27個の口座を数えた夜。家計が「自動運転」になるまで(サイドFIREへの軌跡:第10話)

──深夜のリビング。
マネーフォワードの連携作業を終えて、口座一覧をスクロールする。

親指が、なかなか止まらない。

こんにちは、飛雄です。

ここまでの話を、簡単に振り返らせてください。

  • 第2話で家計を見える化して、「持ち物(銀行口座やクレジットカード)は厳選して、もっとシンプルな家計にしよう」と心に誓いました
  • 第8話では、口座の整理が間に合わず、1日50万円の制限に引っかかって、やりたかった年初一括投資を諦めました
  • 第9話で、夫婦の投資戦略がようやく固まりました
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戦略は、できた。次は、その戦略を毎月確実に実行してくれる「仕組み」の番です。

この回は、第2話の誓いと第8話の宿題──膨らみきっていた口座とカード──に決着をつけて、家計が「自動運転」になるまでの記録です。

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目次

スクロールしても、終わらなかった

もともと僕は、現金派だった。

財布から払えば済むものを、わざわざカードで払う理由がわからない。そういう人間が、資産形成の勉強を始めて、まず方針を変えた。家計を抜けもれなく把握するには、支出がすべて自動で記録される状態を作るしかない。現金をやめて、支払いをカードに寄せて、マネーフォワードMEに全部連携する。

だから連携作業を終えたあの夜、口座一覧には、銀行だけでなくクレジットカードもポイントも、「口座」としてずらりと並んでいた。

銀行、証券、カード、カード、ポイント、銀行、カード──。

数えたら、27個あった。

どの口座に何が入っていて、どこから何が引き落とされているのか。全部を言える自信は、まったくなかった。むしろ、数年間ログインすらしていない口座が交じっていることを、僕はもう知っていた。

持ち物は厳選して、もっとシンプルな家計にしよう。──そう心に決めた夜だった。

ただ、決めてすぐに動けたわけではない。口座もカードも、単体で存在しているわけではないからだ。給与の振込先、公共料金の引き落とし、カードの支払い口座。それぞれが矢印で繋がり合っていて、1個消すには、そこに刺さっている矢印を先に引き抜く必要がある。

わが家の「配線図」を描いてみた

僕は、自分の頭を整理するため、そして妻・仁花にも僕の考える理想像を見える化するため、現状のお金の流れをスライドにまとめることにした。

年末年始、どの口座に給与が入り、どの口座からどのカードが引き落とされ、どのカードで何を払っているか、1枚ずつ描き出していく。描き上がった図は、矢印だらけの配線図だった。我ながら、よくこれで家計が回っていたと思う。

続けて、理想の配線図を描いた。残す口座、解約する口座、切り替えるカード。給与が入ってから積み立てに向かうまでが、一本道で繋がっている。描きながら、少し気分がよかった。

厄介だったのは、順番だ。たとえば、仁花名義のカードの支払いが僕名義の口座から引き落とされている、昔の契約が残っていた。この口座を解約するには、先にそのカードを解約しないといけない。配線図の上で、解約の「順番」まで決めていった。

※ 夫婦の口座をどう分けて、投資に回す仕組みをどう作るかは、解説記事としてこちらに整理しています。
共働き夫婦の家計管理|口座の分け方と「投資に回す仕組み」の作り方

ゆうちょ、1日50万円の壁

2025年1月、投資資金を楽天証券へ動かし始めて、さっそく壁にぶつかった。

メインバンクにしていたゆうちょ銀行は、引き出しも送金も、1日50万円までだった。

まとまった資金を動かしたいのに、1日50万円ずつしか動かせない。年始にまとめて投資してしまう目論見は、この制限であっけなく崩れた。

申請すれば上限を引き上げられると知って、すぐに手続きをした。ところが、なかなか反映されない。結局、反映を待ちながら、50万円ずつ細かく資金を移す羽目になった。

送金の上限は、最終的に1,000万円まで引き上げた。ところが、その枠は今日まで一度も使っていない。ゆうちょから他行への送金には、手数料がかかるからだ。

限度額を引き上げても、1回ごとに手数料を取られるのでは使う気になれない。だったら、手数料無料の振込枠を持つネットバンクにお金の通り道そのものを移したほうが早い。

──ネットバンクを、上手に使おう。

50万円ずつの資金移動を繰り返しながら固まっていったこの考えが、のちの「自動運転」の土台になった。

「その口座は、解約できないんです」

2025年2月、クレジットカードの解約から着手した。

僕はカードを3枚解約して、ETCカードは楽天のものに切り替えた。銀行も1口座解約した。仁花もカードを2枚解約してくれた。

配線図のとおり、順調に進んでいた。──もう1つの銀行口座を、解約しに行くまでは。

窓口で解約を申し出た僕に、信用金庫の担当者はこう言った。

「こちらの口座は、出資証券をお持ちですので、解約できないんです」

出資証券。20代の頃、親から引き継いだ口座に、それは付いていた。存在すら忘れていた。

「その出資証券を、どなたかに譲渡していただかないと、解約できません」

思わず食い下がった。

「譲渡したら、その人は信金の口座が必要になるんですよね? で、その人も今度は解約できなくなる。……そんなことあります? この権利、いらないんですけど」

だめだった。制度は、制度だった。

「こちらで譲渡先を探して、ご連絡します」

そう言われて、渋々引き下がった。──その連絡は、1年以上経った今も、来ていない。

👉 持つのは一瞬。手放すのには、1年以上かかって、まだ終わらない。

口座も、カードも、権利も、持った瞬間から「いつか手放すコスト」を背負う。余計な持ち物は、持つもんじゃない。窓口からの帰り道、本気でそう思った。

妻のカードには、口を出さないと決めた

整理の設計を仁花に説明したとき、「カードは2枚くらいまで減らそう」と提案して、「そうだね」と了承をもらっていた。

自分の側の整理がひと段落したあと、あらためて話を振ってみた。

「カード、そろそろ解約しようか」

「これはこの店で使うし、こっちは解約してもいいと思うんだけど……たまに還元率いい時があるんだよね」

仁花は、日用品のせどりで結果を出すくらい、「いつ、どの店で、何が安いか」が完璧に頭に入っている人だ。いかに効率よく買い物をするかを考えるのが、そもそも好きなタイプでもある。

僕の理想はこうだ。細かいポイントを追いかけるより、持ち物をスッキリさせて、脳のリソースを空けたほうが得。でも、それはあくまで僕の頭の中での話だった。

仁花はカードを解約しなくても、その頭の使い方で実際に稼いでいる。かたや僕は、本業以外でまだ1円も稼げていない。どちらの時間の使い方が正解かなんて、僕が決められる話ではなかった。

設計の全体像は説明してある。あとは、本人が楽しいならそれでいい。そう結論づけて、この件で口を出すのはやめた。

もし僕がいつか副業で稼げるようになっても、「ポイントなんてどうでもいいから解約しちゃえ」と言うつもりはない。それだけは決めている。

毎月1日と8日、僕は何もしない

そして、現在。

僕の積み立ては、NISAつみたて投資枠に楽天カードで10万円、特定口座に楽天キャッシュ(現・楽天ペイ残高)で5万円、さらに楽天証券の口座引落で1万円。仁花は、楽天カードで10万円と、iDeCoに2.3万円。給与からは、企業型DCのマッチング拠出が天引きされていく。

カードの積み立ては毎月8日、現金分は毎月1日。どちらの日も、僕は何もしない。

僕の給与は、必要な額が必要な口座に直接振り込まれるよう設定した。仁花の勤め先は給与振込先が地銀に限られていたから、住信SBIネット銀行(d NEOBANK)の定額自動入金と定額自動振込を組み合わせて、地銀から楽天側へお金が勝手に流れるようにした。娘への仕送りも、自動振込にした。

この「定額自動入金+定額自動振込」が、めちゃくちゃ有能だった。

気づけば、夫婦そろって銀行ATMにほとんど行かなくなっていた。自動車税の支払いも、自宅のソファで一瞬で終わる(これは楽天ペイの恩恵だけれど)。それでいて、マネーフォワードを開けば、資産の全体像はいつでも完璧に見える。

積み立てを始めた序盤は、約定日の基準価額に多少感情が湧いた。「ちょうど約定日に上がっちゃった」「今月はうまく刺さったな」。──今は、まったく見ていない。意識にすら上らない。

小さなことかもしれない。でも、お金のことを考えなくていい時間が毎月確実に生まれて、その時間を別のことに使えている。

来年は娘の仕送りが終わり、就職した息子から生活費も入る。増えた分をそのまま積み立ての増額に回す設計も、もう決めてある。

積み立ては、「やること」ではなく「起きること」になった。

自分の設計した自動化で、自分が考える合理的な道を、日々歩めている。

スッキリ、という言葉では足りない。あの夜、スクロールしても終わらなかった画面の前の僕に教えてやりたいのは、この感覚だ。

まとめ|口座整理の本丸は「数を減らすこと」ではなかった

数だけ見れば、27個の口座は22個になりました。

「大して減ってないじゃん」と思われたかもしれません。正直、僕もそう思います。信金の口座は塩漬けのままですし、仁花のカードは本人の判断に委ねています。理想を言えば夫婦で銀行2・証券2・カード2の12個まで絞りたいのですが、会社員でいるうちは難しいだろうとも感じています。

それでも、家計は自動運転になりました。

変わったのは、「流れ」です。口座整理の本丸は、数を減らすことではなく、お金の通り道を設計し直すことでした。数が5個しか減らなくても、矢印だらけだった配線図は、給与から積み立てまでが一本道で繋がるシンプルな図に変わりました。

一度流れを引き直せば、あとは努力ゼロで毎月効き続けます。この構造は、固定費の倹約とまったく同じです。

※ 「一度やれば効き続ける」倹約と、都度がんばる節約の違いは、こちらで整理しています。
倹約と節約は何が違う?家計改善で先にやるべきは「固定費」である理由

この整理で学んだことは、3つです。

  1. 余計な持ち物は、持つもんじゃない。どんな持ち物も、持った瞬間から「手放すコスト」を背負います。僕の場合、その支払いは1年以上かかって、まだ終わっていません
  2. 自動化は、意思力の外部化。「積立を続ける強い意志」は要りません。壁(限度額)を力技で越えるより、壁のない場所に道を引き直す。意志は、仕組みを作るときに一度だけ使えば十分です
  3. 家計の設計は共有し、判断は本人に委ねる。僕の「スッキリ」と仁花の「ポイント」は、どちらも本人にとっての最適解でした

📚 “より少なく”が家計でも武器になると腹落ちする1冊

※ 下記リンクは成果報酬型広告です。遷移先はAmazon・楽天の公式サイトです。

口座を整理するあいだ、僕の頭の中にずっとあったのは、投資本ではなくこの本でした——「より少なく、しかしより良く」。何かを増やす前に、まず減らす。エッセンシャル思考は仕事術の本として有名ですが、僕には「家計の持ち物を減らして、脳のリソースを空ける」ことの価値を裏打ちしてくれる本でもありました。減らした先にだけ、自動化できるシンプルさが残ります。

ここまでの軌跡で、僕は「気づく」「見える化する」「固定費を削る」「合意する」「制度と器を選ぶ」「買う」「下落と向き合う」「戦略を作る」を経験してきました。

そしてこの第10話で、ようやく「戦略が、勝手に実行される状態」にたどり着きました。

サイドFIREへの道は、意思の強さだけで歩き続けるには長すぎます。20年、30年と続く道のりで頼りになるのは、今日のやる気ではなく、昨日までに作った仕組みです。

▼ 「節約をがんばる」のではなく「仕組みを入れ替える」という考え方は、こちらでも書いています。

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【本記事の注記】

  • 「27個」「22個」は、マネーフォワードME上の連携数です。マネーフォワードMEでは銀行・証券・クレジットカード・ポイント等の連携先をまとめて「口座」として数えるため、本文でもこの数え方に従っています
  • 内訳:僕がカード3枚と銀行1口座を解約、ETCカードは楽天ETCカードへ切替。妻がカード2枚を解約。一方でiDeCoの口座が1つ増えたため、差し引きで27個→22個です
  • ゆうちょ銀行の限度額は、当時の初期設定で引き出し・送金とも1日50万円でした。送金上限は手続きで1,000万円まで引き上げましたが、他行宛送金の手数料の関係で結局使わず、資金移動はネットバンク経由に切り替えました。引き出し上限(500万円まで引き上げ可能)は、現在の構成では不要になったため手続きしていません。なお、第8話の注記で触れた「年初一括投資を諦めた制限」は、この限度額のことです
  • 「楽天キャッシュ」は、本記事執筆時点の直近に「楽天ペイ残高」へ名称変更されています。本文では旧称(現名称)の形で表記しています
  • 積立額・口座構成は執筆時点のものです。金額やサービス仕様(限度額・手数料等)は変わる可能性があるため、最新の公式情報をご確認ください

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【免責事項】
本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資・保険の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。
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この記事を書いた人

ファイナンシャルプランナー(FP技能士)|東証プライム上場企業の会社員。
40代から資産形成に本気で取り組み、1年で純資産1000万円増を達成。
「今さら遅いかも…」と不安な方へ、データと実体験に基づく合理的な資産形成を発信しています。

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