こんにちは、飛雄です。
「資産形成って、何から始めたらいいんだろう」
「40代から投資なんて、もう遅いんじゃないか」
そんな疑問を抱えている方に向けて、このシリーズでは僕自身の実体験をもとにした資産形成の考え方と行動のポイントをお伝えしていきます。
かつて個別株投資で60万円を溶かした僕のように、投資で失敗したトラウマを抱えている方でも大丈夫です。
「サイドFIREへの軌跡」では、うまくいったことだけでなく、失敗したことや遠回りしたこと、その理由まで包み隠さず書いていきます。
前回、僕は毎月約7万円を飲み込み続けていた「保険」という聖域にメスを入れ、その正体を知りました。変額保険も医療保険も、合理的に考えれば必要ない。──そう結論づけた僕は、ついにすべてを解約する決断を下します。
しかし、その決断には、どうしても越えなければならない最後の壁がありました。
──妻・仁花との合意形成です。
第4話の今回お伝えするのは、次の3つです。
✅ 保険を解約したい僕 vs 不安を感じるかもしれない妻。想定問答フル回転の説得作戦
✅ 「いいんじゃない?」──予想外すぎた妻の反応と、僕が気づいた大事なこと
✅ 解約当日、営業マンから放たれた最後のカウンターと、僕の決断
資産形成で一番難しいのは、投資でも節約でもありません。──家族との合意形成です。
僕が「家庭というチーム」で資産形成を進めることの意味を学んだ、忘れられない1週間の記録です。
どんな人間の実践記なのかは、プロフィールもあわせてご覧ください。
変額保険を解約する──最後の壁
タイムリミットは1週間
変額保険の本質に気づいたあと、僕は静かに覚悟を固めていた。
運用商品としては劣悪、保険機能としても中途半端。──いま、断ち切るべきだ。
「よし、ドル建て変額保険、解約する」
口に出した瞬間、自分の声が、思っていたより低く響いた。
変額保険だけじゃない。ほとんど使ったことのない医療保険も含めて、A社の保険はすべて手放す。──そう、もう決めていた。
けれど、そこに立ちはだかる最後の壁があった。
──妻・仁花との、合意形成だ。
タイムリミットは、A社営業マンとの面談日。
残された時間は、あと1週間。
──ここからが、本番だ。
想定問答を頭の中で何度も繰り返す
仁花は、家族思いで堅実な人だが、慎重派でもある。
納得していないものに、首を縦に振るタイプではない。
通勤電車の中、昼休みの社員食堂、夜のシャワーの下。──気づけばずっと、頭の中で想定問答集を回し続けていた。
──「もし働けないほどの病気になったら?」
──「医療保険はあった方が安心じゃない?」
──「今まで払ったぶんはどうなるの?」
──「変額保険は増えてるんでしょ?このままでもいいんじゃないの?」
そのすべてに、その場で答えられるようにしておきたかった。
頭の中で、僕はこう返す予定だった。
- 働けなくなったときの住宅ローンに備えていたのが収入保障保険なんだけど、ちゃんと確認したら退職金の額が今の保障額を超えていた。だから大丈夫。A社以外の掛け捨て生命保険は残すから、死亡時もカバーできる。
- 医療費は3割負担で、高額療養費制度もある。今の資産なら自己負担分は十分払える。しかも、所属している健保組合には付加給付制度もあるんだ。診療以外にかかる費用を入れても、必要になる金額は意外と少ない。
- 掛け捨ての分はもちろん戻ってこない。でも、そのあいだ「安心を買っていた」って考え方をしよう。「これまでの分がもったいないから」と続けると、これからの分も将来「もったいない」になる可能性のほうが、ずっと高いんだ。
- 変額保険、確かに増えてはいる。でも、同じ条件でインデックス投資をしていたらもっと増えていた。差額は、実質「500万円の死亡保障代」になっていた計算なんだ。同じ保障なら、別の掛け捨てのほうが圧倒的に安い。だから保険と運用は分けたほうが、絶対に自分たちの将来のためになる。
──どうだろう。
これで仁花は、納得してくれるだろうか。
理詰めになりすぎず、かといって、適当に言っているとも思われない程度。
頭の中で、ひたすらバランス調整を繰り返していた。
妻の反応は予想外だった
勇気を出して切り出す
緊張していた。
告白以来の、緊張感だった。──いや、もしかすると、それ以上かもしれない。
保険の解約は、僕一人の問題じゃない。家族のお金の話だ。
ここで仁花が「不安だからやめよう」と言えば、すべては振り出しに戻る。──そういう話だ。
夕食を済ませ、リビングのソファ。テレビは、ほとんど聞き流している番組。
深く息を吸って、僕は切り出した。
「……色々考えたんだけど、A社の変額保険と医療保険、解約しようと思ってるんだ」
沈黙──。
体感時間は、たぶん3秒くらい。
けれど、その3秒のあいだ、想定問答集の見出しが、頭の中を高速で流れていった。
帰ってきた言葉
「いいんじゃない?」
「……えっ?」
テレビの音だけが、急にやけに大きく聞こえた。
「医療保険も、コロナでちょっと返ってきただけだし。生命保険も、結局どちらかが死なないと使えないってことが気になってたし。──それに、飛雄がすごく勉強して考えてくれてるの、知ってるから。信じるよ!」
──合意形成、完了。
え、こんなに簡単でいいの……?
用意した想定問答集は、1ページも開かれずに、丁寧に閉じることになった。
拍子抜けと、安堵と、それからもうひとつ、なんとも言葉にしにくい感情が、胸の奥でじんわり広がっていく。
──信頼が足りなかったのは、自分の方だったのかもしれない。
仁花は、ちゃんと僕を信頼してくれていた。
「説得しなければならない相手」だと、勝手に位置づけていたのは、僕のほうだった。
夫婦で資産形成を進めるときに大切なこと
家計は個人のものではない
パートナーがいる人にとって、家計は個人のものではありません。家計管理も資産形成も、パートナーとの共同プロジェクトです。
もともと赤の他人だった2人。生まれた場所も、育った環境も、価値観も、なにもかもが違う2人が、お金という共通のテーマで、毎日のように共同で意思決定をしていく必要があります。
どちらか一方が常に少しずつ我慢するような状況では、いずれ必ず破綻します。
人は合理性だけでは動かない
知識さえ身につければ、お金にまつわる多くのテーマは、合理的な最適解を「数学的に」考えることができます。
──ただし、人は合理性だけでは動かない、ということも、同時に知っておかなければなりません。
古典的な経済学は基本的に「すべての人間が合理的な選択をする」という前提で組み立てられてきましたが、近年、より重視されてきているのは「行動経済学」の考え方です。
たとえば、
- プロスペクト理論
- 損失回避バイアス
- サンクコスト効果
──など。人間である以上、合理的な資産形成を阻むこれらの特性を、自分自身もパートナーも持っているのが当たり前。そう理解した上で向き合っていく必要があります。
僕が陥りそうになった「危険なやり方」
論理で説得しようとしていた
正直に書きます。
保険の解約を仁花に切り出すとき、僕にはまだ、行動経済学的な視点はほとんどありませんでした。
自分の行動原理である「合理性」で説明すれば、きっと分かってくれる。
──そう考えて、数字、確率、制度。
「正しさ」の三点セットで、相手を説得しようとしていたのです。
必要なのは「信頼の積み重ね」
でも、結果から見えてきたのは、合理性そのものよりも、「一生懸命に学んでいる姿」「真剣に考えている姿」のほうが、ずっと強い説得力を持っていた、ということでした。
もちろんそれは、直近の姿だけではなく、これまでの積み重ね全体の話だと思います。
たとえば、収入の話題になったとき、仁花がよく「いつもしっかり稼いでくれてありがとう」と言ってくれます。そんなときは、僕は必ず「仕事に集中できるのも、仁花のおかげだから」と返してきました。
本当にそう思っているからですし、実際、家事も育児も、そのほとんどを仁花が担ってくれてきました。
──ただ思っているだけでなく、こうして感謝を「言葉にして」伝え合っていたこと。それも、合意形成における大事なファクターだったのかもしれない、と、いま振り返って思います。
最終決戦:保険営業マンとの面談
フル解約
もともと、「変額保険の見直し相談」という名目で予約していた面談だった。
けれど、想定外のスピードで仁花の合意を得られた僕は、開口一番、こう告げた。
「すべての契約を解約します」
営業マンの目が、ほんの一瞬だけ泳いだ。──当然だろう。「見直し相談」のはずの客が、初手で全解約を宣言してきたのだから。
続けて、「現在の自分たちの状況では必要ないと判断しました」と、はっきり伝える。
すると、意外にもあっさりと、手続きが進みはじめた。
営業マンも、一度こうなった客には深追いしない、というプロのスイッチがあるのかもしれない。──結果、まさかの当日中にすべての解約が完了。事前の準備で固めた「自信」と「論理武装」が、ここでも効いていた。
最後のカウンター
──だが、最後の最後に。
営業マンは、ほんの少しだけ間を置いて、こう切り出してきた。
「実はですね、認知症になった場合、銀行口座がロックされることがあるんですが、この保険なら資金を引き出せるんです。──それでも、解約でよろしいですか?」
思わぬ、カウンターアタック。
けれど、僕は微動だにしなかった。認知症リスクと家族信託の話題も、しっかりYouTubeで予習済みだったからだ。
──契約時にそんな大事なこと、一言も言わなかったじゃん。
心の中で軽く突っ込みつつ、表情だけは落ち着けて、「はい、大丈夫です」と短く返した。
──逆の立場なら、たぶん泣きながら引き止めてしまう場面。それを、なんとか涼しい顔で乗り切る。
そして、解約手続きの書類が積み上がりはじめた頃。営業マンが、ふと笑いながら、こう聞いてきた。
「S&P500とかに、回すんですか?」
──さすがに、吹き出しそうになった。
(バレてる……!)
同じ業界で日々客と接している人の嗅覚は、やっぱり鋭い。
そして、僕の進む方向も、もう、はっきりしていた。
まとめ
こうして僕は、資産形成に取り組み始めてから約3週間で、固定費最大の敵だった「保険」の削減に成功しました。
ただ、今回の経験で強く感じたのは、資産形成で一番難しいのは「お金」ではないということです。
家計は個人のものではなく、パートナーと一緒に進めていく共同プロジェクト。合理的な答えがわかっていても、それを実行できるかどうかは、最後は「信頼関係」にかかっています。
そして、その信頼は、お金の話を切り出した瞬間に組み上げるものではなく、日々のやりとりの中で、少しずつ積み重ねるものでした。
今回はたまたま、その貯金が想定以上にあった、というだけの話なのかもしれません。
保険解約を決断する前に、変額保険が実際にどれだけ不利だったかを数字で確認した記事も用意しています。

このシリーズで読める他のエピソード
← 前の話:第3話 保険という「聖域」にメスを入れた日
→ 次の話:第5話 通信費で学んだ意思決定の落とし穴
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本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。

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