「ここ、1000円が定価だよ!」
513Aの掲示板に、9月14日にあった書き込みです。
上場したときの1,000円を基準に、いまの800円台を「安い」と見るか「まだ戻らない」と見るか。
掲示板はこの2つで割れています。
防衛テックETF(513A)を検索してここに来た方は、たぶんどちらかです。
上場したころに買って、いま含み損を抱えている人。
800円台なら安いのでは、と買い時を探している人。
結論から言います。
販売資料にある「TOPIXを大きく上回る」右肩上がりのグラフは、この指数が生まれる前の計算です。
指数が生まれてからの実際の成績は、まったく別の形をしていました。
上場日の2026年2月26日に100万円を入れていたら、10月1日時点で約84.6万円。
同じ日にTOPIXのインデックスに入れていたら、約108.6万円です。
差は、約24万円。
先に書いておくと、僕はインデックス投資家で、長期・分散・低コストに当てはまらない投資はしません。513Aも買いません。
ただ、伝えたいのは「僕なら買わない」ではなく、この商品の数字をどう読めば次に似た商品が出てきたときに自分で判断できるか、です。
- 513Aの構成銘柄15社と、上位5社で約8割になる指数のルール
- 上場日から10月1日まで、513A −15.4% とTOPIX +8.6% の差
- 販売資料の「TOPIXに圧勝」グラフが、指数の誕生日より前の計算である理由
- もう買った人が使える判断の順番(課税口座・NISA別)
防衛テックETF(513A)の中身|構成銘柄15社、上位5社で約8割
513Aは、株と同じように証券取引所で売買できる投資信託(ETF)です。
まず、商品の骨格を並べます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名 | グローバルX 防衛テック-日本株式 ETF |
| 運用会社 | Global X Japan |
| 上場日 | 2026年2月26日(東証) |
| 連動する指数 | Mirae Asset Japan Defense Tech Index(配当込み) |
| 信託報酬 | 年0.649%(税込) |
| 純資産 | 224億円(2026年10月1日) |
| 分配 | 年2回(2月・8月)。2026年8月は0円 |
| NISA | 成長投資枠のみ |
※Global X Japan 交付目論見書・ファンドページ・2026年8月24日「ETFの収益分配のお知らせ」より
中身は、東証に上場している防衛関連の15社です。
10月2日時点の組入比率を、運用会社が毎日公表している構成銘柄データから計算しました。
| 順位 | 銘柄 | 比率 | 累計 |
|---|---|---|---|
| 1 | NEC | 19.1% | 19.1% |
| 2 | IHI | 16.0% | 35.1% |
| 3 | 三菱重工業 | 15.8% | 50.9% |
| 4 | 三菱電機 | 13.7% | 64.7% |
| 5 | 川崎重工業 | 12.9% | 77.6% |
| 6 | 日本製鋼所 | 5.0% | 82.6% |
| 7 | 日清紡ホールディングス | 4.1% | 86.6% |
| 8 | スカパーJSAT | 3.0% | 89.7% |
| 9 | シンフォニアテクノロジー | 2.8% | 92.5% |
| 10 | 古野電気 | 1.9% | 94.4% |
| 11〜15 | アストロスケール・東京計器・新明和工業・Synspective・QPS | 計5.0% | 99.4% |
※ETFの構成銘柄と株数を毎日公表するデータ(PCF・2026年10月2日)の株数×株価から算出。残りは現金等
上位5社で77.6%です。
指数のルールで、そうなるように作られています。
指数のルール書によると、防衛で実際に稼いでいる会社は時価総額を3倍に数えたうえで、1社15%を上限に積み上げます。
それ以外の会社は1社5%まで。
年2回の入れ替えのたびに、大手5社がほぼ15%ずつ並び、合わせて75%前後になる設計です。
入れ替えの後は株価の動きで比率がずれていくので、NECのように一時的に15%を超える銘柄も出てきます。
「防衛テックに広く投資する」という言葉の印象と、中身はかなり違います。
実態は、日本の大手防衛5社への集中投資に、小さな会社を少し添えたものです。
👉 513Aを買うことは、5社の株をまとめて買うこととほぼ同じです。
指数の形をしていても、中身が少数の銘柄に固定されているものは、インデックス投資とは別物です。
同じ構造は、FANG+の記事で詳しく書きました。
分配金についても、ひとこと。
8月の決算で分配金は0円でした(上場来0円)。
分配金を目当てに選ぶ商品ではありません。
513Aの株価は上場来−15%|同じ期間、TOPIXは+8.6%
次に、上場してからの実際の成績です。

| 2026年2月26日(上場日)→ 10月1日 | 騰落率 |
|---|---|
| 513A(基準価額) | −15.4% |
| TOPIX(配当込み・TOPIX連動ETFで計測) | +8.6% |
※513AはGlobal X Japan公表の日次基準価額。TOPIXはTOPIX連動ETF(1306)の配当込み価格
基準価額が一番高かったのは、上場3営業日目の3月2日です。
そこから3月の1ヶ月で、2割近く下がりました。
市場価格で見ても同じです。
高値は3月3日の1,042円、10月1日の終値は835円でした。
お金がいつ入ったかも見ておきます。
上場1週間後の3月5日に、純資産は111億円。
運用会社が「上場から1週間で100億円を突破」と発表した時期です。
日々の口数の増減から計算すると、これまで入ったお金の6割近くが、上場直後から3月末までの約1ヶ月に集中していました。
つまり、お金が一番集まったのは、基準価額が一番高かったころです。
もちろん、7ヶ月は投資の成績を語るには短すぎます。
ここから上がる可能性も、さらに下がる可能性もあります。
それでも、この7ヶ月で一つだけはっきりしたことがあります。
👉 「国策」と「株価」は、上場してからの7ヶ月、反対の方向を向いていました。
では、なぜ上場前の資料では、あれほど強く見えたのでしょうか。
防衛テック指数の「TOPIXに圧勝」は、指数が生まれる前の計算だった
513Aの運用会社が5月に出した資料に、こんなグラフがあります。
2019年5月を100として、防衛テック指数が840、TOPIXが308。
7年で8倍以上と、3倍。
大和アセットマネジメントの新規設定の案内にも、同じ形のグラフが「2024年頃からTOPIXを大きく上回って推移」という説明つきで載っています。
このグラフの下に、小さな文字でこう書いてあります。
Mirae Asset Japan Defense Tech Indexの算出開始日は2026年1月20日。算出開始日以前の指数に関する情報は全て指数算出会社がバックテストしたデータ。
(Global X Japan「インデックス・ニュース」2026年5月28日)
この指数は、2026年1月20日に生まれました。
それより前の7年間の線は、指数会社が「もし2019年からこのルールで計算していたら」と後から計算したものです。
これをバックテストと呼びます。
日付を並べると、こうなります。
| 日付 | 出来事 |
|---|---|
| 2019年5月31日 | グラフの起点(ここから先はすべて後付けの計算) |
| 2026年1月15日 | 指数のルール書が作られる |
| 2026年1月20日 | 指数の計算が始まる |
| 2026年2月26日 | 513Aが上場 |
| 2026年10月1日 | 上場来 −15.4%(TOPIXは+8.6%) |

👉 右肩上がりの7年は、指数が生まれる前の話です。生まれてからの7ヶ月は、TOPIXに負けています。
バックテストは、ルールを過去に当てはめたらこういう数字になった、という計算としては正しいものです。
ただ、それは「この先の成績」ではなく、「すでに起きたことへの答え合わせ」です。
なぜ新しい指数は、いつも過去に強いのか
理由は2つあると、僕は考えています。
1つめは、線引きをする人が答えを知っていることです。
どの会社を「防衛テック」と呼ぶか。
どれくらいの比率で持つか。
この線引きは、2026年の時点で決められました。
2026年の目で見て、防衛でしっかり稼いでいる会社を選べば、それは過去数年で防衛需要の恩恵を受けて伸びた会社になります。
過去に強い会社を、過去に遡って持たせているのですから、過去の成績が良く出るのは自然なことです。
2つめは、商品が出るタイミングです。
テーマ型の商品は、そのテーマが話題になって、グラフが一番きれいに見えるときに作られます。
売れるのは、そういうときだからです。
これは防衛だけの話ではありません。
香港と米国の研究者が、米国で独自のルールで作られた新しい指数(スマートベータ指数)と、それに連動するETFを調べた論文があります。
指数の成績は、ETFが上場する前の「紙の上」では市場平均を年3%ほど上回っていました。
ところがETFが上場した後は、市場平均を年0.5〜1%下回るようになっていました。
論文は、その原因を、過去のデータに合わせすぎた指数づくりにあると結論づけています。
そして、投資家は良いバックテストに反応してお金を入れる、とも書いています。
※Huang, Song, Xiang “The Smart Beta Mirage”(Journal of Financial and Quantitative Analysis, 2024)。対象は米国のスマートベータ指数で、日本のテーマ指数を調べたものではありません
513Aの7ヶ月は、この研究の結論と同じ形をしています。
グラフを見るときは「指数の誕生日」を探す
新しいテーマ型の商品を見たら、まずグラフの注記を探してください。
「算出開始日」「バックテスト」という言葉が、たいてい小さく書いてあります。
バックテストを使うこと自体は、珍しくありません。
オルカン高配当の指数も、2012年より前はバックテストです。
問題は、グラフのどこまでが計算で、どこからが本物の成績かを知らずに見ることです。
→ 「オルカン高配当の評判は?」
👉 グラフの線は、指数の誕生日から先だけが本物です。
防衛予算は増えるのに、なぜ防衛株は上がらないのか
「でも、防衛予算はこれからも増えるのだから、長い目で見れば上がるはず」
掲示板でも一番多い考え方です。
予算が増えること自体は、事実です。
防衛省によると、防衛力整備計画の対象となる経費は、2023年度の当初予算6.6兆円から、2026年度は8.8兆円まで増えました。
2027年度の要求は、約9兆円に加えて、金額を示さない「事項要求」がついています。
※防衛省「防衛力の変革に向けた予算-令和9年度概算要求の概要-」(2026年8月31日)。歳出ベース
ただ、この数字は、防衛省のホームページに誰でも読める形で公開されています。
新聞にも載り、テレビでも流れました。
あなたが知っていることは、世界中の投資家も知っています。
みんなが知っている「これから伸びる」は、もう今日の株価に入っています。
それを示す数字があります。
マネックス証券のメディアに載ったアナリストの解説によると、三菱重工の株価は、2月時点で利益の60倍を超える水準まで買われていました。
それが、利益は過去最高を更新する計画のまま、31倍程度まで下がっています。
三菱重工・川崎重工・IHIの3社は、いずれも3月の高値から2割を超えて下落しました。
※マネックス証券「マネクリ」掲載記事より(数値は記事掲載時点)
会社の業績は悪くなっていません。
伸びるという期待が、株価の中で膨らみすぎていた分が、しぼんだだけです。
この5社への投資で一番儲かっているのは、防衛が国策だと知れ渡る前から持っていた人です。
商品ができた時には、もう遅いんです。
👉 みんなが知っている理由で、みんなより儲けることはできません。
「伸びる産業」と「儲かる投資」は別物だという話は、フィジカルAIファンドの記事でも書きました。
防衛の需要が本物でも、儲かる投資かどうかは別の問題です。
→ 「モルガン・スタンレー フィジカルAI株式ファンドは買い?」
一歩先いく 防衛テックと513A、買うならどっち?|投資信託は513Aを包んだぶんコストが上乗せ
513Aには、投資信託版もあります。
大和アセットマネジメントが2026年9月4日に設定した「一歩先いく 防衛テック-日本株式インデックス」です。
このファンドは、513Aをそのまま買うだけの投資信託です。
中身は同じです。
| 513A(ETF) | 一歩先いく 防衛テック(投資信託) | |
|---|---|---|
| 中身 | 防衛関連15社 | 513A |
| コスト(年・税込) | 0.649% | 0.7315%以内(ファンド分0.0825%+513A分0.649%) |
| 買い方 | 証券会社で株と同じように売買 | 100円から・積立も可 |
| 純資産 | 224億円 | 0.99億円 |
| 買える場所 | 証券会社全般 | SBI証券・楽天証券・マネックス証券 |
※2026年10月1日時点。大和アセットマネジメント 交付目論見書(2026年9月4日)・ファンドページより
投資信託は積立ができて便利な代わりに、包んだ分のコストが毎年0.0825%上乗せされます。
もう一つ、目論見書に書いてあることがあります。
一歩先いく 防衛テックは、純資産が30億円を下回った場合などに、繰上償還(途中で運用を終えてお金を返すこと)ができる決まりになっています。
設定から1ヶ月の純資産は、0.99億円です。
※繰上償還の条件は「できる」であって、必ずそうなるという意味ではありません
→ 「投資信託の「繰上償還」とは?」
ただ、ETFか投資信託かの違いは、この商品にとっては小さな話です。
どちらで買っても、中身は大手5社への集中投資で、生まれたばかりの指数です。
👉 どちらで買うかより、何を買っているかの方が、成績を大きく左右します。
513Aの掲示板・口コミ|「国策だから」と「国策にのせられた」
ここまでは仕組みと数字の話でした。
実際に持っている人は、何を書いているのか。
Yahoo!ファイナンスの513A掲示板を、9月7日から10月1日まで読みました。
匿名の書き込みで、内容が事実として保証されたものではありません。
それでも、買った人が何を期待して、何に困っているかは、公式資料よりずっとそのまま出ています。
賛否の中身
強気の声は、短くてはっきりしています。
「国策に不況無し」。
「下がる理由が、見当たらない」。
「ニーサ口座で購入したし5年後を期待するしかない」。
弱気の声は、もっと多く、もっと長いです。
「防衛 この言葉にのせられお金のない自分は少額投資を積み上げてゆけるここを買ってしまった」。
「こんな含み損じゃ放置するしかない とんだ国策だぜ」。
「信託報酬 0.649% を支払っても持つ価値があるか悩む」。
中身に気づいた人もいます。
「まぁこれで約75%なら個別で買えば良いのか」。
最初に見たとおり、上位5社で約8割です。
ETFを買っているつもりが、5社の株を持っている。
そのことに、買った後で気づいた人の声です。
一番考えさせられたのは、この書き込みでした。
「前に1000とか900だったからって、800が安いと思わない方がいいな」。
これは、とても正しい指摘です。
1,000円は上場したときの値段であって、この商品の値打ちを示す数字ではありません。
最初に見た数字を基準にしてしまう心のクセを、行動経済学ではアンカリングと呼びます。
もう買ってしまった人へ
売るか持ち続けるかは、この記事では決められません。
それでも、判断の順番は書けます。
まず、「元の1,000円に戻るまで待つ」は、持ち続ける理由になりません。
あなたが買った値段は、これからの513Aの値動きと何の関係もないからです。
決めるべき問いは、ひとつだけです。
👉 「今日の835円で、この商品を新しく買うか」
新しくは買わないと答えるなら、持ち続ける理由も同じだけ弱いはずです。
動かすなら、口座によって事情が違います。
- 課税口座(特定口座)で含み損の人:売って確定した損は、その年の他の株や投資信託の利益と相殺できます。相殺しきれない分は、確定申告をすれば翌年から3年間繰り越せます
- NISA口座で含み損の人:NISAの中の損は、他の利益と相殺できません。売った分の枠は、翌年に買った時の金額ぶん復活します
- 乗り換え先:市場平均と言える、十分に分散が効いたインデックスです。日本株にこだわるならTOPIX、こだわらないなら全世界株式やS&P500
→ 「損益通算・繰越控除とは?」
そしてもし動かすなら、ひとつだけ。
売ったお金を、次に話題になっているテーマ型の商品に入れないこと。
それをやると、同じ形の失敗をもう一度くり返すことになります。
それでもテーマに賭けたい人へ
止めはしません。
防衛の需要が本物なのは確かで、今後この指数がTOPIXを上回る可能性もあります。
ただ、2つだけ自覚して持ってください。
1つめは、これは「分散」ではなく「集中」だということです。
市場全体に、特定の5社を上乗せしている状態です。
2つめは、金額です。
なくなっても、あなたの老後の計画が崩れない金額にとどめてください。
👉 テーマに賭けるのは自由です。ただし、賭けていると知ったうえで。
まとめ|防衛テックETF(513A)に限らず、テーマ指数を見たときの3つの問い
防衛テックの次にも、新しいテーマの指数と商品は必ず出てきます。
そのたびに誰かの評判を探さなくていいように、この記事の中身を3つの問いにして渡します。
- その指数は、いつ生まれたか。グラフのどこまでがバックテストかを、注記で確かめる。誕生日より前の線は、答え合わせにすぎない
- 上位何社で何割か。上位5社で8割なら、それは5社への集中投資。「広く投資」という言葉ではなく、組入比率の表で判断する
- その成長の理由を、まだ誰も知らないのか。予算・国策・ニュースで誰もが知っている理由は、もう株価に入っている
防衛は国策です。
需要も本物です。
それでも、国策であることと、その株を今の値段で買って儲かることは、別の問題でした。
だから僕は、テーマではなく市場全体を、長く、低いコストで持ちます。
投資信託を選ぶときの全体の考え方は、こちらにまとめています。
▼ テーマ型ファンドを、別の角度から検証した記事はこちら

【本記事の注記】
513Aの基準価額・純資産はGlobal X Japan公表値(2026年10月1日まで)、構成比率は2026年10月2日のPCFから算出。
TOPIXはTOPIX連動ETF(1306)の配当込み価格で計測。
バックテストの数値はGlobal X Japan「インデックス・ニュース」(2026年5月28日)の図中の値。
過去の成績は過去にそうだったという事実で、将来の成果を示すものではありません。
📚 「みんなが知っている」の先を考えるための1冊
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「国策なのだから上がるはず」。
この記事を読んでも、その感覚が完全には消えない方がいると思います。
この本は、みんなが同じことを考えているとき、その考えはすでに価格に入っている、という「二次的思考」を、投資で一番大切なことの一つとして説明しています。
ニュースで聞いた「これから伸びる」を、そのまま買う理由にしない。
その一歩手前で立ち止まる考え方が身につく一冊です。
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本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資・保険の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。
