正直に言うと、僕はこれまで、子どもに対して満足な金融教育をしてきませんでした。
お金の話も、ほとんどしていません。
そのことを強く後悔した瞬間があります。
子どもが高卒で就職先を選ぶときのことです。
給与や働き方を比べるでもなく、「インターンで行ったから」という理由だけで決めようとしました。
インターンで働くイメージが持てていること自体は、大きな判断材料です。それを否定するつもりはありません。
ただ、そのとき僕が感じたのは——そこにもう一つ、自分なりの判断軸があれば、ということでした。
給与、身につくスキル、将来の選択肢。こうした視点が一つ加わるだけで、その選択の納得感はもっと強くなったはずです。
そして、その「判断軸」を渡してこなかったのは、僕の責任です。
この記事は、その後悔から書いています。
金融教育というと、NISAの仕組みや複利の計算を「教えること」だと思われがちです。
でも、何冊も本を読み、自分の子どもで失敗してきた今、僕がたどり着いた結論はこうです。
👉 金融教育とは、正しい知識を教えることではなく、子ども自身に「お金の意思決定」を経験させることだ。
ここを取り違えると、知識だけ増えて、いざ自分のお金を動かす場面で固まる大人になります。この記事では、親が何をやめ、何を渡せばいいのかを、僕の失敗とあわせて整理します。
なぜ「知識」を教えても金融教育にならないのか
高校では金融教育が必修化されました。これは前進です。
ただ、構造的な限界もあります。
✅ 教える側の金融リテラシーにばらつきがある
✅ 内容が制度や仕組みの説明に寄りやすい
✅ 一人ひとりの家庭事情には踏み込めず、一般論にならざるを得ない
結果として、「知識」は学べても「使い方」は身につきにくい。
ここに、多くの人が見落としている落とし穴があります。
金融教育の本質は、NISAやiDeCoの仕組みを暗記することではありません。
日常のお金の場面で、自分で決めて、その結果を引き受ける——この繰り返しです。
言い換えれば、教えるべきは「正解」ではなく「自分で決めた経験」だということです。
正解は、ネットで調べればいくらでも出てきます。でも「迷って、決めて、外して、学ぶ」という経験だけは、外から渡すことができません。
だからこそ、知識を教え込む学校ではなく、日々の判断に立ち会える家庭が重要になります。
親がまずやめるべきこと
子どもに意思決定を経験させる、と言うと、よく「子どもには失敗させた方がいい」と返ってきます。
僕は、この言い方には少し違和感があります。
親がやるべきは「失敗させる」ことではなく、失敗する可能性のある道を、先回りして消さないことです。
もちろん、取り返しのつかないダメージになる場合は止める。これは親の責任です。
ただ、それ以外の多少の失敗なら、そのまま経験させたほうが、はるかに価値があります。
なぜか。
👉 失敗は、感情とセットで記憶されるからです。
お金がなくなって困った、欲しかったものを我慢する羽目になった、後悔した。
この「痛み」の記憶があるから、次の判断が変わります。
逆にこれがないと、「分かったつもり」のまま大人になる。これが一番のリスクです。
ここで、もう一つ僕自身の反省があります。
僕は以前、本人に選ばせておきながら、後から否定する、ということをしていました。
子どもが自分で選んだものに対して、「それはおかしいでしょ」と後出しで評価してしまう。
これをやると、どうなるか。
✅ 選んでも、どうせ否定される
✅ だったら、最初から親の正解に寄せておこう
こうして、自分で判断する力が静かに削られていきます。
意思決定の経験を渡すつもりが、逆に「自分で決めない子」を育てていたわけです。
親がまずやめるべきは、この「後出しの否定」と「先回りの安全確保」。ここからだと思っています。
子どもに渡す「3つの判断軸」
やめることの次は、渡すものです。
僕は、お金の判断軸を3つに分けて考えています。そして、この順番が大事です。
① お金の使い方(小学生〜)
すべての土台は、使い方です。
大切なのは「何を買うか」ではなく、どう判断するか。
そのための軸として、支出をこう整理します。
✅ Need(ニード):生活に必要な支出
✅ Love(ラブ):満足度が本当に高い、自分にとって価値のある支出
✅ Want(ウォント):なんとなく欲しくて買ってしまう支出
この違いを意識するだけで、お金の使い方は一気に変わります。
ここで一つ、僕自身の話をします。
僕にとっての「Love」は、漫画や小説です。
マイホームには壁3面に天井までの本棚を作り、漫画は2000冊以上、小説も1000冊以上あります。
資産形成に本気で取り組み始めてからも、ここは「我慢しない」と決めています。
なぜか。他のことを完全に忘れて没頭できるからです。妻に話しかけられても聞こえないレベルです。(笑)
これは単なる浪費ではありません。自分にとっての価値が明確な支出です。
小学生のうちは、お小遣いの範囲で「これは自分のLoveか、ただのWantか」を本人に決めさせる。それだけで十分な金融教育になります。
② お金の残し方(中学生〜)
残し方は、意志ではなく仕組みで決まります。
代表が先取り貯蓄です。先に貯めて、残った分でやりくりする。順番を変えるだけで、お金は自然に残ります。
中学生になったら、家計の一部を見せるのが効きます。
✅ 食費はいくらか
✅ 光熱費はいくらか
✅ 住居費はいくらか
「生活にはこれだけかかる」と知るだけで、お金の見え方が変わります。
そして、もし「先取りすると生活が回らない」と感じるなら、削る話の前に、収入を上げる話になります。
今の自由(消費)と、将来の自由(貯蓄)のバランスをどう取るか。ここまで考えて初めて、残し方が機能します。
このあたりの「収入・支出・運用の正しい順番」は、家計の全体像としてこちらで整理しています。

③ お金の増え方(高校生〜)
ここでようやく「増やす」です。
高校生になれば、アルバイトも選択肢に入ります。このとき、必ず伝えたいことがあります。
👉 お金は「時間」の対価ではなく、「価値」の対価だ。
アルバイトだけだと、「時給 × 働いた時間 = お金」という認識になりやすい。これは半分正しくて、半分危険です。
本来は、誰かに価値を提供した結果として、お金が生まれる。時間は、その一要素にすぎません。
この視点を持てるかどうかで、将来の働き方は大きく変わります。
そのうえで、投資です。お金は働く・時間を味方につける・リスクとリターンはセット。考え方の順番はこちらで整理しています。
→ 投資は「順番」で9割決まる|初心者が最初にやるべき5つの思考
もし「投資=怖い・ギャンブル」というイメージが先に立つなら、その不安の正体はこちらで分解しています。
→ 投資をギャンブルだと思っている人が見落としている“本当のリスク”
そして忘れてはいけないのが、投資か貯金かではなく、「お金はどう動くとどうなるか」を理解すること自体が目的だということ。貯金も、立派な「増え方」の一つです。
大学生からは、金融投資より「自己投資」が効く
3つの判断軸を渡したうえで、大学生くらいになったら、僕が一番伝えたいことがあります。
それは——若いうちは、金融投資より自己投資のほうが、リターンが大きいということです。
少し、数字で見てみます。
仮に若い時に100万円を投資して、年利5%で10年運用したとします。増えるのは、約60万円です。
一方、同じ100万円を自己投資に使ったらどうでしょう。
✅ 本を100冊読む
✅ スクールに通う
✅ 未知の環境に飛び込む
これで3年かけてスキルを磨き、年収を50万円上げられたとします。
残りの7年で、その差は350万円になります。投資の60万円とは、桁が一つ違います。
理由はシンプルです。
👉 投資は「規模」の世界だからです。
元本が小さいうちは、運用利回りをいくら頑張っても、増える額はたかが知れています。それよりも、稼ぐ力(人的資本)そのものを大きくするほうが、効きます。
このあたりの考え方は、「人的資本」というキーワードで深掘りしています。
ただし、誤解してほしくないことが2つあります。
1つ目。「若いうちの投資は意味がない」という話ではありません。少額でも始めて、お金の増え方を体で理解すること自体が、立派な自己投資です。あくまで優先順位の話です。
2つ目。何でも自己投資になるわけではない、ということ。見聞を広げる旅行や経験が、すべて自己投資になるわけではありません。大切なのは、それが収入の増加にどうつながるか、という視点です。
ここを子どもに渡せると、「お金を使う=消える」ではなく、「お金を使って、自分の稼ぐ力を育てる」という発想が持てるようになります。
まとめ:金融教育は「意思決定の経験」
金融教育とは、特別な知識を教えることではありません。
意思決定を、経験させることです。
そしてこれは、多くの家庭でできていない部分でもあります。少なくとも、僕はできていませんでした。
正解を教えることはできても、考えさせることができていなかった。
だから、親が今日からやることは、たぶん2つだけです。
✅ やめること:先回りして失敗の道を消すこと、本人に選ばせた後で後出しに否定すること
✅ やること:小さな金額から自分で決めさせて、その結果を本人に引き受けさせること
最初の一歩は、Need / Want / Love で考える習慣をつくることでいい。
それだけでも、子どもの中に「自分で判断する力」は確実に積み上がっていきます。
そしてそれは、将来の資産形成だけでなく、人生そのものの選択にもつながっていくはずです。
我が家は、もう子どもが社会に出てしまいました。だからこそ、これから間に合う家庭には、同じ後悔をしてほしくないと思っています。
📚 子どもに“お金の判断軸”を渡したい人へ
※ 下記リンクは成果報酬型広告です。遷移先はAmazon・楽天の公式サイトです。
何をどの順番で子どもに伝えればいいのか——その全体像を、親子で読める平易な言葉で1冊にまとめてくれているのがこの本です。お金を「リアルなゲームの攻略法」として捉え直すと、Need / Want / Love も自己投資も、子ども自身が腑に落としやすくなります。僕自身、子育てを終えてから読んで「これを現役の頃に子どもへ渡せていれば」と思った1冊です。
本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資・保険の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。
