こどもNISAとは|2027年開始の制度と、引き出し制限の落とし穴

「12歳になれば、いつでも引き出せる」

こどもNISAの解説記事には、たいていこう書かれています。

条文は、そうなっていません。

引き出せる使い道は教育費と生活費に限られます。しかも「12歳」の数え方は、制度の対象年齢を判定する日付と別の日で決まります。

こどもNISAは2026年3月31日に法律が成立し、公布されました。

「2027年に始まる予定の制度」ではなく、中身が確定した制度です。

だから今のうちに、正確に読んでおく価値があります。

この記事では、財務省・金融庁の一次資料をもとに、こどもNISAのルールを整理します。子どもが生まれた方、これから生まれる方に読んでほしい。

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目次

こどもNISAは「予定」ではありません。中身は確定しています

基本スペック

項目内容
対象年齢0〜17歳(その年1月1日時点で18歳未満。生まれた年も対象)
年間投資枠60万円(月換算5万円)
非課税保有限度額600万円(簿価=買った値段で判定)
非課税保有期間無期限
投資対象成人のつみたて投資枠と同じ投資信託・ETF(個別株は不可)
口座開設可能期間2027年1月1日以降(終期の定めなし=恒久制度)
18歳到達時手続き不要で成人のつみたて投資枠へ自動移行

ざっくり言えば「新NISAのつみたて投資枠を、0〜17歳に解禁した」だけです。買える商品も、成人が使っているつみたて投資枠と同じ棚から選びます。

2点だけ補足します。

個別株は買えません。 成長投資枠にあたる勘定を、こどもNISAと同時に持てない設計になっているためです。

一方でETFは対象に含まれます(つみたて投資枠の指定要件を満たす上場投資信託)。

「ETFも不可」と書いている解説を見かけますが、条文は投資信託と上場投資信託の両方を対象に並べています。

600万円は簿価で数えます。

買った値段の合計が600万円までという意味で、値上がりして時価が800万円になっても問題ありません。ここは成人NISAの1,800万円と同じ考え方です。

法令上「こどもNISA」という制度名は存在しません

正式には未成年者特定累積投資勘定といいます。これは制度名ではなく、NISA口座の中に設ける「勘定」の名前です。

金融庁の資料でも、この改正の見出しは「つみたて投資枠の対象年齢見直し」。つまり新しい箱ができたのではなく、既存のつみたて投資枠の年齢制限が外れたというのが実態に近い。

呼び名の話に見えますが、これは後で効いてきます。「別の制度なら、枠も別だろう」という直感が外れる理由が、ここにあるからです。

引き出しは「いつでも」ではない。使えるのは教育費と生活費だけです

ここがこの記事の本題です。

12歳未満:原則、引き出せません

例外はあります。

災害、疾病その他のやむを得ない事由が生じた場合。

ただしこの例外を使うときは、口座の中身を全部払い出すことが条件です。

一部だけ取り崩して残りを運用継続、はできません。

12歳以降:使い道が「教育費または生活費」に限られます

条文は、払い出しの理由を「当該居住者等の教育費又は生活費の支払に充てるためのものに限る」と書いています。大綱の表現ではさらに具体的に「学校等の入学金又は授業料その他の教育費又は生活費」。

手続きも決まっています。親権者が書類を出し、子ども本人が同意したことを証する書類を添付する

つまり「12歳を過ぎたら親の判断で自由に動かせる」わけではありません。

中学受験の塾代、高校の入学金、大学の受験料——こうした支出には対応できます。

でも、たとえば家計の資金繰りで一時的に借りる、住宅ローンの繰上返済に回す、といった使い方はできません。

👉 こどもNISAは「子どもの教育と生活のために封をした口座」です。家計の自由なお金ではありません。

年齢の基準日が、2つあります

ここが一番混乱しやすいところです。

何を判定するか基準日
対象年齢(0〜17歳)その年の1月1日
払い出し制限が解ける12歳その年の3月31日
制限が完全に外れる18歳その年の3月31日

対象年齢は1月1日、払い出しは3月31日。同じ制度の中で日付が使い分けられています。

3月31日を基準にしているのは、学年と揃えるためだと考えると理解しやすい。

日本の学年は4月始まりなので、「3月31日時点で12歳」=中学に上がる学年、「3月31日時点で18歳」=高校を卒業する学年です。

進学のタイミングでお金が動かせるように設計されている、と読めます。

売ったお金も、すぐには外に出せません

こどもNISAの中で投資信託を売ると、その代金は特定課税未成年者口座という専用の預り金口座に入ります。同じ金融機関に紐づく、いわば出口のない待合室です。

分配金も同じです。制限期間中は、ここから外へ出すには上で書いた払い出しルールを通す必要があります。

「値上がりしたから一度売って利益を確定させ、そのお金は別に使う」——こういう動かし方は想定されていません。

ルールを外れると、さかのぼって課税されます

制限に反する払い出しをしたり、途中で口座を廃止したりすると、それまで非課税だった譲渡益や配当に対して、さかのぼって課税されます。税率は約20%(所得税15%・住民税5%)。

非課税のメリットが後から取り消される、という設計です。

僕はここを重く見ています。最長18年、教育費・生活費以外では手をつけられない前提の口座だからです。

600万円は「追加の枠」ではありません。1,800万円の内数です

これも誤解が多い点です。

こどもNISAで積み上げた600万円は、子どもが18歳になったときに成人のNISA枠へ引き継がれます。このとき、成人NISAの生涯非課税限度額1,800万円の中に組み込まれます

「子ども時代に600万円+成人後に1,800万円=合計2,400万円」にはなりません。600万円を使い切った状態で18歳を迎えると、成人後に新しく使える枠は1,200万円です。

なぜそうなるか。理由はシンプルで、こどもNISAは「別の制度」ではないからです。

冒頭で書いたとおり、こどもNISAの正体は「つみたて投資枠の年齢制限が外れたもの」。

法律上は、成人が使っているつみたて投資枠と同じ種類の勘定として定義されています。

そして1,800万円を数えるときの計算式から、未成年時代の分を除外する規定はどこにも置かれていません。

同じ勘定なのだから、同じ枠で数える——それだけのことです。

金融庁の資料の図でも、600万円から伸びた「自動的に移行」の矢印は、1,800万円の枠の内側に入っています。

一方で、未成年のうちの600万円判定は「未成年者特定累積投資勘定に受け入れている分」だけを見ます。入るときは独立、出るときは合流という非対称な設計です。

👉 こどもNISAは非課税枠を増やす制度ではなく、1,800万円を使い始める時期を早める制度です。

ジュニアNISAの残高がある人へ

ジュニアNISA(2016〜2023年)は新規購入が終了しています。既存残高について、いま知っておくべきことは2つです。

① 払い出しはいつでもできますが、全部です

2024年以降、年齢や事由に関係なく非課税で払い出せるようになりました。

ただし金融庁が明記しているとおり、一部だけを払い出すことはできません

保有する全ての金融商品を払い出したうえで、口座は廃止されます。

「学費で必要な分だけ取り崩して、残りは運用を続ける」ができない、ということです。

② 継続管理勘定には期限があります

18歳になるまで非課税で保有し続けられる「継続管理勘定」は、2024年から2028年までの間、かつ1月1日時点で18歳未満である年に限って設定されます。

ここに新しく買った商品を入れることはできません

18歳到達時には課税口座へ払い出され、成人NISAへ移すことはできません。

慌てて動かす必要はありませんが、「いつ課税口座に出るのか」は把握しておいてください。

制度を知ったうえで、使うかどうか

ルールが分かったところで、順番の話をします。

僕の考えは「まず親のNISA枠を使い切ってから」です。

理由は老後優先という精神論ではなく、親の枠のほうがつぶしが効くから。

こどもNISAは今回見てきたとおり、用途が教育費と生活費に固定され、途中で自由に動かせません。

親の枠なら、教育費に使ってもいいし、使わずに済んだら老後資金として残せます。

教育資金でも、器は「子のNISA」より「親のNISA」が先。こどもNISAで悩む前に

学資保険と迷っている方は、実際に15年払い切った結果を見てください。同じ165万円で448万円の差が出ました。

学資保険 vs こどもNISA|同じ165万円で448万円の差が出た理由

教育費全体を「いつ使うか」で組み立てたい方はこちらへ。

教育費の貯め方|学資保険・NISA・預貯金を「使う時期」で組み合わせる

まとめ。この口座は「引き出せない前提」で設計する

こどもNISAの中身を整理すると、こうなります。

  • 年60万円・生涯600万円まで、非課税期間は無期限
  • 買えるのは成人のつみたて投資枠と同じ投資信託・ETF。個別株は不可
  • 12歳未満は原則払い出し不可。12歳以降も使途は教育費と生活費に限られる
  • 対象年齢は1月1日、払い出しの12歳・18歳は3月31日で判定する
  • 600万円は成人NISAの1,800万円の内数。追加枠ではない
  • ルール違反や口座廃止で、さかのぼって20%課税される

制度として悪い、という話ではありません。

18年間動かさないお金を置く場所としては、よくできています

非課税期間は無期限で、18歳になれば手続きなしで成人のNISAへ移る。

教育費に使わなければ、そのまま子どもの資産形成の元手になります。

問題は、この口座を「いざとなったら使える貯金」だと思って始めることです。いざとなっても使えません。

だから順番はこうです。

生活防衛資金を現金で確保する。

親のNISA枠を使う。

それでも余力があるなら、こどもNISAを上乗せする。

👉 引き出せない口座に入れていいのは、引き出さなくても困らないお金だけです。

今すぐできること

  • 2027年1月まで待つ必要はありません。親のNISA枠が空いているなら、今日から積み立てたほうが機会損失が小さい
  • 年60万円の枠を埋め切る必要もありません。月1万円でも、18年あれば積み上がります
  • 教育費のうち「3年以内に使う分」は現金で。こどもNISAには入れない

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この記事で見てきたのは、こどもNISAという「制度の形」でした。では、その器に何を入れて、どこまで置きっぱなしにしていいのか。この本は、普通の人がやるべきことを、低コストのインデックス積立という一本の筋に絞って説明してくれます。
読み終えると、こどもNISAを使うかどうかを商品選びではなく設計の問題として考えられるようになります。制度は複雑でも「やり方」そのものは驚くほど短い——それが腹落ちする、僕の評価は満点の1冊です。

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【本記事の注記】

  • こどもNISAの制度内容は、所得税法等の一部を改正する法律(令和8年3月31日成立・公布)の要綱および新旧対照表、令和8年度税制改正の大綱、金融庁「令和8年度税制改正について」に基づく(2026年7月時点)
  • 「特定累積投資勘定基準額」の具体的な計算方法は政令に委任されている。本記事の1,800万円との関係は、法律の定義規定(未成年者特定累積投資勘定=特定累積投資勘定の一種)に基づく整理
  • 金融機関の口座受付開始時期は、2026年7月時点で公式な発表を確認できていない
  • ジュニアNISAの取扱いは金融庁NISA特設サイトおよび国税庁「ジュニアNISAの手続に関するQ&A」に基づく
【免責事項】
本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資・保険の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。
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この記事を書いた人

ファイナンシャルプランナー(FP技能士)|東証プライム上場企業の会社員。
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