毎月積立だと、何年で元本割れしなくなったのか|「15年で元本割れしない」は全部一括の話なので、円建て77年で数え直した

毎月積立だと何年で元本割れしなくなるのか アイキャッチ:毎月の買付が積み上がる光の道が15年の石標を過ぎて続いていく

「15年使わないお金なら、元本割れはしない」。

前回の記事で、この看板数字を自分の手で数え直しました。
結果、円建てのS&P500では確かに、一括投資して15年持てば、元本割れで終わったケースはゼロでした(1949〜2026年・77年分)。

ただ、あの記事には1つ、注意書きを添えていました。
「これは一括で買って、そのまま持ち続けた場合の話です」と。

では——毎月コツコツ積み立てているお金には、何年と書けばいいのでしょうか。

考えてみると、不思議なことがあります。
ほとんどの人は、毎月の給料から余った分を積み立てています。新NISAの主流も毎月積立です。なのに、世の中の「◯年で元本割れしない」という検証は、ほぼすべて一括投資が前提。自分のお金の入れ方に当てはまる数字が、探しても出てこないのです。

だから、数えました。
先に答えを言います。円建て77年で、毎月積立の元本割れが消えたのは20年目。一括の15年より5年長くかかりました。そしてもう1つ、一括の数字と積立の数字をつなぐ換算ルールも、きれいに出ました——積立N年は、一括0.8N年と同じ

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この記事でわかること
  • 毎月積立をN年続けて元本割れで終わった割合を、S&P500円建て・77年の全開始月で数えた結果
  • 負けが消えたのは20年目。一括の15年より5年長かった理由——「お金の平均年齢」
  • 「一括N年」の看板数字を自分に当てはめる換算ルール(0.8掛け)と、積立中の人の現在地表
目次

あなたの毎月積立に、「15年で元本割れしない」はそのまま当てはまらない

世の中の「N年持てば元本割れしない」系の検証が一括前提になるのには、単純な理由があります。計算がシンプルだからです。ある月に買って、N年後に見る。それだけで数えられます。
一方、毎月積立は「毎月の買付1回1回に、別々の保有期間がある」計算になります。15年の積立なら180回分。面倒なので、誰もやりたがりません。

でも、僕たち個人投資家の多くは積立です。
毎月5万円、10万円と、給料日のあとに淡々と買い付けている。そのお金に「15年なら元本割れしない」の15年を貼り付けていいのかどうか、確かめた数字が世の中にほとんどない。

ないなら、数えるしかありません。

先にはっきりさせておきます。これは「積立は不利」という話ではありません。
一括と分割のどちらが勝ったかという検証は別の記事で済んでいます。そもそも毎月の余剰資金は、毎月入ってくるのだから毎月入れるしかない。積立とは「毎月新しく生まれる資金を、即座に市場に晒す行為」です。
問題は積立の是非ではなく、数字の当てはめ方。ここを間違えると、出口の設計がずれます。

検証のやり方|毎月積立をN年続けて、最後の買付月に評価する

数え方はこうです。

  1. ある月から、毎月定額をN年間(N×12回)買い続ける(配当は再投資)
  2. 最後の買付をした月の評価額が、積み立てた元本の合計を下回っていたら「負け」
  3. 開始月を1ヶ月ずつずらして、全ての開始月について負けの割合を数える

データは前回と同じ、S&P500を円換算した1949〜2026年・77年分の月次データです。為替込みの円建てで検証する理由はこちらで書いています。

評価のタイミングを「最後の買付月」に置くのは、最も保守的な数え方です。最後に入れたお金は1ヶ月も働かないうちに採点されるからです。念のため、評価を最後の買付の1ヶ月後・3ヶ月後にずらしても検証しましたが、これから見る「20年」という答えは変わりませんでした。

税金・売買コスト・信託報酬は引いていません。細かい前提は記事末尾にまとめます。

結果|毎月積立の元本割れが消えたのは「20年目」だった

毎月積立をN年続けて元本割れで終わった割合の推移(S&P500円建て・1949〜2026年)。一括投資は15年、毎月積立は20年で負けがゼロになった
積立年数負けた割合(積立)最悪のケース(積立)(参考)一括の負け率
5年17.3%-41.8%16.4%
10年9.5%-39.0%8.9%
13年9.3%-33.3%3.2%
15年6.3%-17.3%0%
17年1.8%-11.1%0%
19年0.4%-3.9%0%
20年0%±0.0%0%

※数字は「その年数だけ毎月積み立てて、最後の買付月に元本割れしていた割合」

一括では15年で消えた負けが、積立では15年時点でまだ6.3%(47通り)残っていました。
負けが完全に消えたのは20年。最後まで負けが残っていたのは19年で、開始月は1959年11月〜1960年1月の3通り。高度成長期の株高で始めて、その後の長い米国株停滞と円高をまるごと浴びた組です。

物差しを変えても、この「延び」は同じでした。ドル建て名目では一括16年→積立21年。物価調整後のドル実質では一括21年→積立28年。どの物差しでも、積立は一括より5〜7年長くかかっています。円建て固有の話ではありません。

👉 「15年で元本割れしなくなる」は、毎月積立では「20年」だった。5年の差は、誤差ではない。

理由は単純|去年積み立てたお金は、まだ1年しか働いていない

種明かしをすると、これは驚くような話ではありません。算数の問題です。

「15年積み立てた」と言うとき、15年働いたのは最初の月に入れた1回分だけです。2年目に入れたお金は14年、10年目に入れたお金は6年。そして最後の月に入れたお金は、1ヶ月も働いていません

15年の毎月積立で、各年に入れたお金が働いた年数の階段図。最後の年のお金は1年未満しか働かず、平均勤続年数は約7.5年

15年分の買付を均等にならすと、お金1つあたりの平均勤続年数は約7.5年。実際の資産の中身で見ても(増えたお金の量で重みを付けても)、真ん中の値は9.0年でした。

👉 15年積み立てたつもりでも、あなたのお金は平均9年しか働いていない。

書いてしまえば当たり前です。でも、この当たり前を実際のデータで数えて、「だから一括の15年は積立の15年ではない」とセットで示した検証を、僕は見たことがありませんでした。
当たり前のことほど、誰も数えません。そして数えられていないから、「15年で元本割れしない」という看板が積立のお金にもそのまま貼られてしまうのです。

使い方①|積立N年は「一括0.8N年」と同じだった——換算して読む

ここからが持ち帰りです。

積立N年の負け率と、一括M年の負け率を突き合わせていくと、対応関係がほぼ一定でした。積立N年は、一括で0.8N年しか持っていないのと同じだったのです(検証範囲での比率は0.75〜0.88)。

例を挙げます。

  • 積立13年の負け率9.3% ≒ 一括10年の負け率8.9%(13×0.77≒10)
  • 積立20年で負けゼロ ≒ 一括は15〜16年で負けゼロ(20×0.75〜0.8)

使い方は2方向あります。
自分の積立年数に0.8を掛けると、一括の検証で言う「保有年数」に換算できます(積立15年→一括12年相当。だから一括の「15年」にはまだ届いていない)。
逆に、本やSNSで「一括でN年持てば大丈夫だった」という検証を見かけたら、積立の自分に必要な年数はN÷0.8=約1.25倍と読み替えます。

👉 「一括で15年」と聞いたら、積立の自分は「約19〜20年」と読み替える。この換算1つで、世の中の検証があなたの数字になる。

使い方②|積立5年目・10年目・15年目の元本割れ率——現在地を確認する

いま積立の途中にいる人のために、経過年数ごとの過去の成績を置いておきます。すべて円建て77年・全開始月の実績です。

積立◯年目元本割れしていた割合最悪のケース真ん中のケース(中央値)
5年目17.3%-41.8%+29.9%
10年目9.5%-39.0%+68.5%
15年目6.3%-17.3%+105.6%
17年目1.8%-11.1%+123.8%
20年目0%±0.0%+152.3%

読み方はシンプルです。いま積立10年目の人なら——過去77年で同じ10年目を迎えた人のうち、9.5%はまだ水面下にいました。逆に真ん中の人は元本の1.7倍。15年目の真ん中なら2倍を超えていました。

積立5年目で2割近くが元本割れというのは、直感より多いかもしれません。でもこれが実績です。序盤の元本割れは異常事態ではなく、統計の範囲内——この1行を、暴落のときのために覚えておいてください。

(なお、一括と積立のどちらが有利かという勝敗の話は、過去77年・916通りの検証で書いた通りです。この表はその話ではなく、積立中の人の現在地の話です)

積立の安心材料|割れやすいが、深く長くは沈まなかった

ここまで読むと「積立は20年も守られないのか」と暗くなるかもしれません。でも、積立には積立の型があります。過去のデータで見えたのは——割れやすいが、深く長くは沈まないという型でした。

沈む深さ:最初の1年の最悪は、一括-50.7%に対して積立-33.5%

期間一括の最悪積立の最悪
1年-50.7%-33.5%
5年-37.0%-41.8%
10年-42.8%-39.0%

始めた直後に大暴落が来たケースでは、積立はまだ入れた金額が少ないぶん、傷が浅く済んでいました。最初の1年の最悪は、一括の半値近い下落に対して積立は3分の1減で止まっています。

ただし正直に書くと、これは程度問題です。5年では逆転していますし、10年の最悪は-42.8%対-39.0%——ほとんど変わりません。「積立なら暴落は怖くない」とまでは、データは言っていません。

沈む長さ:最悪側のケースでは、積立のほうが早く水面に戻った

元本割れの状態が連続した期間を、開始月ごとに測りました。

中央値90%点最長
一括0.7年4.2年6.5年
積立1.2年3.2年4.2年

面白い結果です。真ん中(中央値)は積立のほうが長い——さっき見た通り、積立は序盤に割れやすいからです。でも、最悪側は積立のほうが短い。一括の最悪が6.5年沈み続けたのに対し、積立は4.2年。下がっている間も安く買い続けたぶん、水面に戻るのが早かったのです。

実例:リーマン・ショック直撃の2007年12月開始組

2007年12月(リーマン・ショック直前)に始めた一括投資と毎月積立の推移比較(円建て・元本100)。底の深さは一括-54%に対して積立-35%、元本割れから抜けるまで一括5.3年に対して積立4.1年

いちばん条件が悪かった実例で見ます。2007年12月——リーマン・ショックの直前に始めた人です。

  • 底の深さ:一括-54%に対して、積立は-35%で済んだ
  • 元本割れから完全に抜けるまで:一括5.3年、積立4.1年

同じ月に始めて、同じ暴落を浴びて、この差でした。

ただし、これにも限界はあります。1999年3月開始——ITバブル崩壊とリーマンを二度浴びた組では、水面に戻るまで一括13.8年に対して積立13.4年。ほぼ差がありませんでした。下落が長く続くと、積立の「安く買える」効果も新しい元本ごと沈んでいくからです。

👉 積立は序盤に割れやすい。その代わり、最悪のケースでは一括より浅く、早く水面に戻った。ただし万能ではない。

ここまで積立の安心材料を並べてきました。ただ、正直に言うと、この比較自体に少し無理があります。
一括と積立を比べられるのは、手元にまとまったお金がある人だけ。僕たちの多くは、積立を始めたときに今の元本の全額を持っていたわけではありません。毎月生まれるお金を、生まれた順に市場に入れてきただけです。比べる相手は、最初からいないのです。

だから最後に頼れるのは、一括との比較表ではありません。「自分には投資が必要だ」と決めたときの、自分の判断です。それを信じて積み立て続ける。過去のデータにできるのは、その判断の足場になることまでです。

使い方③|出口の近いお金は、積立の年数では守れない

最後に、この検証がいちばん効く場面の話をします。出口の設計です。

「お金の平均年齢」の話を思い出してください。積立の終盤に入れたお金ほど、若い。20年計画の19年目に入れたお金は、出口までに1年しか働けません。
つまり——「あと5年で使うお金」を、積立の継続で守ることはできないのです。20年という数字は積立の全体を守った年数であって、終盤に入れた1回1回の買付を守る年数ではありません。

だから、出口が近づいたときにやるべきことは「もっと長く積み立てる」ではなく、使うお金を運用から切り離すことです。

👉 「20年待てば大丈夫」は、これから20年晒せるお金の話。出口の近いお金は、期間ではなく置き場所で守る。

「20年」を、どこまで信じていいか

便利な数字ほど独り歩きするので、この検証で言えるのはここまで、という線を引いておきます。

  • S&P500を使ったのは、長期の月次データがあるからです。S&P500の推奨ではなく、米国株の過去が例外的に恵まれていた可能性は消せません
  • 「20年」は将来の約束ではありません。円建て77年の記録であり、前回同様、世界恐慌級を含めば延びた可能性が高い数字です
  • 円建ては名目です。物価調整をすると「負けない年数」はさらに延びます(ドル実質では28年でした)
  • 税金・売買コスト・信託報酬は引いていません

そしてもう1つ。この検証をしていて、別の面白い問いが見えてきました。
積立の途中で膨らんでいく含み益は、何%あれば「その後元本割れしなかった」のか。「50%の暴落に耐えるには含み益100%必要」という算数は、実際のデータではどうだったのか——これは次の記事で数えます。

まとめ|あなたの積立に貼る数字は「20年」と「0.8」

過去はこうでした。

検証の結論
  • 毎月積立の元本割れが消えたのは20年目だった(S&P500円建て・1949〜2026年・77年分)。一括の15年より5年長い
  • 理由は算数。15年積み立てても、お金は平均9年しか働いていない
  • 換算ルール:積立N年 ≒ 一括0.8N年。「一括で15年」は、積立では約19〜20年と読み替える
  • 積立は序盤に割れやすい(5年目で17.3%が元本割れ)。その代わり、最悪のケースでは一括より浅く・早く水面に戻った
  • 「20年」は積立全体の数字。出口の近いお金は期間では守れない——金額で切り離して守る

👉 「何年で元本割れしなくなるか」の答えは、お金の入れ方で変わる。毎月積み立てているあなたの数字は、15年ではなく20年——そして世の中の一括前提の検証は、0.8の換算を通してから読む。

世の中に数字がないなら、自分の入れ方に合わせて数え直せばいい。
この記事が、毎月コツコツ積み立てているあなたの「自分の数字」になれば十分です。

この検証の前提
  • データ:Robert Shiller公開のS&P500月次データ(配当再投資)。円建て=円換算・名目(ドル円はBIS国際決済銀行の月中平均 1957年〜、1949年4月〜1956年は固定相場の360円。日銀の月中平均とクロス検証済み)
  • 方法:各月から毎月定額をN年間買付→最後の買付月の評価額が累計元本未満なら「負け」。開始月を1ヶ月ずつずらした全ての期間で数える(例:積立20年は689通り)
  • 税・売買コスト・信託報酬は未考慮
  • すべて過去の結果であり、将来の成果を約束するものではありません

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まとまったお金の「入れ方」。一括と分割を同じ77年で数えた検証です。

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この記事を書いた人

ファイナンシャルプランナー(FP技能士)|東証プライム上場企業の会社員。
40代から資産形成に本気で取り組み、1年で純資産1000万円増を達成。
「今さら遅いかも…」と不安な方へ、データと実体験に基づく合理的な資産形成を発信しています。

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