほしくないのですが、お金の配分を決めること自体は、むしろ良いことです。
安定した月給をもらっている人なら、「手取りのうち何割を投資に回す」と先に枠を決めておくのは、僕も推奨します。
家計のどこから手をつけるかは固定費が先、という順番はこちらで整理しています。
→ 倹約と節約は何が違う?家計改善で先にやるべきは「固定費」である理由
問題なのは、ボーナスにだけ「別の配分ルール」を用意してしまうことです。
普段の家計とは切り離して、ボーナス専用の比率を当てる。
その瞬間に、僕らはボーナスを「いつものお金とは違う、特別なお金」として脳が色分けしています。
これは行動経済学でいうメンタル・アカウンティング(心の会計)そのもので、別記事でも書いたとおり、この色分けこそが浪費の入り口になります。
→ お金に色をつけるな、は半分間違い|ボーナスを「特別扱い」しない人がいちばん貯まる
比率は「型」です。
型は楽ですが、状況が変わると途端に使えなくなります。
だから今日は比率の代わりに、まず資産形成の土台を作る順番と、どんな場面でも使える1本の物差し――この2つを渡します。
【解体】そもそもボーナスは「特別なお金」じゃない|日本のボーナスのからくり
使い道の前に、ボーナスの正体をはっきりさせておきます。ここを誤解したままだと、何を買うか以前のところでつまずくからです。
ボーナスは、棚ぼたでも臨時収入でもありません。正体は「月給の後払い」です。
会社が1年間に払うと決めた額を、毎月分とボーナス分に分けているだけ。しかもボーナスからも社会保険料と税金はしっかり天引きされるので、額面のインパクトほど手取りは増えません。
ここで日本のボーナスの特殊さが効いてきます。
海外では、賞与といえば一部の好成績者に成果に応じて払うものか、そもそも年俸を12分割するだけで賞与の習慣がない国も多い。
ところが日本は、ほぼ全社員に、月給の何ヶ月分という大きな額を、ほぼ一律で配ります。 これは世界的に見るとかなり珍しい慣行です。
この「全員に一律」という事実が、何より雄弁です。
成果へのご褒美なら、これほど均等に配られるはずがありません。
日本のボーナスは最初から給与の一部として組み込まれているのに、僕らはそれを「臨時にもらえた特別なお金」だと錯覚してしまうわけです。
ではなぜ、会社はわざわざ給与の一部を後払いの賞与という形にするのか。
会社側に大きなメリットがあるからです。
基本給はいったん上げると下げるのが極めて難しい。
一方ボーナスは「業績次第」という建前があるので、苦しいときには相対的にずっと簡単に減らせます。
会社にとってボーナスは、人件費を機動的に動かすための「調整弁」なのです。
ここから導かれる教訓は1つです。減ることが前提の収入を、固定の支払いに当ててはいけない。 後で僕の失敗談として話しますが、ボーナス払いの危うさは、まさにここに根があります。
【土台】ボーナスを何に使うか決める前に|まず「資産形成の土台」を作る
ボーナスを何に使うか――その答えを出す前に、必ず先に済ませることがあります。資産形成の“土台”を作ることです。
資産形成の公式は、とてもシンプルです。
「収入 − 支出 = 残ったお金」。
この残ったお金が、資産形成の原資になります。
そして残ったお金をどこに置くかは、順番が決まっています。
ボーナスは、この土台を一気に厚くできる絶好のタイミングです。
- 生活防衛資金を先に確保する。 生活費の3〜6か月分が現金で手元にあるか。ここが空のままだと、いざという時に積立を取り崩したり借金に走ったりして、土台ごと崩れます(▶ 生活防衛資金はいくら必要?)。
- 近いうちに使うお金は、別枠に分ける。 1〜2年内に使う予定のあるお金(車検、教育費、旅行)は、値動きする資産に入れてはいけません。使う時期で分けるのが原則です。
- ここまで埋めて、初めて「自由に使えるお金」が見える。 生活防衛資金と近く使うお金を確保した残りが、本当に自由に使えるお金です。何に使うかを考えるのは、ここから先の話になります。
この順番を飛ばさなければ、「ボーナスを使い切ったあとに、いざという出費で慌てる」という事故は起きません。土台から作ることが、最大の安全装置です。
そもそもお金は、何から手をつけるかという「順番」で結果の大半が決まります。ボーナスに限らない全体の組み立て方は、こちらで体系的にまとめています。
→ 投資は「順番」で9割決まる|初心者が最初にやるべき5つの思考
そして――ここが僕の失敗談です。
土台を作るどころか、土台を削ってしまった話です。
住宅ローンを組むとき、僕は「ボーナス払い」を設定しました。
そのときもらえていたボーナスの額を前提に、これからもこの額が当然もらえるものだと思い込んで、返済額を組んだのです。
ところがリーマンショックのころ、会社の業績が悪化してボーナスが激減しました。
減ることが前提の収入を、固定の返済に当てていたツケが回ってきたわけです。
当初は60歳で完済する設計だったのに、この影響で返済計画が狂い、いまの試算では60歳の時点でなお200万円ほどローンが残る計算になっています。
ボーナスを当てにした借金は、本当に危ない。 身をもって学びました。
減ることが前提のお金は、土台(固定費・固定の返済)には組み込まない。
これが鉄則です。
【核】ボーナスは何に使う?買う・買わないを分ける1本の物差し
土台を埋めて「自由に使えるお金」が見えてきたら、ここからが本題です。
じゃあ、それを何に使うか。
何を買っていいか――比率ではなく、たった1つの問いで測ります。
「ボーナスがなくても、毎月の給料から貯めてでも、それを買うか?」
YESなら買っていい。
NOなら立ち止まる。
これだけです。
YESと言えるなら、それは「ボーナスで買った」のではありません。もともと計画して貯めていた予算が、たまたまボーナスのタイミングで貯まりきっただけ。 ボーナスは支払いの手段であって、買う理由ではない、ということです。
逆に、危険なフレーズが2つあります。
ひとつは「買えるから買う」。
お金があるから買う、は理由になりません。
もうひとつは「長く使えるから」。
一見もっともらしいですが、これも要注意です。
ボーナスがなければ買わなかったのに、ボーナスがあるからグレードを1つ上げる――この上乗せ分は、計画ではなく勢いで使ったお金です。
この問い1本なら、車でも時計でも投資でも、その場で測れます。
【当てはめ】ボーナスの使い道を物差しで測る|資産・時短は買い、車・ご褒美は立ち止まる
物差しを実際の選択肢に当ててみます。
買うべきものの筆頭は、資産です。 株式インデックス(オルカンなど)に代表される、持っているだけで世界経済の成長を取りに行ける資産。これは「毎月からでも積み立てたいもの」の典型なので、物差しでも文句なくYESです。
しかも、まとまったお金があるなら、分割して少しずつ買うより一度に投じたほうが、理論上は期待リターン(最終的に増える期待値)が高くなります。
なぜそう言えるのかは、実データで検証した別記事に譲ります(▶ 一括投資と分割投資、実データではどっちが勝つ?)。
ボーナスは、その「まとめて早く」を一気に進められる絶好の機会です。
次点は、時短への投資です。 食洗機やドラム式洗濯機は、お金で時間を買う買い物。
これも「貯めてでも欲しい」と言えるなら買いです。
ただし1つ条件があります。
浮いた時間を、スマホゲームに溶かすなら意味がない。 スキルを磨く、家族と過ごす――お金か幸福度につながる時間に充てる前提で、はじめて「時短は投資」と呼べます。
一方、立ち止まるべきは車・ご褒美・贅沢品です。 ここで誤解しないでほしいのは、贅沢品が悪だと言っているのではないこと。
装飾品でもいい。
ただし「これはQOLを上げるための浪費だ」と自覚したうえで、決めた予算の範囲内で買う。
浪費そのものは悪ではありません。
悪いのは、浪費を「資産」や「必要経費」と勘違いして、予算の枠を外してしまうことです。
特に気をつけたいのが、「自分へのご褒美」を言い訳にしたプチ贅沢です。
1回1回が小さいからこそ習慣化しやすく、痛みに気づかないまま積み上がる。
資産形成へのダメージは、大きな買い物よりむしろこちらのほうが効いてくることがあります。
【体験談】今回の夏のボーナスは、こうしました
今回の夏のボーナス、僕は支給日の出社前に、ほぼ全額分のオルカンを発注しました。メイン口座が郵貯のままなので、ことら送金 → ネットバンク → 楽天証券の特定口座、と資金を動かしてから発注する。正直、口座の整理が完璧ならこの手間はもっと減らせるのに、と動かすたびに思います。それでも、出社前のわずかな時間で、これだけの資金移動とファンド発注がすべて手数料ゼロでできてしまう。昔では考えられなかったことで、あらためて少し感動しました。比率を考える時間すらいりません。物差しが決まっていれば、行動は一瞬で終わります。
【まとめ】ボーナスを「特別扱い」しない人が、いちばん遠くまで行く
ボーナスの使い道に黄金比率はいりません。
必要なのは2つ。
まず資産形成の土台を作ること。
そして自由に使えるお金を、「ボーナスがなくても貯めてでも買うか?」という1本の物差しで測ることです。
- ボーナスの正体は月給の後払い。減ることが前提だから、固定の支払いには当てない
- 何に使うか決める前に、まず土台。「生活防衛資金 → 近く使うお金は別枠 → 残りが自由なお金」
- 自由なお金は物差しで測る。資産・時短は買い、車やご褒美は「浪費だと自覚して予算内で」
ボーナスを特別なお金だと思わず、いつもの給料の延長として淡々と最適化する。それを続けられる人が、結局いちばん遠くまで行きます。
👉 まずは次のボーナスで、満額をどう振り分けるか比率で考えるのをやめて、「貯めてでも買うか?」と一度だけ自問してみてください。
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ボーナスをつい「特別なお金」として扱ってしまうのは、意志が弱いからではありません。メンタル・アカウンティング(心の会計)という、脳に備わったクセです。本書はその仕組みを学術的に、でも平易に解きほぐしてくれます。僕自身、この本でメンタル・アカウンティングを知ったとき「昔の自分そのものだ」と腹落ちしました。
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本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資・保険の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。
