「仕組み」と名のつく金融商品には手を出すな|仕組債・仕組預金が”普通”と決定的に違う1点

「定期預金は0.数%なのに、この債券は年6%です」——もし僕が金融機関の営業担当だったら、退職金が振り込まれたばかりのあなたの前で、たぶんこう切り出します。

そして、こう続けます。「しかも”債券”ですから、株みたいに毎日ハラハラする商品じゃありません」。

耳ざわりのいい話です。

でも、ここに出てきた「債券」には、ある2文字がこっそり隠れています。

「仕組」です。

仕組債、そして銀行の窓口やネット広告で見かける仕組預金。

名前は「債券」「預金」と同じでも、中身はまったくの別物です。

この記事でお伝えしたいのは、商品ひとつひとつの善し悪しではありません。「仕組み」と名のつく金融商品は、普通の債券・預金に”高利回り”の化粧をしただけの、まったく別の生き物だ——という、たった一点です。

👉 「仕組み」はあなたのための仕組みじゃない。 この記事を読み終えると、「向こうから熱心に勧めてくる高利回り」に、もう心が動かなくなります。

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目次

「仕組」の2文字が付くだけで、別物になる

冒頭の続きをやらせてください。もし僕が営業担当だったら、商品によって2通りの売り方をします。

仕組債のとき:

「いま定期は0.数%でしょう。でもこちらの債券は年6%です。基準になるのはトヨタの株。今より3割下がらなければ、満期に元本もそのまま戻ってきます。トヨタが3割も下がるなんて、そうそうありませんよね?」

仕組預金のとき:

「ネット限定で、円の3か月定期が年5%です。普通預金の何十倍。しかも”預金”ですから、もちろん元本は守られます。期間も短いので、お試し感覚でどうぞ」

どうでしょう。

よくできた話に聞こえませんか。

実際、こう勧められて「いい話だな」と思った人は、決して少なくないはずです。

ここで大事なことを言います。

この営業トーク、嘘はひとつも言っていません。

年6%も、年5%も、元本が戻る”条件”も、本当です。

問題は、いちばん肝心なことを言っていないことです。

年6%や年5%という高い数字は、タダでもらえるごほうびではありません。

あなたが”あること”を引き受ける、その見返りなのです。

普通の債券・預金と、仕組債・仕組預金。

名前は似ています。

でも「仕組み」の2文字が付いた瞬間、中身はデリバティブ(金融派生商品)を内蔵した、まったく別の商品に変わります。

次の章から、その「引き受けているもの」の正体を開けていきます。

👉 「債券」「預金」という安心な名前に”仕組み”が付いたら、それは普通の親戚ではなく、別の生き物だと思ってください。

普通の債券 vs 仕組債——あなたは「株価下落の保険」を売っている

まず、普通の債券から確認します。

普通の債券は、国や企業にお金を貸すしくみです。

あなたは貸し手。

決まった利子を受け取り、満期になれば貸した額(額面)が返ってきます。

途中の値動きはありますが、満期まで持てば、発行体が潰れない限り元本は戻る。

これが債券の素直な姿です。

では、仕組債はどうか。

よく売られているのがEB債(他社株転換可能債)と呼ばれるタイプです。

中身はこうなっています。

  • 表面の利率は高い(年5〜6%など)
  • ただし「トヨタ株」など特定の株(参照銘柄)に連動する
  • その株が一定の水準(ノックイン価格)まで下がると、満期に戻ってくるのは現金ではなく、値下がりした株そのものになる(=元本が大きく削られる)
  • おまけに、株価が上がると「早期償還」でさっさと終わる。儲けは伸びない

整理すると、こうです。

  • 株価が上がっても:もらえるのは表面金利だけ。すぐ償還されて終わり(上限あり)
  • 株価が大きく下がると:値下がりした株を押し付けられ、損失をまるごと被る(下限なし)

これ、どこかで見た形ではないでしょうか。

保険を”売る”側と同じです。

あなたは「トヨタ株が暴落したら、その損を肩代わりします」という保険を引き受け、その保険料として年6%を受け取っている。

専門的に言えば、プット・オプションの売り手にされているのです。

普段は保険料(年6%)をコツコツ受け取れます。

でも、めったに起きない大事故(暴落)が一度でも起きれば、受け取った保険料をはるかに超える損失を引き受ける。

仕組債を持つあなたは、たった数%の利率と引き換えに、その「めったにない大損」を一手に引き受ける側に座らされています。

普通の預金 vs 仕組預金——「預金」なのに元本が守られない

次は預金です。こちらのほうが、名前のトリックは悪質かもしれません。

普通の預金は、説明するまでもありません。

元本は守られ、いつでも引き出せて、銀行が破綻しても預金保険で1人1金融機関あたり元本1,000万円とその利息までが保護される。

日本でいちばん安全なお金の置き場です。

では仕組預金。

「預金」と名前は付いていますが、高い金利の代わりに、あなたは銀行にある”権利”を売っています

代表的な2タイプを見ます。

① 満期延長型(円仕組預金)

あなたは「満期を決める権利」を銀行に渡しています。

金利が銀行に不利に動けば、銀行はさっさと満期にする。

逆に銀行に有利なら、満期を延長してあなたのお金を低い金利のまま長く縛る。

「1年のつもりが、気づけば10年拘束」ということが起こり得ます。

② 為替型(受取通貨が銀行に選ばれるタイプ)

満期にお金を「円で返すか、外貨で返すか」を決めるのは、あなたではなく銀行です。

そして銀行は、自分が得な方を選びます。

円安に動けば円のまま返す(あなたは為替の利益を取れない)。

円高に動けば外貨で返す(あなたは目減りした外貨を円に戻して元本割れ)。

得する側はあなたに回ってこず、損する側だけが回ってくる——そういう作りです。

そして、決定的なのがここです。

  • 中途解約は原則できない。例外的に応じてもらえても、受け取る金額が元本を大きく下回ることがある
  • 預入時の同じ期間の通常の定期預金を超える上乗せ金利の部分は、預金保険の対象外。外貨建てのものは、そもそも預金保険の対象外

つまり「預金保険があるから安心」という”預金”の最大の長所に、穴が空いている。名前は預金でも、守られ方は普通の預金と別物なのです。

共通の正体——「上限あり・下限なし」のリスクを、あなたが押し付けられている

仕組債と仕組預金。

商品は違いますが、骨格はまったく同じです。

一言でいうと——

あなたは、オプションの売り手にされている。

オプションを売るというのは、「もらえるのは決まった金額(プレミアム=表面金利)、引き受けるのは限定されない損失」という、非対称な賭けを引き受けることです。もらえる果実は天井つき、引き受ける損失は青天井。

この「オプションの売り」は、名前に「仕組み」が付いていなくても、別の顔で現れます。毎月の高い分配金を売りにした「カバードコール型投信」も、中身は同じ”オプションの売り”です。

高分配・カバードコール型投信の正体|「毎月10%分配」の中身

普通の株式投資は、これと逆です。

下がっても投資額がゼロになるまで(下限あり)、上がれば青天井(上限なし)。

長期で報われやすいのは、この「上限なし」の側に居続けるからです。

仕組み商品は、わざわざその逆側に座らされているわけです。

しかも、引き受けた割に見返りが薄い。ここは僕の感想ではなく、金融庁がモニタリング結果ではっきり問題視しています

仕組債は、商品を「組成する段階」と「販売する段階」のそれぞれで手数料がかかる構造で、コストが外から見えにくいのが特徴です。金融庁は2024年(令和6年)7月のモニタリング結果で、こうした商品について「リスクに見合ったリターンが得られない場合がある」と指摘し、金融機関に取扱いの停止や販売態勢の見直しを求めてきました(金融庁「リスク性金融商品の販売・組成会社による顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果」2024年7月)。

つまり、高いリスクを引き受けているのに、二重にかかる手数料の分だけ、リスクに見合うリターンが残らない。これが「仕組み」商品の正体です。

ここから、誰でも使える見分け方が1つ取り出せます。

👉 「もらえる利益に上限があって、引き受ける損失に下限がない」金融商品は、あなたが不利な側の賭けを引き受けている。 高い表面利率は、その見返り。覚えておくと、名前が何であれ見抜けます。

なぜ売り手は、こんなに熱心に勧めてくるのか

ここまで読むと、素朴な疑問がわくはずです。「そんなに買い手が不利なら、なぜ向こうは熱心に勧めてくるの?」と。

答えはシンプルで、売り手にとっては、これ以上ないほど旨味のある商品だからです。

前章の通り、手数料が「仕組み段階」と「販売段階」で二重に抜ける。

普通の投資信託を売るより、はるかに大きな取り分が手元に残ります。

そのうえ、不確実な未来のリスクは、まるごと買い手であるあなたに押し付けられる

売り手はほぼノーリスクで取り分だけを抜ける——こんなに都合のいい商品は、なかなかありません。

だから、ターゲットも決まっています。

退職金がまとまって入った人(地銀・証券のEB債)と、少しでも高い金利を探しているネット預金者(仕組預金)。

どちらも「高い利回り」という言葉に弱くなりがちな瞬間を狙ってきます。

この構図は、金融庁も問題視しています。

仕組債は近年、地方銀行や証券会社で販売停止が相次ぎ、金融庁のモニタリングでも繰り返し名指しされてきました。

「顧客本位とは言えない」と指摘されている商品を、それでも熱心に勧めてくる——その事実が、何より雄弁です。

前章の見分け方①は、商品の”構造”から見抜く方法(上限あり・下限なし)でした。

ここでもう1つ、”売り手の動き”から見抜くサインを足します。

そしてこちらは、名前に「仕組み」と付いているかどうかに関係なく、高利回りをうたう商品全般に効きます。

👉 向こうから熱心に勧めてくる「高利回り」は、それだけで警戒サインです。 本当にあなたが一方的に得をするだけの商品なら、わざわざ二重の手数料をかけて、対面やネット広告で売り込む必要がありません。広告費や営業の熱量は、たいてい「売り手の取り分」から出ています。向こうが熱心であるほど、自分の取り分が大きいということです。

この「広告費の大きさ=売り手の取り分の大きさ」という見抜き方は、テレビCMでおなじみのファンドラップでも、まったく同じように使えます。

ファンドラップに任せていい?”広告費”が教える、売り手だけが儲かる仕組み

じゃあ、どうすればいいか——インデックス投資と、預金か国債で十分

ここまで「手を出すな」と書いてきました。

では、何を持てばいいのか。

答えは、拍子抜けするほど普通です。

  • 増やしたいお金:低コストの株式インデックスファンド(NISAで非課税に育てる)
  • 守りたいお金:普通の預金、または個人向け国債(変動10年)

これだけです。「仕組み」で化粧した利回りは要りません。

大事なのは、リスクの量は”商品の種類”ではなく”金額”で決めるという考え方です。

リスクを抑えたければ、株式インデックスに回す金額を減らして、その分を現金(無リスク資産)に置く。

仕組債や仕組預金で「ちょっとだけ利回りの上乗せ」を狙う必要は、どこにもありません。

上乗せの正体は、あなたが引き受けた非対称リスクの代金なのですから。

そもそも「守り」に債券そのものが要るのか、株式と現金で十分なのか。この線引きはこちらで整理しています。

NISAに債券は入れるべき?株式と現金で十分な理由

そして、僕自身がどこで線を引いているかも、はっきり書いておきます。

👉 僕はこう線を引きます。 商品名に「仕組み」がついていたら、それ以上は中身を確かめません。確かめたところで、自分が不利な側のオプションを売らされる商品だと分かるだけだからです。ここまで読んだあなたも、もう一つひとつ吟味する必要はありません。「仕組み」の2文字が見えたら、そっと棚に戻す。シンプルな普通の商品だけで、資産形成は十分に成り立ちます。

まとめ:危ないのは商品ではなく、「名前にだまされること」

最後に整理します。

  • 「仕組み」と名のつく商品は、普通の債券・預金にデリバティブを内蔵した別物。名前が似ているだけ
  • 仕組債:高利率の代わりに、株価下落の損失を肩代わりさせられる(プット・オプションの売り手)
  • 仕組預金:高金利の代わりに、満期を決める権利・為替の権利を銀行に売っている。”預金”なのに元本が守られず、預金保険にも穴がある
  • 共通の正体は、「もらえる利益に上限・引き受ける損失に下限なし」という非対称な賭け。しかも手数料が二重で抜かれ、リスクに見合うリターンが残らない(金融庁が名指し)
  • 見分け方は2つ。①上限あり・下限なしの商品は近づかない ②向こうから熱心に勧めてくる高利回りは警戒する
  • やることはシンプル。増やすお金は低コストインデックス、守るお金は普通の預金・個人向け国債。それで十分

最後に、冒頭の営業トークを思い出してください。

あの「年6%」も「元本保証の”預金”」も、嘘はひとつもありませんでした。

嘘がないからこそ、たちが悪い

肝心な一点——あなたがリスクの引き受け手にされていること——だけが、きれいに伏せられていたのです。

だまされるのは、知識が足りないからではありません。

それくらい、よくできた話だからです。

だから、次に同じトークを聞いたら、笑顔でこう返してみてください。

「その高い利回りの分、私は何を引き受けることになるんですか?」

この一言に、相手がすらすら答えられないなら、答えはもう出ています。

「仕組み」という言葉は、なんとなく賢そうで、ありがたい響きがします。

でも、その仕組みはあなたのために組まれたものではありません

名前にさえだまされなければ、近づかずに済む。

それだけの話です。

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本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資・保険の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。
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この記事を書いた人

ファイナンシャルプランナー(FP技能士)|東証プライム上場企業の会社員。
40代から資産形成に本気で取り組み、1年で純資産1000万円増を達成。
「今さら遅いかも…」と不安な方へ、データと実体験に基づく合理的な資産形成を発信しています。

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