貯蓄型保険の見直し|変額保険は「数字」で全世界株と比べると答えが出る

正直に言うと、僕自身がいちばん見直しに時間がかかったのが「貯蓄型保険」でした。

掛け捨ての医療保険なら「いらない」と割り切れても、お金が積み上がっていく貯蓄型・変額保険は、解約しようとした瞬間に手が止まります。

証券を開いて解約返戻金の数字を見て、「ここで解約したら元本割れか…」と、そっとページを閉じた経験がある人もいるのではないでしょうか。

この記事は、その「手が止まる瞬間」を超えるための記事です。

難しい保険理論は使いません。やることは一つ、同じお金を「保険のまま持つ」場合と「自分で全世界株に積み立てる」場合を、同じ条件で数字で並べてみる。それだけです。

👉 結論を先に言います。保障と運用は、分けたほうがいい。

貯蓄型保険は「保険」と「投資」が1本に混ざっていて中身が見えないから、損か得かを自分で判断できません。分けて数字で見れば、自分がどうすべきかは自分で決められます。

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目次

そもそも貯蓄型・変額保険の何が「見直し対象」なのか

貯蓄型保険(終身保険・養老保険・個人年金・変額保険など)の特徴は、「もしものときの保障」と「お金を増やす運用」が1本のパッケージに入っていることです。

一見、便利に見えます。保障もついて、お金も増えて、しかも「保険だから」と半強制的に積み立てが続く。僕も「貯金が苦手な自分にはちょうどいい」くらいの気持ちで契約しました。

でも、見直しの視点で見ると、この「混ざっている」こと自体が問題になります。

✅ いくらが保障のコストで、いくらが運用に回っているのか分からない

✅ 運用部分が年利何%で回っているのか、パッと出てこない

✅ だから「得なのか損なのか」を自分で判断できない

つまり、中身が見えないから見直せない。これが貯蓄型保険の「見直し対象」たるゆえんです。

とくに投資性の強い変額保険は、実質は「保険の皮をかぶった投資信託」。なら、投資として見たときに優秀なのかどうかを、数字で確かめる権利が僕たちにはあります。

終身保険が「貯蓄代わり」になるという通説のどこが崩れるのかは、こちらで整理しています。

「終身保険はいらない|3つの神話を解体して見えた結論」

同じ月2万円・10年で比べてみた(変額保険 vs 全世界株)

ここからが本題です。感覚ではなく数字で並べます。

条件はシンプルに、月2万円を10年間積み立てるケースを考えます。架空のケースですが、数字の整合は取ってあるので、ご自身の保険料・年数に置き換えて読んでみてください。

・毎月の積立:20,000円
・積立期間:10年間
・払い込む元本:240万円

この240万円を、(A)変額保険で運用した場合と、(B)自分で低コストの全世界株インデックスファンドに積み立てた場合で比べます。

ここで使うのは「手数料を引いたあとに、実際に手元の資産が年何%で増えたか(実質リターン)」です。変額保険は中の運用がうまくいっても手数料が重いので、実質リターンは低くなりがちです。

ここでは仮に変額保険=年3%/全世界株=年7%として置きます。過去の全世界株はもっと高い時期もありましたが、将来を保証する数字ではないので、控えめな前提で揃えています。

(A) 変額保険(B) 全世界株(低コスト投信)
払い込む元本240万円240万円
仕組み保険料からまず手数料を引き、残りを運用ほぼ全額が運用に回る
実質リターン(仮)年3%年7%
10年後の評価額279万円346万円
運用益+39万円+106万円
変額保険(年3%)と全世界株(年7%)の運用益比較。同じ240万円・10年で約67万円の差。

同じ240万円を、同じ10年間積み立てただけ。なのに、手元に残る運用益は約67万円も違います。

👉 この67万円が、10年間で保険会社に渡した「見えないコスト」の実額です。

途中解約で元本割れする「本当の理由」と、それでも待つのが損な理由

ここで多くの人がつまずきます。「でも、いま解約したら元本割れするから、もう少し待ったほうがいいのでは?」と。

僕も完全にそう考えていました。でも、これは順番が逆です。

元本割れは「これから損する」ではなく「もう手数料を払った跡」

貯蓄型・変額保険が途中解約で元本割れするのは、契約の初期に、手数料をごっそり前取りされているからです。最初の数年は、払った保険料の多くが保険会社の経費に消え、運用に回る分が少ない。だから5年目あたりで解約すると、払い込んだ120万円を下回ることも珍しくありません。

ここが肝心です。その目減りは、もう過去に払い終わったコストです。これから解約しようがしまいが、戻ってはきません。行動経済学でいう「埋没費用(サンクコスト)」そのものです。

「ここまで払ったんだから、損益分岐点まで待って取り返そう」という気持ちはとても自然です。でも、取り返す相手は保険会社ではなく、これからの運用。だったら、その運用を手数料の重い保険で続けるか、手数料の軽い全世界株でやるか、という話に置き換わります。

なぜ解約に踏み切れないのか、その心理の正体(サンクコスト)はこちらで掘り下げています。

「保険を解約できないのは『もったいない』からではない」

しかも手数料は「払い終わり」ではない

もう一つ大事な事実があります。前取りされた手数料で終わりではなく、変額保険は運用している間もずっと、保険関係費・運用関係費がかかり続けます。そしてその水準は、低コストのインデックスファンドよりずっと高い。

ある試算では、変額保険のコストは良心的な投資信託の数百倍にのぼるとも指摘されています(※水準は商品・時点で変わります)。

▼ ここまでを整理すると

✅ 元本割れ=過去に前取りされた手数料の跡(取り返す対象ではない)

✅ 持ち続ける限り、これからも割高な手数料を払い続ける

✅ 同じ運用を自分で低コストでやれば、その手数料ぶんだけ有利になる

だから、そのお金を「この先も長く運用していく」つもりなら、元本割れしていても早く解約して低コストの投信に移したほうが合理的です。「早く投資を始めたほうが有利」なのとまったく同じ理屈で、「割高な箱から早く出したほうが有利」なのです。

「でも保障がなくなるのは困る」という場合も、答えはシンプルです。同じ保障を割安な掛け捨ての保険で確保し直せばいい。保障を切り離した分、投資に回す金額が少し減ったとしても、割高な保険の中で運用を続けるより明らかに有利になります。

保険会社は、手数料を引いたあとでも長期で運用すれば、元本を上回るくらいまで増やせる商品設計にしています。それは裏を返せば、手数料を抜きにして自分で同じ運用をすれば、もっと増やせるということを、保険会社自身が証明しているとも言えます。

変額保険の見直しを、自分のケースに当てはめる手順

では、実際に手を動かしてみましょう。判断軸は「損益分岐点まで待つか」ではありません。「そのお金を、いつ使うのか」です。

ステップ1:自分の保険が「年利何%」で回っているか出す

まず、加入している変額保険の「これまでの払込総額」と「いまの評価額(解約返戻金)」を保険会社のマイページや証券で確認します。

次に、無料のシミュレーターで実質年利を逆算します。たとえば楽天証券の「積立かんたんシミュレーション」で、

1. 「目標金額達成のためのリターンを計算する」タブを選ぶ
2. 最終積立金額 → いまの評価額を入力
3. 毎月積立額 → 毎月の保険料を入力
4. 積立期間 → 加入年数を入力
5. 計算ボタンを押す

これで「この保険は実質、年利◯%で回ってきた」が出ます。

(※一時払いタイプの場合は、何倍になったかから計算します。10年でy倍になったなら、年利=y^(1/10)−1。エクセルなら =y^(1/10)-1 でOKです。)

ステップ2:同じ中身の低コスト投信と並べる

出てきた年利を、同じ条件で全世界株インデックスに積み立てた場合と比べます。変額保険の投資先が「株式100%・全世界型」なら、比較対象はeMAXIS Slim全世界株式(オルカン)のような低コストファンドが妥当です。さきほどの表のように、運用益の差がそのまま「保険に払っているコスト」になります。

ステップ3:保障が必要なら「掛け捨て+NISA」に分ける

最後に、保障の手当てを決めます。死亡保障が本当に必要なら、必要な額・必要な期間だけを割安な掛け捨ての定期保険で確保する。運用はNISAで低コストの全世界株に回す。

保障は保険で、運用はNISAで。分ければ、それぞれのコストと中身が見えて、自分で判断できる。これが見直しの着地点です。

なお、保険会社の窓口で相談すると、「解約せずに払済保険や転換で」と勧められることがあります。ただ、これは今の契約を実質作り直すのに近く、そこからまた初期費用の重い“短期元本割れ期間”が始まることも少なくありません。中身が見えにくくなるという点では元の問題に逆戻りです。迷ったら、いったん持ち帰って解約返戻金の推移表を自分で確認してから決めれば十分です。

保険を見直すとき、最大の壁は数字ではなく「家族の合意」でした。そのリアルな顛末はこちらに書いています。

「資産形成最大の壁は『妻』だった!?保険解約で学んだ夫婦の合意形成(第4話)」

解約を急がないほうがいいのは、この1ケースだけ

ここまで「長期で運用する資金なら早く出したほうが合理的」と書いてきました。では、解約を急がないほうがいいケースはあるのか。あります。ただし、ほぼ1つだけです。

それは、そのお金を使うゴールが決まっていて、残りが5年くらいに迫っている場合です。

たとえば「3年後に子どもの大学費用に充てる」と決まっているお金。これは長期運用には回せません。株式は短期では大きく下がることがあるので、ゴール直前で暴落に当たると取り返す時間がない。この場合は、無理に解約して株に移すより、元本が確保される形で着地させたほうが安全です。

教育資金、器はどれが先?──親NISA→こどもNISAの順で考える

逆に言えば、「使うのはまだ10年以上先」「老後のための資金」「使うあてが特に決まっていない」なら、それは長期運用できるお金。元本割れしていても、早く低コストの器に移したほうが合理的、という最初の結論に戻ります。

✅ ゴールが5年以内に迫った資金 → 急いで動かさない

✅ それ以外(長期で運用する資金) → 早く低コストへ移すのが合理的

まとめ

最後に、貯蓄型保険の見直しの要点を整理します。

✅ 貯蓄型・変額保険は「保障」と「運用」が1本に混ざって中身が見えない。だから見直す

✅ 判断は感覚ではなく、同じ条件で全世界株と「数字」で並べる

✅ 元本割れは過去に払った手数料の跡(サンクコスト)。取り返す対象ではない

✅ しかも持ち続ける限り割高な手数料を払い続ける

✅ 長期で運用する資金なら、元本割れしていても早く解約して低コスト投信へ

✅ 待っていいのは「ゴールが5年以内に迫った資金」だけ

✅ 保障が要るなら「掛け捨て+NISA」に分ける

僕がいちばん悩んだのが、この変額保険の見直しでした。でも、数字で並べた瞬間に迷いは消えました。中身が見えれば、判断は自分でできます。

あなたの保険は、年利何%で回っていますか。まずはそこから確かめてみてください。

「高額療養費の上限が上がったから、やっぱり医療保険は必要では?」という疑問が出たら、こちらを。

「高額療養費が引き上げに|それでも医療保険はいらない理由」

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本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資・保険の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。
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この記事を書いた人

ファイナンシャルプランナー(FP技能士)|東証プライム上場企業の会社員。
40代から資産形成に本気で取り組み、1年で純資産1000万円増を達成。
「今さら遅いかも…」と不安な方へ、データと実体験に基づく合理的な資産形成を発信しています。

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