「国債がNISAで買えるようになるらしい」というニュースを見て、「非課税で国債なら、安全でお得なのでは?」と思っていませんか?
2026年7月、国債をNISAの対象に加える議論が急に動き出しました。
ニュースは「制度がどうなるか」ばかりを報じています。
でも、僕たちが本当に知りたいのはそこではないはずです。
「で、実現したら、私は買うべきなの?」
この記事は、その問いに先に答えてしまう記事です。
制度の詳細はまだ何も決まっていません。
それでも、判断の軸は今の時点で出せます。
なぜなら、答えは制度の中身ではなく、NISAという器の性質で決まるからです。
👉 結論:国債がNISAの対象になっても、僕はNISAで国債を買いません。国債がダメなのではなく、置き場が違うからです。
読み終わる頃には、年末に制度の続報が出ても慌てずに済む判断軸が手に入っているはずです。
「国債NISA」とは?2026年7月時点でわかっていること
まず、事実関係を整理します。ここは「決まったこと」と「検討中のこと」の区別が大切です。
2026年7月時点でわかっているのは、次の3つです。
- 7月10日:国民民主党が、国債をNISAの対象に加える議員立法(いわゆる「国債NISA法案」)を参議院に提出しました。個人が国債で中長期の資産形成を行える選択肢を作ることが狙いと説明されています
- 7月14日:片山財務大臣が閣議後会見で、国債のNISA対象化について「整理が必要なこともあるので、これも含めてしっかりと考えていきたい」と発言。前向きに検討する姿勢を示しました
- 報道ベースでは、政府・与党が来年度の税制改正に向けて検討に入り、国債にかかる相続税の減免も含めて年末にかけて議論される見通しとされています
つまり現時点では、法案が出て、政府が検討を始めた段階です。対象がどのNISA枠になるのか、個人向け国債に限るのか、いつから始まるのか——何も決まっていません。
※出典:国民民主党公式サイト(2026年7月10日)・財務省「片山財務大臣閣議後記者会見の概要」(2026年7月14日)。最新の状況は必ず公式情報でご確認ください
背景には「金利のある世界」が戻ってきたことがあります。
個人向け国債の金利も、ゼロ金利時代とは別物の水準になりました。
「金利が付くなら、国債も資産形成の選択肢では」という空気が、この議論を後押ししています。
ただ——ここからが本題です。
「制度で買えるようになる」ことと「NISAで買うべきか」は、まったく別の話です。
実はこの構図、少し前にも見ています。
2025年末の税制改正では、NISAのつみたて投資枠に債券中心・バランス型の投資信託を加える方針が決まりました(2027年から)。
あのときも僕は「NISAに債券を入れるべきではない」と書きました。
理由の骨格は、今回もまったく同じです。
→ NISAに債券は入れるべき?「債券で守る」をNISA口座でやってはいけない2つの理由
結論:国債がNISAの対象になっても、僕はNISAで国債を買わない
先に僕自身の答えを言い切っておきます。
仮に国債NISAが実現しても、僕は使いません。
誤解しないでほしいのですが、個人向け国債という商品を否定しているのではありません。僕は「無リスク資産の置き場」として個人向け国債の変動10年はありだと考えていて、実際、母にも勧めています。
問題は商品ではなく、入れる器です。
僕のポートフォリオは、株式(インデックスファンド)+現金のシンプルな2階建てです。
増やす仕事は株式に振り切り、減らしたくないお金は現金に置く。
この形が一番自由度が高く、そして何より、脳のリソースを使わない。
リスク設計やリバランスのために、どの口座で何を持つか悩む時間そのものが、僕にとってはコストです。
数億円を超えるような規模になれば、また別の考え方が要るのかもしれません。でも僕は現時点でそれを目指していないし、この記事の読者の多くも同じはずです。
では、なぜNISAに国債を入れないのか。理由は2つあります。
理由①:NISAの非課税は「期待リターンが高い資産」ほど効く
NISAのメリットは、突き詰めればたった一つ。運用で得た利益に税金(20.315%)がかからないことです。
裏を返せば、非課税で守られる金額は「どれだけ利益が出るか」に比例します。
つまり、期待リターンが高い資産に使うほど、同じ枠から得られるメリットが大きくなる。
この構造は、制度がどう変わっても動きません。
数字で見てみます。成長投資枠で240万円を投じて、30年間運用したとします(年利は単純化のための仮定です)。
| 入れる資産 | 想定年利 | 30年後の利益 | 非課税で守られる税額 |
|---|---|---|---|
| 株式インデックス | 5% | 約797万円 | 約162万円 |
| 個人向け国債(変動10年並み) | 1.74% | 約163万円 | 約33万円 |

同じ「枠1単位」を消費するのに、守られる税額は約162万円と約33万円。5倍近い差です。
もっと身も蓋もない言い方をすると、国債の利子への課税は、そもそも大した金額ではありません。
240万円を変動10年(仮に年1.74%)で持ったときの利息は年約4.2万円、そこにかかる税金は年8,500円ほどです。
非課税化で浮くのは、この8,500円。
一方、同じ枠に株式を入れて年5%で回れば、非課税メリットは30年累計で160万円を超えていきます。
ここで一つ、先回りして釘を刺しておきます。
「今の計画では株式で生涯枠を埋められそうにないし、国債のポジションもNISAに入れてしまおう」——この判断は、一見合理的に見えます。
でも、将来、相続や退職金のような計画外のまとまった資金が入ったとき、きっと後悔します。
株式を入れたい枠に、国債が座っているからです。
売って空け直すことはできますが、枠の復活は翌年、年間投資枠の上限もあり、入れ替えには年単位の時間がかかります。
この話は、後半の場合分けでもう一度触れます。
👉 非課税という最強の武器は、いちばんよく効く場所=期待リターンの高い資産に使ってこそ意味がある。国債に枠を使うのは、武器の無駄づかいです。
理由②:国債の定位置は「無リスク資産の置き場」。課税されてもほぼ痛まない
2つ目の理由は、国債という資産の役割そのものです。
僕は資産を「攻め/守り」では分けません。リスク資産と無リスク資産の2分法で考えます。
- リスク資産:値動きのリスクを引き受ける対価として、長期でリターンを生む。株式インデックスファンド
- 無リスク資産:元本がほぼ動かない。減らさず、必要なときに使うための土台。現金と、自国の国債
個人向け国債は、この無リスク資産側の商品です。
役割は「増やすこと」ではなく「減らさないこと」。
そして理由①で見たとおり、増えない資産は課税されてもほとんど痛みません。
つまり、こういうことです。
👉 課税がほぼ痛まない資産に、非課税の枠を使う必要はない。国債の置き場は、課税口座(銀行・証券)のままで十分です。
「じゃあ株式と国債の比率で全体のリスクを調整したい場合は?」——それも器の使い分けで解決します。
リスクを調整するのはリスク資産に振り向ける金額であって、NISAの中身ではありません。
NISAは株式で埋め、無リスク部分は枠の外に置く。
これで同じリスク水準を、非課税メリットを最大化しながら作れます。
無リスク資産の置き場として、銀行預金より個人向け国債・変動10年が構造的に優れている理由は、こちらで整理しています。
→ 個人向け国債 変動10年の使いどころ|「無リスク資産の置き場」の正解
それでも「国債NISA」がアリな人——場合分けで考える
ここまで読んで「じゃあ国債NISAは無意味な制度か」というと、そうではありません。
あなたの資産の状況とライフステージによって、答えが変わる話です。
合理的に整理すると、アリな人は2タイプいます。
①この先もずっと、生涯枠が埋まらないことがほぼ確実な人
NISAの生涯投資枠は1,800万円です。
株式も国債も含めた運用資産の全部をNISAに入れても1,800万円に届かず、しかも将来にわたってそれが変わりそうにないなら、国債を非課税枠に入れることの機会費用はゼロです。
空いたままの枠に国債を入れて利子が非課税になるなら、それは純粋な得。
年8,500円レベルの小さな得ですが、失うものがありません。
ただし、この条件は思っているより狭いはずです。
理由①で釘を刺したとおり、相続・退職金・収入の変化——計画外の資金は、計画の外からやってくる。
「今の計画では埋まらない」は「この先も埋まらない」を保証しません。
国債で埋めた枠は売却で空け直せますが、復活は翌年で、年間投資枠の上限もあるため、入れ替えには数年かかることもあります。
だから僕の感覚では、迷ったら「入れない」側に倒すのが正解です。
そして入れる場合も、順序は常に株式が先。
枠の中で優先すべきは、非課税メリットが5倍効く方です。
株式を入れ切って、なお枠が余り続ける見込みのときに初めて、国債が候補になります。
②すでに引退世代で、無リスク資産の比率を高めるフェーズの人
もう一つは、資産形成の出口側にいる人です。
引退して取り崩しフェーズに入れば、無リスク資産の比率をある程度高めるのは合理的です。
このフェーズの目的は「増やす」ことではなく、資産の減少スピード——インフレによる実質価値の目減りも含めて——をできるだけ抑えること。
その用途なら、非課税で国債を持てる意味は確かにあります。
実はこの視点で見ると、国債NISAは筋の悪くない制度です。
少し前に話題になった「プラチナNISA」——65歳以上を対象に毎月分配型投資信託をNISAで解禁する構想——を覚えているでしょうか。
あれは2025年12月の税制改正大綱で見送りになりましたが(2026年7月時点。議論自体は継続中です)、僕は、高齢者の資産活用という目的に対してなら、国債NISAの方が毎月分配型の解禁より数倍良い制度変更だと考えています。
毎月分配型は運用の中身を削って分配金に見せかける構造的な問題を抱えていますが、国債にはそれがありません。
毎月分配型が構造的に不利な理由は、シミュレーターで数字から確認できます。
→ 分配型と無分配型どっちが得?毎月分配が不利な理由をシミュレーターで解説
減らさない資産を非課税で持つ。出口世代にとっては素直な選択肢です。
では、僕自身は引退後に使うのか。
——使いません。
さきほど書いたとおり、僕の設計は株式+現金で完結していて、そこに国債という3つ目の要素を足す予定が今のところないからです。
ただしこれは僕の設計の話であって、無リスク部分を国債で持つ設計は、まったく合理的です。
国債NISAは誰のための制度か——「非課税」と聞くと買いたくなる僕たちへ
最後に、少し引いた視点の話をさせてください。この記事でいちばん伝えたいのは、実はここです。
今回の議論の背景には、国債を安定して消化したい国側の事情があります。
日銀が国債の買い入れを減らしていく中で、個人マネーに受け皿になってもらいたい。
「貯蓄から投資へ」と「国債の安定消化」が、NISAという人気の器の上で握手した——それが今回の構図です。
制度を批判したいのではありません。
①②のように、この制度が素直に得になる人は確かにいます。
ただ、棚は、棚を並べる側の都合で並ぶ。
これは保険でも通信でも投資でも変わらない原則です。
「売り方」が商品の流行を作る構図は、毎月分配型の“復権”でも同じことが起きています。
→ 毎月分配型投資信託の“復権”|9年ぶり1兆円流入。変わったのは商品ではなく売り方だ
そして、僕たち買い手の側には、よくできた心理の罠があります。
「非課税」と聞くと、それだけで得に感じてしまうのです。
実際に得かどうかは、その人の資産状況と運用期間で決まります。
それなのに「非課税」というラベルは、中身の検討をすっ飛ばして「使わなきゃ損」という気分を先に作ってしまう。
行動経済学でいうフレーミング——同じ中身でも、枠のかけ方で判断が変わる現象です。
現役世代にとって、この罠は具体的にこう現れます。
- 十分な運用期間を確保できるにもかかわらず、「非課税で安全」に引かれて国債を選んでしまう
- もっと進むと、「NISA=無リスク資産の適切な置き場」という勘違いが生まれる
後者は特に危険です。
この勘違いをした人は、非課税という最強の武器を、増えない資産のためだけに使い切ることになります。
20年、30年という時間を持っている現役世代にとって、これは制度の充実ではなく、実質的な弱体化として働きかねません。
政治は、高齢者側を向きやすい。
有権者に占める高齢層のボリュームが大きいという人口構造がある以上、自然にそうなります。
だからこそ、現役世代の僕たちは、「この政策は誰のために提案されているのか」を自分の頭で考える必要があります。
高齢者に良い制度が、自分にも良い制度とは限らないのです。
▼ 減らしたくないお金の置き場を決めたい人へ

まとめ:決まってから慌てないための判断軸
整理します。
- 国債のNISA対象化は、2026年7月時点でまだ検討段階。何も決まっていません
- ただし判断軸は制度の詳細に依存しません。NISAの非課税は期待リターンが高い資産ほど効く——この構造だけで答えは出ます
- 国債の定位置は無リスク資産の置き場(課税口座側)。課税されてもほぼ痛まない資産に、非課税枠を使う必要はない
- 例外は2つ。この先も生涯枠1,800万円が埋まらないことがほぼ確実な人と、引退世代で無リスク比率を高めるフェーズの人。ただし前者の条件は思うより狭く、順序は常に株式が先
- 「非課税」というラベルに判断を先取りされない。この政策は誰のためかを、自分の頭で考える
年末にかけて続報が出てくるはずです。
そのとき何かが決まっても、この記事の判断軸は変わりません。
制度は変わっても、器の性質は変わらないからです。
僕たちがやることは、今までと同じ。NISAは期待リターンの高い株式インデックスで埋める。減らしたくないお金は、枠の外に置く。それだけです。
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【本記事の注記】
・国債のNISA対象化は2026年7月時点で検討段階の情報です(出典:国民民主党公式サイト 2026年7月10日・財務省 片山財務大臣閣議後記者会見の概要 2026年7月14日)
・「守られる税額」の試算は年複利・税率20.315%の単純計算で、将来のリターンを保証するものではありません
・プラチナNISA構想は2025年12月の令和8年度税制改正大綱で見送り。議論は継続中です
・税率・制度の記述は2026年7月時点のものです
本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資・保険の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。
