新NISAが始まって3年目。
2024年に「よし、やるぞ」と始めた人のうち、少なくない割合が今、こう感じているはずです。
「このまま続けていて、本当に大丈夫なのか?」
2024年のトランプ関税ショック。2025年のイラン情勢による地政学リスク。積立を始めてから、穏やかな右肩上がりだけを見られた人はほとんどいません。
含み損を初めて経験した人もいるでしょう。回復した後にまた下がって、もう一度不安になった人もいるでしょう。
この記事では、3年目に立ち止まっている人に向けて、「見直すべき人」と「放置でいい人」の判定軸を示します。
👉 結論から言えば、大半の人は「何もしない」が正解。ただし、設計ミスを抱えている人だけは、今すぐ見直す必要がある。
新NISA 3年目。ここが最初の分岐点
2024年1月、新NISAがスタートしました。
制度拡充のニュース、SNSでの盛り上がり、「非課税で資産形成できる」という魅力。それに背中を押されて投資を始めた人は非常に多い。
そして3年目に入った今、最初の「分岐点」が来ています。
なぜ3年目なのか。
1年目は、始めたばかりで気分が高揚している。多少の下落があっても「まだ始まったばかりだし」と思える。
2年目は、少しずつ慣れてくる。積立の習慣もつき、評価額が増えていく感覚に安心を覚える。
3年目は、違います。
暴落を経験した記憶がある。でも回復も経験した。「もう大丈夫かもしれない」と思い始めた矢先に、また下がる。
この「安心と不安の繰り返し」に3回目の波が来るのが、ちょうど3年目です。
そしてこのタイミングで、ある統計が意味を持ち始めます。
投資信託の平均保有期間が示す「3年の壁」
日本の投資信託の平均保有期間は、長くなってきたとはいえ、依然として短い。
投資信託全体の平均保有期間は約2.8年。株式型に限ると、国内株式で約2年、外国株式(先進国)でも約3年です(投資信託協会の推計データ、2025年末時点)。
つまり、多くの人は3年持たずに手放している。
「3年続けられる人は少数派」というのが、日本の投資家の実態です。
なぜ3年なのか。
1年目は「様子見」で耐えられる。2年目は「慣れ」で耐えられる。でも3年目に入ると、「このまま持ち続けて、本当にリターンは来るのか?」という疑いが強くなる。
加えて、3年間の中で大きな下落を1〜2回は経験するのが普通です。2024年のトランプ関税ショック、2025年のイラン関連の地政学イベント。3年目に入る頃には、「暴落の記憶」が蓄積されている。
人間は、利益より損失の記憶を強く保持します(この仕組みは後述します)。投資経験が浅い人ほど、この記憶に引きずられやすい。
「3年で売る」のは意志が弱いからではありません。人間の脳がそう設計されているだけです。
だからこそ、「3年の壁」を超えるには、気合ではなく構造的な理解が必要になります。
「あの暴落に耐えられた」で安心するのは、まだ早い
ここで、多くの人が見落としている事実があります。
2024年のトランプ関税ショックに耐えられた。あの時売らなかった。だから自分は大丈夫──。
その自信は、半分正しくて、半分危うい。
なぜか。
暴落の「下落率」は同じでも、資産が増えた後に来る暴落は、「下落額」がまったく違うからです。
具体的に見てみましょう。同じ-20%の暴落が来た場合、3年目の評価額ではどうなるか。
同じ-20%でも、額はここまで変わる
| 積立額 | 2024年初(1年目)の-20% | 2026年半ば(3年目)の-20%* |
|---|---|---|
| 月5万円 | 評価額60万円 → -12万円 | 評価額200万円 → -40万円 |
| 月10万円 | 評価額120万円 → -24万円 | 評価額400万円 → -80万円 |
| 月30万円(枠フル) | 評価額360万円 → -72万円 | 評価額1,200万円 → -240万円 |
*年利5%仮定の概算値
月5万円の積立でも、1年目の-12万円と3年目の-40万円では、心理的なインパクトが全く違います。
月30万円でNISA枠をフルに使っている人なら、2024年に耐えた-20%が3年目に来ると240万円の含み損。1年目の3倍以上です。
しかも、この構造は今後もっと大きくなります。資産が成長すればするほど、同じ下落率に対する下落額は増え続ける。5年目、10年目に-20%が来たら、さらに大きな額が目の前に並びます。
👉 過去に暴落に耐えられたからといって、今の資産額でも耐えられるとは限らない。リスク許容度は「率」ではなく「額」で再確認すべきだ。
自分の今の評価額に-20%、-30%、-50%を掛けてみてください。その数字を見て、「積立を続けられる」と思えるか。ここが3年目の本当の確認ポイントです。
リスク許容度の具体的な測り方については、投資におけるリスク許容度とは?自分の許容範囲の見つけ方と高める3つの方法で詳しく解説しています。
僕自身の話をすると、投資を始めた当初から50%の下落を想定しています。リスク資産が半分になるシナリオを、常に数字で意識している。
そうすると、暴落が来ても「想定の範囲内」になる。「耐える」のではなく、「想定通り」になる。この差は大きいです。
売りたくなるのは正常。でも売っていいかは別の話
3年目に「売りたい」と感じること自体は、異常でも恥ずかしいことでもありません。
むしろ正常です。人間の脳は、損失を利益の約2倍の強度で感じるように設計されています。これが損失回避バイアスです。
-10%の含み損は、+10%の含み益とは比べものにならないほど重く感じる。これは個人差はあっても、程度の差であって、誰にでもある反応です。
SNSが焦りを増幅する
もうひとつ厄介なのが、SNSの存在です。
暴落のタイミングでSNSを開くと、2種類の投稿が目に飛び込んできます。
ひとつは「暴落で〇万円溶けた」という悲鳴。もうひとつは「利確しておいてよかった」という自慢。
どちらも、あなたの判断を歪めます。
前者は「自分もこのまま持っていたらもっと損するかも」という恐怖を煽る。後者は「やっぱり売っておくべきだった」という後悔を植え付ける。
これが行動経済学でいう「参照点効果」です。他人の結果を自分の判断基準にしてしまう。
でも、他人がいつ買って、いくらで買って、どんな目的で持っていたかは、あなたとは全く関係がない。
「耐える」のではなく「構造を理解する」
よく見かけるYouTubeのコメントで「暴落が怖くて売りました」という声があります。
こうした人に共通しているのは、大きく3つです。
- インデックスファンドの仕組みを理解していない──インデックスファンドとは、日経平均やS&P500などの株価指数に連動する投資信託のこと。市場全体の成長を取りに行く設計であり、個別企業の倒産リスクとは本質的に異なる(→ 投資信託の選び方|”指数で決まり、商品で差がつく”2つの判断軸)
- 長期投資に向いていない商品を持っている──レバレッジ型やテーマ型など、短期の値動きに特化した商品を「長期で持つつもり」で買っている
- 自分のリスク許容度を正しく認識していない──「月10万円なら大丈夫」と思って始めたが、-20%で-80万円の含み損が出たとき、その額に耐えられなかった
「耐える」という発想自体が、実は危うい。耐えるのはいつか限界が来ます。
必要なのは、構造を理解して「想定の範囲内」にすること。知識と理論で武装することで、暴落を「耐えるもの」から「想定通りのもの」に変える。
👉 売りたくなるのは脳の正常な反応。でも「売る理由」があるかどうかは、感情ではなく設計で判断する。
暴落時に積立を続けるべきか迷ったら、相場が下がるとき、積立投資は続けるべきか?順序リスクをシミュレーターで解説も参考にしてみてください。
見直すべき人・放置でいい人|判定チェックリスト
では、3年目の今、「見直すべき人」と「放置でいい人」をどう見分けるか。
以下のチェックリストで判定してみてください。
今すぐ見直すべき人
以下に1つでも該当する場合、積立額・商品・ライフプランの再設計を検討してください。
- 生活防衛資金が6ヶ月分を切っている
生活防衛資金とは、万が一の失業や病気に備えて投資に回さず現金で確保しておくお金のこと。生活費6ヶ月〜1年分が目安です(→ 資産形成はこの公式だけ|収入・支出・運用の”正しい順番”)。暴落時に生活費が足りなくなって投資を売り崩す──これが最悪のシナリオ - 暴落が来たら「売らざるを得ない」支出予定がある
1〜3年以内に住宅購入、教育費、車の買い替えなど大きな支出が予定されている資金でNISAを運用している場合、設計ミスです - なぜその商品を選んだか説明できない
「SNSで勧められたから」「ランキング上位だったから」で買った商品を持っている場合、暴落時に確信を持って持ち続けられない - 積立額を「枠があるから」で決めた
NISA枠を埋めること自体が目的になっている場合、生活とのバランスが崩れている可能性がある(→ NISA貧乏は本当に危険?「設計された貧乏」と「無自覚な失敗」の境界線)
放置でいい人
以下にすべて該当する場合、何もしなくて大丈夫です。
- 生活防衛資金が6ヶ月分以上確保されている
- 積立額が手取り収入の範囲内で無理がない
- 保有商品がインデックスファンドで、選んだ理由を説明できる
- 1〜3年以内に大きな支出予定がない(あっても別資金で確保済み)
- -50%になっても積立を続けられるイメージが持てる
最後の項目が一番大事です。
自分の今の評価額を半分にした数字を、紙に書いてみてください。その数字を見ても「積立を続ける」と思えるなら、あなたは大丈夫です。
「見直す」=「売る」ではない
もし「見直すべき人」に該当しても、いきなり全部売る必要はありません。
やるべきことは、投資戦略の見直しではなく、ライフプランの再設計です。
- 積立額を、不安感が十分に減る金額まで下げる
- 生活防衛資金を先に積み直す
- 支出予定を書き出して、投資に回していい金額を再計算する
👉 一番危ないのは、暴落のタイミングで「売らざるを得ない状況」に陥ること。これは心理の問題ではなく、設計の問題。
3年目にやるべきことは、ほぼない
ここまで読んで、「自分は放置でいい人だ」と確認できた方へ。
3年目にやるべきことは、ほぼありません。
強いて言えば、この2つだけです。
1. 積立額の再点検
収入や支出が変わっていないか確認する。転職、昇給、子どもの進学、住宅ローンの金利変更──生活環境が変われば、投資に回せる金額も変わります。
ただし「もっと増やそう」とは言っていません。今のペースが無理のない範囲なら、変えなくていい。
2. 生活防衛資金の残高確認
投資を始めた頃に確保した生活防衛資金が、3年間で目減りしていないか。特に、生活費の上昇(インフレ)で実質的に不足していないかを確認してください。
それ以外は、何もしない。
積立設定をそのままにして、証券口座のアプリを閉じる。含み益も含み損も、見る必要がない。
これが、3年目の最適な投資行動です。
インデックス投資の本質は、市場全体の成長を長期で取りに行くことです。3年はその「長期」のほんの入口にすぎません。
暴落が来たとしても、それは「安く買えるチャンス」でしかない。積立フェーズにいる人にとって、下落は敵ではなく味方です。
5年後、10年後、20年後。積立を続けた人と、3年目にやめた人の差は、想像以上に大きくなります。
👉 3年目の最適解は「何もしない」。ただし、設計に穴がないかだけは確認しておく。
おまけ:インデックス投資家の保有期間は、実は長い
ここまで「多くの人が3年持たずに売る」という話をしてきましたが、明るいデータもあります。
三菱UFJアセットマネジメントが2025年2月に公表したデータによると、eMAXIS Slim 全世界株式(オルカン)の平均保有期間は7.7年、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)は6.5年。業界全体の4.3年を大きく上回っています。
しかも、この数字は2021年以降、業界平均との差を広げ続けている。
つまり、インデックスファンドを選び、仕組みを理解して買っている人は、ちゃんと長く持ち続けている。
投資信託全体の平均保有期間も、2015年の約2.0年から2025年末には2.78年まで伸びました。過去10年で最長です。新NISAの後押しもあり、「じっくり持つ」投資家が確実に増えている。
僕も含め、インデックス投資の合理性を理解して長期で積み立てる人が増えているのは、素直に喜ばしいことです。
この記事を読んでいるあなたも、きっとその一人になれます。
関連リンク【PR】
※ 下記リンクは成果報酬型広告です。遷移先は楽天証券の公式サイトです。
📚 この記事の根拠
※ 下記リンクは成果報酬型広告です。遷移先は楽天市場の公式サイトです。
長期インデックス投資の擬似体験ができる。今の恵まれた投資環境に感謝できる一冊
読書が苦手な方には漫画版もあります
本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。
