債券は買いか|仕組みと役割から分かる「考え始めていい資産額」

こんにちは、飛雄です。

政策金利は1.0%、10年国債の利回りは2.7%前後(2026年7月時点)。ニュースでは「金利ある世界」という言葉が定着し、こんな考えが頭をよぎった人も多いと思います。

「株式だけじゃなくて、そろそろ債券も持った方がいいのかな?」

自然な疑問です。教科書には「株式と債券を組み合わせるのが王道」と書いてあるし、金利が付くようになった今、無視するのはもったいない気もする。

ただ、この問いに「いる・いらない」の結論だけを投げる記事を読んでも、たぶんスッキリしません。この記事では、債券とはそもそもどんな仕組みか→投資の中でどんな仕事をするのか→その仕事はあなたの段階で必要か、の順に一段ずつ進みます。

先に僕の結論の輪郭だけ言っておくと、大半の人は、まだ債券を考えなくていい

その理由は「債券がダメな商品だから」ではありません。

むしろ、債券の仕組みと役割を正しく理解した人ほど、この結論に辿り着くはずです。

なお、この記事で扱う「運用資産」は、生活防衛資金を別枠で確保した上でのお金の話です。生活防衛資金がまだ手つかずの方は、先にこちらを読んでください。

生活防衛資金はいくら必要?2026年・物価高とNISA満額時代の最低ライン

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目次

そもそも債券とは——「お金を貸して、利子をもらう」仕組み

債券は、ひとことで言えば借用証書です。

国や会社にお金を貸し、貸している間は決まった利子を受け取り、満期が来たら元本が返ってくる。

国が発行すれば国債、会社が発行すれば社債、海外の発行体なら外国債券です。

株式との根本の違いは、オーナーになるか、貸すかです。

  • 株式:会社のオーナー(の一部)になる。会社が成長すればリターンに上限はない。その代わり、何も約束されていない
  • 債券:お金を貸す。利子と満期の元本返済が約束されている。その代わり、どれだけ発行体が儲かってもリターンは利子まで

「約束されている」と聞くと安全に思えますが、債券には債券のリスクがあります。主に3つです。

  1. 信用リスク:貸した相手が返せなくなる(デフォルト)
  2. 金利変動リスク:満期前に売る場合、世の中の金利が上がると債券の価格は下がる
  3. 為替リスク:外国債券なら、円高になれば円ベースの価値が減る

2つ目だけ少し補足します。

世の中の金利が2%に上がったのに、手元にあるのが利率1%の古い債券だったら、値引きしないと誰も買ってくれません。

金利が上がると、既に発行された債券の価格は下がる

この関係は債券を理解する上での基本です。

実際には、個人が債券を1本ずつ買うことは少なく、投資信託(債券ファンド)でまとめて持つ形が主流です。この場合、上の値動きに加えて信託報酬もかかります。

ひとつだけ例外を分けておきます。

個人向け国債は、中途換金しても元本が確保される特別設計で、価格変動がありません。

つまりあれは「値動きのある債券」ではなく、守り(無リスク資産)側の商品です。

個人向け国債の話は別記事に譲るとして——

👉 この記事で考えるのは、「値動きのある債券を、リスク資産として持つべきか」です。

債券の存在意義——ポートフォリオの「クッション」

では、値動きのある債券は投資の中でどんな仕事をするのか。

教科書が「株式と債券を組み合わせろ」と言う理由は、株式と債券の値動きの相関が低めだからです。

株が急落する局面で、債券は同じだけは落ちないことが多い。

組み合わせると、資産全体のブレ(振れ幅)がならされます。

これが債券の仕事です。

増やすことではなく、ブレをならすこと。 ポートフォリオのクッションです。

伝統的な投資理論の世界で「株式60:債券40」が王道とされてきたのは、この機能のためです。

ただし、正直に言っておくと、このクッションは常に効くわけではありません

2022年には、インフレと急速な利上げで米国の株式と債券が同時に下落しました。

「相関が低い」はあくまで長期の平均の話で、一番守ってほしい場面で守ってくれない年もある。

👉 債券の仕事は「ブレをならす」。ここを押さえると、次の話が一気に見えます。

そのクッション、現金でも作れます

ブレをならしたいだけなら、値動きがゼロの資産を混ぜるのが一番確実です。つまり現金です。

僕はリスクの調整を「水割り」で考えています。

リスク資産(株式インデックスファンド)が原液。

そのままだと強すぎるなら、水(現金)で割って自分の飲める濃さにする。

原液に別の酒(債券)をブレンドして度数を下げる方法もありますが、味の管理は複雑になります。

実はこれ、僕の思いつきではなく経済学の教科書に載っている考え方です(分離定理と呼ばれます)。リスク資産の中身は最適なものを1つ持てばよく、リスクの総量は無リスク資産との比率で調整する。 個人の資産運用に翻訳すれば、「株式インデックス+現金」の2部品で設計は完成する、ということです。

投資の「効率」とは何か|「リターンが高いほど良い」を卒業する

ここで、こんな声が聞こえてきそうです。

「現金はほとんど金利が付かない。今は国債だけで2%を超える利回りがある。水で割ったら、その分リターンを捨てることになる」

もっともな指摘です。

ただ、答えはシンプルです。

物足りないなら、水ではなく原液を増やせばいい。

債券は、リスクも期待リターンも「株式と現金の中間」にある資産です。

だから「株式60:債券40」が作るリスクと期待リターンは、株式の比率を少し上げた水割り(たとえば株式7割前後+現金3割)でほぼ再現できます。

株式と現金の比率という1つのつまみで、リスクも期待リターンも連続的に調整できる。

わざわざ第3の部品を持ち込まなくても、2部品で同じ場所に到達できるんです。

👉 リスクと期待リターンの調整は「混ぜ物」ではなく、株式と現金の「比率」で。

ちなみに、運用資産の外に置く現金(生活防衛資金など)の置き場として個人向け国債を使う選択肢は、守り側の設計なので別記事に譲ります。

個人向け国債 変動10年の使いどころ|「無リスク資産の置き場」の正解

2,000万円で考える——「60:40」にすると何が起きるか

ここまでの話を、具体的な金額で確かめます。

運用資産2,000万円の人が、王道の「株式60:債券40」を組むとしましょう。

株式1,200万円、債券800万円です。

やることリストはこうなります。

  • 債券ファンドを選ぶ(国内か先進国か、為替ヘッジは付けるか、信託報酬はいくらか)
  • 年に1回はリバランスする(値上がりした方を売って比率を戻す。課税口座なら売却益に約20%の税金)
  • この管理を、運用が続く限り数十年続ける

一方、水割り方式ならこうです。

株式1,200万円+現金800万円。

期待リターンが物足りなければ、株式1,400万円+現金600万円のように原液を濃くすればいい。

リバランスは「現金の比率を確認して、株式を買い足すか取り崩すか決める」だけです。

債券ファンドの信託報酬はゼロ、売却課税のイベントも起きにくい。

運用資産2,000万円で同じ守備力を作る2つの方法の対比。株式60:債券40の債券版と、株式+現金の水割り版。振れ幅はほぼ同じでコストと手間だけが違う

で、肝心の「守備力」はどうか。値動きの振れ幅は、両者でほぼ同じです。 むしろ債券側は為替や金利で意外と動きます(為替ヘッジなしの外国債券は、為替だけで年10%以上動く年も珍しくありません)。

同じ守備力を手に入れるのに、余計なコストと手間を払う理由がない。これが「債券はいらない」の中身です。

ちなみに「NISAの成長投資枠で債券ファンドを持てば非課税では?」と考えた方は、こちらで別の角度から検討しています。

NISAに債券は入れるべき?「債券で守る」をNISA口座でやってはいけない2つの理由

👉 2,000万円の60:40が与えてくれるものは、株式+現金でほぼそのまま作れる。より単純に、より安く。

資産形成期にやるべきは、配分いじりではない

もう一歩踏み込みます。仮に60:40を組む手間を惜しまないとしても、その労力の使い先が違う、というのが僕の考えです。

資産形成期のリターンを決める最大の変数は、配分の細部ではなく入金力です。60:40か70:30かを悩んで得られる差より、固定費を見直して積立を月1万円増やす方が、最終的な資産額への効きは大きい。

そしてもうひとつ。

リスク許容度は固定値ではありません。 暴落の仕組みを知り、下落を経験し、回復の歴史を学ぶことで、リスク許容度は上がっていきます。

クッションが必要なのは怖いからです。

なら、クッションを厚くする工夫より、怖さの正体を理解する方が根本的です。

僕自身の運用資産は、株式インデックス100%。

あとは運用資金の外に置く、生活防衛資金や特別費などの現金だけです。

暴落への備えは、債券ではなく「現金」と「構造の理解」。

この設計にしてから、配分で悩む時間はゼロになりました。

👉 配分表を磨く時間を、入金力とリスク許容度に投資する。資産形成期のリソース配分はこれが正解です。

では、債券を考えていいのはいつか

最後に、冒頭の「大半の人は*まだ*考えなくていい」の「まだ」を回収します。僕の線引きは、資産が数億円の規模に乗り、アセットアロケーション(資産クラスの分散)そのものが仕事になったときです。

理由は2つあります。

1つ目。

資産形成期の僕たちには、給与という最強のクッションがあります。

暴落しても翌月から入金で回復に向かえる。

でも資産が数億円になると、年間の入金力は資産全体に対して誤差になり、このクッションが機能しなくなります。

値動きの違う資産クラスへの分散が、初めて「自前で用意すべきもの」になる。

人的資本とは|収入差の正体と、家計の入金力に変える方法

2つ目は守りの絶対額です。

運用資産2,000万円なら、守りの800万円は現金で十分置けます。

でも数億円の資産で守りを数千万〜億の単位で持つなら、置き場の設計自体が論点になり、そこで初めて債券という選択肢がコストに見合ってきます。

社債も、外国債券も、債券ファンドも扱いは同じです。

その段階が来たら考えればいい。

逆に言えば、その段階まで、債券について悩む時間そのものが機会損失です。 考えないことも、立派なリスク管理です。

▼ 減らしたくないお金の置き場から整えたい人へ

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まとめ:債券の仕事を知れば、「今はいらない」に自分で辿り着ける

  • 債券は「お金を貸して利子をもらう」仕組み。仕事は増やすことではなくブレをならすこと
  • そのクッション機能は、現金でより確実に・より安く作れる(リスク調整は水割りで)
  • 「リターンが物足りない」への答え:株式と現金の“比率”というつまみで、リスクも期待リターンも調整できる。第3の部品は要らない
  • 資産形成期の労力は配分いじりではなく、入金力とリスク許容度
  • 債券を考えるのは、数億円規模でアセット分散が仕事になってからで遅くない

「債券、どうしようかな」と迷ったら、この記事を思い出してください。あなたの答えは配分表の中ではなく、入金力とリスク許容度の側にあります。

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「債券をどうしよう」と設計をこねくり回したくなったとき、立ち返る地図になるのが本書です。難しい理論を投げつけず、『インデックス投資+無リスク資産』という骨格を、これ以上ないほど平易に言い切ってくれます。読書が得意でない僕の妻でも一気に読めた一冊で、僕自身、株式+現金というシンプルな設計の土台をこの本で固めました。

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本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資・保険の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。
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この記事を書いた人

ファイナンシャルプランナー(FP技能士)|東証プライム上場企業の会社員。
40代から資産形成に本気で取り組み、1年で純資産1000万円増を達成。
「今さら遅いかも…」と不安な方へ、データと実体験に基づく合理的な資産形成を発信しています。

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