保険を見直したほうがいい。
頭ではわかっている。
それでも解約の電話に手が伸びない――そんな状態で止まっている人は、多いのではないでしょうか。
世の中の「保険 解約できない」という悩みは、たいてい「もったいない(払った保険料が無駄になる)」で説明されます。
けれど、それだけではありません。
「もったいない」を乗り越えてもなお動けない人がいる。
その人を縛っているのは、まったく別の心理です。
この記事は、貯蓄型保険を抱えて動けなくなっている人に向けて書きます。
僕自身、かつて月7万円・15年で約1,260万円を保険に払い続けていました。
その僕が解約に踏み切るまでに一番手こずったのは「もったいない」ではなく、別の2つの感情でした。
保険を解約できない本当の理由は「もったいない」ではなく、①今のままでいたい現状維持バイアスと、②”入っておけば安心”という思い込みの2つ。そして後者は、不安を一度も「数字」にしていないことから生まれます。
「保険 解約できない」を、もったいないだけで片づけない
まず、誤解を解いておきます。「もったいない」は確かに存在します。
解約時に戻ってくるお金(解約返戻金)が、払った保険料の総額を下回る。
この「元本割れ」を前にすると、人は「ここまで払ったのに損する」と感じて足が止まります。
これは行動経済学でいうサンクコスト効果――もう取り戻せない過去の支出に引きずられて、未来の判断を歪めてしまう心理です。
ただ、この「もったいない」については、僕はすでに別の記事で十分に書いてきました。サンクコストの正体と、「払済・解約・継続」をどう判断するかの具体的なフローは、そちらで整理しています。
→ サンクコストが保険の継続判断をどう狂わせるかは個人年金保険の記事で詳しく整理しています
だからこの記事では、その先に進みます。
「もったいない」を理屈で乗り越えたはずなのに、それでも解約できない。
そういう人がたくさんいます。
僕もそうでした。
返戻金の数字を眺めて「これは過去の話だ」と頭では納得しました。
なのに、手が動かない。
その正体を探っていくと、もったいなさとはまったく別の、2つの感情にたどり着きます。
解約できない理由①:今のままでいたい(現状維持バイアス)
僕が解約を決断するまでに、一番大きかった感情。それは「もったいない」ではありませんでした。
今のままでいい気がする。そして、面倒くさい。
身も蓋もない話ですが、これが本音でした。
保険会社に連絡して、引き止めを聞いて、書類を取り寄せて、何本もある契約を一つひとつ処理する。
想像しただけでうんざりする。
「今すぐ困っているわけじゃないし、別に来月でもいいか」と、何度も先送りにしました。
これは現状維持バイアスと呼ばれる心理です。
人は、何かを「変える」ことに、現状を「続ける」ことよりも大きな心理的コストを感じます。
変えて失敗したら後悔する。
だったら今のままでいい――そうやって、判断そのものを回避してしまう。
正直に言うと、僕が15年前にこの大量の保険に「入った」ときも、まったく同じ心理でした。
マイホーム購入と重なって意思決定に疲れ切っていた僕は、営業マンが次々に出すパンフレットを前に「もう、これ、いい加減終わらせたい」とだけ思っていました。
ろくに比較もしないまま、6本の契約書にハンコを押してしまったのです。
入るときも、やめるときも、人を止めるのは同じ「面倒くささ」なのです。
貯蓄型には「増えてるし持っておこう」が上乗せされる
現状維持バイアスは、貯蓄型保険でさらに強くなります。
僕の変額保険は、払った153万円が評価額278万円に増えていました。
含み益が出ていると、「増えてるんだから、わざわざ手放さなくても」という気持ちが、現状維持の上に乗ってきます。
これは「もったいない」とは別物で、利益が出ているものほど手放せなくなる、含み益特有の心理です。
この含み益の罠については終身保険の記事で詳しく解体しているので、貯蓄型を抱えている人はそちらも参考にしてください。
→ 含み益が出た貯蓄型保険を手放せなくなる心理は終身保険の記事で整理しています
解約できない理由②:「入っておけば安心」の正体
そして、僕を一番強く縛っていたのが、これでした。
保険に入っておけば、安心。
逆に言えば、解約したら、いつ何が起こるかわからなくて不安。この「安心 vs 不安」の構図で固まっている人が、本当に多いのではないでしょうか。
ここで、自分自身に正直になってみてください。その「安心」は、いったい何に対する安心なのか。
- その出来事は、どれくらいの確率で起きるのか
- 起きたとき、公的制度でどこまで保障されるのか
- それでも、いくら足りないのか
僕は、この3つのどれ一つとして、答えられませんでした。
何がどのくらいの確率で起きて、国の制度でどこまでカバーされて、どれだけ足りなくなるのか。
まったくわかっていないくせに、「保険に入っていれば安心」と思い込んでいたのです。
今考えると、意味がわかりません。
これは行動経済学でいう曖昧性回避という心理です。
人は、確率や中身がはっきりしないものを、実際以上に過大に恐れます。
「よくわからないけど、怖い」。
だから、その漠然とした恐怖に「安心」というラベルを貼ってくれる保険に、お金を払ってしまう。
つまり、保険で買っていたのは「保障」ではなく、「これ以上考えなくていい」という状態だったのです。
考えるのが面倒で、不安だから、毎月お金を払って思考を停止していた。
これが、解約できない人の頭の中で起きている本当のことだと、僕は思います。
その不安、一度でも「数字」にしましたか
では、どうすればいいか。答えはシンプルです。
漠然とした不安を、一度、数字にする。 これだけです。
先ほどの3つの問いを、自分の契約一つずつに当てはめて埋めていきます。
✅ ① その出来事が起きる確率はどれくらいか
✅ ② 公的制度(健康保険・高額療養費・遺族年金など)でどこまで保障されるか
✅ ③ 退職金や貯蓄も差し引いて、それでも足りない額はいくらか
特に大事なのが②と③で「すでにあるもの」をきちんと引くことです。
日本の公的保険は世界的に見てもかなり手厚く、医療費には高額療養費制度があり、会社員が亡くなれば遺族年金が出る。
退職金も、いざというときの原資になります。
これらを引かずに「全額を保険で備えよう」とするから、保障が過剰になるのです。
僕の場合:一番のムダは何だったか
実際に数字にしてみて、僕が「これは完全にムダだった」と確信したものを挙げます。
| 商品 | 月額の目安 | 実態 |
|---|---|---|
| ドル建て生前給付型(夫婦2本) | 約$110(2人分) | 円建て評価はマイナス。死亡保障は他で足りていた |
| 自動車保険の車両保険 | (特約分) | 一括で買い替えできる車に、わざわざ保険は不要だった |
一番のゴミは、夫婦で入っていたドル建ての生前給付型でした。
死亡保障の役割は、住宅ローン完済用の収入保障保険(団信=団体信用生命保険に入っていなかったため、その代わりに必要だった)と、掛け捨ての生命保険2,000万円で、すでに足りていました。
ドル建ては完全に重複していたのです。
さらに踏み込むと、その収入保障と掛け捨て生命保険ですら、退職金・遺族年金・平均余命を計算に入れたら、若干過剰でした。
僕が亡くなっても、遺族年金が出て、退職金が入り、住宅ローンは完済される。
そこまで数字を並べて、ようやく「過剰だった」と腹落ちしたのです。
番外編として、自動車の車両保険も同様でした。修理や買い替えを自分の貯蓄でまかなえるなら、その保障に毎月払う意味はありませんでした。
失敗しがちな罠:数字を出しても、不安は完全には消えない
ただ、ここで一つ、正直に注意しておきたいことがあります。
数字を出したはいいけれど、結局また「これくらいは保障があったほうがいいかも」と、漠然と思ってしまう。 これが一番やりがちな失敗です。
不安というのは、中途半端に数字を出しただけでは消えません。
「明日、自分が死んだら、誰に、いくら必要なのか」――そこまで具体的に詰めて、はじめて消えます。
たとえば独身で子どもがいない人の死亡保障も、これと同じ構造です。
「誰が、いくら困るのか」を具体化すると、たいてい「実はほとんど要らなかった」という結論にたどり着きます。
もう一つ。
変額保険のような貯蓄型を見直すときは、投資の基礎を理解していないと、最後の踏ん切りがつきません。
「解約して、その分を自分で投資に回したほうが合理的だ」と納得するには、投資そのものへの土台が要るからです。
投資が初めてなら、まずその順番から整えることをおすすめします。
→ 何から手をつければいいかは投資の優先順位を整理した記事が入口になります
まとめ|買っていたのは保障ではなく「考えなくていい安心」
保険を解約できない本当の理由を、もう一度整理します。
✅ 「もったいない」(サンクコスト)は確かにある。でもそれは乗り越えられる
✅ それでも動けないのは、現状維持バイアス(今のままでいたい・面倒)
✅ そして最大の壁は、「入っておけば安心」という思い込み(曖昧性回避)
僕が毎月払っていたのは、万が一への保障ではなく、「これ以上考えなくていい」という安心でした。不安だから、面倒だから、お金で思考を止めていた。
👉 その安心が過剰かどうかは、不安を一度「数字」にすれば、自分で判定できます。
確率を調べ、公的保障と退職金・遺族年金を引き、それでも足りない額を出す。
そこまでやって「やっぱり必要だ」と思えたものだけ残せばいい。
残ったものは、もう「なんとなくの安心」ではなく、根拠のある保障です。
そして、削れた保険料は、そのまま家計の入金力に変わります。
→ 削れた保険料をどう家計の入金力に変えるか、その全体設計はこちらで整理しています
解約か、払済か、継続か。数字を出し終えたら、あとは決めの一歩を踏むだけです。
「解約か、払済か、継続か」を最終的に決める段階の方へ。判断フローはこちらにまとめています。

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本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資・保険の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。
