従業員持株会はやるべき?おすすめしない理由と、やめどき・売却の判断

給料も、株も、同じ会社。持株会の"お得"の裏側|給与明細と持株会の通知を見比べる会社員

会社から「持株会、どう?」と勧められたとき、深く考えずに加入していないでしょうか。

奨励金が付くからお得。
給与天引きだから手間がかからない。
一見すると合理的に見える制度ですが、その裏で、収入と資産を同じ会社に集中させるという見えにくいリスクを抱えています。

僕自身も25年以上続けて、最終的にはやめました。

この記事は、入るべきか迷っている人、なんとなく加入しようとしている人、すでに加入していてやめどき・売却を迷っている人に向けて、「入るべきか」「続けるか・売るか」を自分で判断できる状態になることをゴールに整理します。
東証の最新調査で「みんなの持株会」の実態を確認し、売却の手順と税金、退職時の扱いまで通して解説します。

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先に結論です。原則としてはおすすめしない。ただし条件次第では合理的に使える。そういう制度です。

この記事でわかること
  • 従業員持株会をおすすめしない3つの構造的リスク
  • 奨励金10%は本当にお得なのか(東証2024年度調査の実態と、集中リスクの値段)
  • それでも使える条件と、合理的な使い方(単元株になったら売ってインデックスへ)
  • 売却の5ステップ(振替・特定口座・税金・インサイダー)と、退職時の扱い

目次

結論:従業員持株会は原則おすすめしない

多くの人にとって、合理的ではありません。
理由はシンプルで、構造的にリスクが大きい投資だからです。

まず「みんなはどうしているのか」を、東京証券取引所の2024年度調査(2025年3月末・上場3,265社)で押さえます。

  • 従業員に占める持株会の加入率は40.1%。加入者1人あたりの平均保有額は250.3万円(13.88単元)
  • 奨励金は96.6%の会社が支給。金額は拠出1,000円につき100円(=10%)が最多で42.6%、次いで50円(5%)が26.9%。平均は107.24円
  • 奨励金が20%以上の会社は約11%、15%以上でも約15%

平均250万円を1社の株に置いている、というのが加入者の平均像です。
奨励金10%は「普通」の水準で、それでも主観的には十分に高く感じるので、多くの人がここで入ります。

だからこそ、10%が本当にお得なのかを後で数字で見ます。
まずは、これが問題になる理由から説明します。

(出典:東京証券取引所「2024年度従業員持株会状況調査結果の概要」2026年2月16日)


なぜおすすめしないのか|3つの構造的リスク

① 収入と資産が、同じ会社に集中する

あなたの収入源はどこでしょうか。
持株会は、その収入源と同じ会社に金融資産も投資するということです。
給与も資産も「会社の業績」に依存する構造になります。

業績が悪化すれば、給与・ボーナスは減り、自社株も下がる。
最悪の場合、収入と資産を同時に失います。

「大企業だから大丈夫」は通用しません。
JALは2010年に会社更生法を申請して100%減資、株式の価値はゼロになりました。

東京電力の株価は2011年の原発事故後、数ヶ月で10分の1近くまで下がりました。
どちらも、その直前まで「潰れるはずがない会社」でした。
あなたの勤務先は、JALや東京電力より安全だと言えるでしょうか。

大企業で安定しているほど見えにくいですが、これが最大のリスクです。
「給料も年金も持ち家も日本円に賭けている」のと同じ構造が、会社単位で起きます。

→ 外国株を持つ意味|給料も年金も持ち家も、すでに「日本円」に賭けている

② 自由に売却できない(流動性の問題)

持株会の中の株は、証券口座の株のように今日売ることができません。
売るには、単元株(通常100株)になった分を自分名義の証券口座へ振り替えてからです。
単元に届いていない端数は売れず、会社によっては売却制限や売買の届出ルールもあります。

しかも振替先の証券口座は、多くの場合、会社が事務委託している対面型の大手証券会社に作ることになります。
証券会社を選べない、というのも見えにくいデメリットです。

つまり、必要なときに、自分の使いたい口座で現金化できない可能性がある。
これは後半の「売却の手順」で詳しく書きます。

③ 個別株になることで、振れ幅が大きくなる

持株会は必然的に個別株投資です。
奨励金があっても、株価がそれ以上に下がれば意味がありません。

個別株には、業績や不祥事で株価が半分以下になる事象が普通に起きます。
市場平均と言える十分に分散が効いたインデックスファンドと比べて、リスクに対するリターンの効率は劣りやすい。

しかも個別株には「ゼロになる」リスクがあり、これは振れ幅の問題とは別の桁のリスクです。
自社株の値動きが自分の許容度の中に収まるかは、感覚ではなく一度確かめておく価値があります。

→ 投資のリスク許容度とは?4つの質問で診断する


奨励金10%は、本当にお得なのか

「でも奨励金があるから」が、加入の最大の理由だと思います。ここを数字で見ます。

奨励金10%は、買った瞬間に1回だけ付く割引です。
毎年10%ずつ増えるわけではありません。
しかも奨励金は給与所得として課税されるので、手取りベースでは10%より小さくなります(税率20%の人なら約8%)。

一方で、その株を持ち続ける限り、1社の個別株の値動きを引き受け続けます。
1年で30%下がる個別株は珍しくなく、市場全体が上がっている年でも、自社だけ下がることは普通にあります。

👉 奨励金は「1回きりの10%」。集中リスクは「持っている間ずっと」。天秤にかけると、奨励金だけを理由に長く持ち続ける合理性はありません。

だから、この記事の結論は「奨励金は取る。ただし株は持ち続けない」になります。
奨励金のメリットを取りつつ集中リスクを避ける方法が、後半の「合理的な使い方」です。


それでも持株会が有利になる条件

ここまで読むと「じゃあ全部ダメなのか」と思うかもしれません。
条件次第では使えます。
次にほとんど「YES」と言える人は、検討の余地があります。

  • 奨励金が15%以上ある(東証調査では上位15%の会社だけ)
  • 売却制限がほとんどなく、単元株になったらすぐ振り替えて売れる
  • 十分に分散の効いた低コストのインデックスファンドで、NISAの年間枠(360万円)をすでに使い切っている
  • 個別株の値動きを、生活に影響なく許容できる
  • 生活防衛資金を金額で確保したうえで、余剰資金で拠出している

逆に、1つでも不安があるなら、基本的には見送るほうが合理的です。
特にNISA枠が余っている人は、同じお金をNISAの低コストのインデックスファンドに回すほうが、非課税と分散の両方を取れます。

→ オルカンの前に考えるべきこと|資産配分とリスク設計


合理的な使い方|単元株になったら売却して、インデックスへ

インデックス投資を前提とするなら、この方法が最も合理的です。

単元株(100株)まで積み立てたら売却し、NISAの成長投資枠で低コストのインデックスファンドを買う。奨励金のメリットだけを取りつつ、集中リスクを避けられます。
どの投資信託にするかは、指数で決まり、商品で差がつきます。

→ 投資信託の選び方|結局どれを選べばいい?

売却タイミングで迷わないことが、最大のコツです。
単元に達したら即売却。

株価予想で待たない。
「含み損だから待つ」「まだ上がりそうだから待つ」——こうした判断が入ると、リスクを抱え続けることになります。

→ 売却の判断軸|長期投資家が“売っていい”4つの場面

すでに個別株投資をしている人が、自社株を投資基準に合う銘柄として一部に持つのはアリです。
ただし積立なので購入タイミングを選べない、という制約はあります。

そして、インデックス投資を軸にしている人にとって、「やらない」が最も合理的なケースが多い。集中リスクを取らず、判断の手間を増やさず、投資方針をシンプルに保てる。
それ自体が大きなメリットです。


売却の5ステップ|振替・特定口座・税金・インサイダー

「売る」と決めても、持株会の株は証券口座の株と同じ手順では売れません。
ここでつまずく人が多いので、順番に書きます。

  • 単元株(100株)に達しているか確認する——持株会の残高は「口数」で表示されることが多い。単元未満の端数は振替できず、持株会に残る
  • 持株会に「引出し(振替)」を申請する——自分名義の証券口座(多くは会社が事務委託している証券会社)へ株式を移す。口座がなければ先に開設。僕の場合は野村證券で、ネット証券に慣れた身には手数料の高さに驚きました。結局、窓口には一度も行かないのに、です
  • 特定口座(源泉徴収あり)で受け入れる——売却益の税金(20.315%)が口座内で処理され、原則として確定申告が不要になる
  • 証券口座で売却する——ここで初めて、普通の株と同じように売れる。注文は自社の売買規程(事前届出・売買禁止期間)に従う
  • 売却代金でNISAのインデックスファンドを買う——奨励金分だけ得をした状態で、分散された資産に置き換える

税金は2種類に分かれます。
奨励金は給与所得として、支給時に給与と一緒に課税されています。

売却益は譲渡所得で、特定口座なら約20%が源泉徴収されます。
「奨励金にも売却益にも二重に課税される」わけではなく、それぞれ別の所得として1回ずつです。

そしてインサイダー取引規制。
持株会の一定の計画に従った定時定額の買付は規制の適用除外ですが、持株会で積み立てた株を売るときは適用除外ではありません。

拠出額を増やす・新規加入・退会時の清算も、未公表の重要事実を知っている状態では判断できません。
だから売るときは、決算発表前後などの売買禁止期間を避け、自社の内部規程どおりに届出を出す。

もう1つ、実務で効くのが「知る前計画」です。
売却する期日と数量を先に決めて証券会社に提出しておけば、その後に重要事実を知っても計画どおりに売れます。
ここを飛ばすと「持株会の株を売ったらばれる」以前に、規制違反になります。

(根拠:金融商品取引法166条のインサイダー取引規制と適用除外、日本取引所自主規制法人「インサイダー取引規制の適用除外範囲の拡大に係る活用事例等説明会」資料。売却手順は各持株会の規約と事務委託先の証券会社の案内に従ってください)


やめどき・退職時はどうなるか

やめどきの判断は、株価ではなく集中度で決めます。「今は含み損だから」「もう少し上がってから」は、判断ではなく先送りです。
単元に達した時点、あるいは自社株が金融資産の1〜2割を超えた時点を、機械的なやめどきにしておくと迷いません。

退職時は、多くの持株会で退会になります。
単元株は自分名義の証券口座へ移し、単元未満の端数は持株会が時価で買い取る、という扱いが一般的です(規約で異なります)。
転職が決まったら、退職日より前に「単元に届いているか」「移す口座があるか」を確認しておくと、退職後に放置してしまうことを避けられます。

退職時に放置しやすいものがもう1つあります。企業型DCです。

→ 確定拠出年金を退職後に放置すると6ヶ月で自動移換になる話


僕が持株会をやめた理由

僕自身も加入していました。
きっかけは単純で、「会社に勧められたから」です。
奨励金(購入金額に対して5%)があるからお得、という説明を受け、当時は「めちゃくちゃ有利な制度だ」と考えていました。

実際、25年以上積み立てを続け、最終的には元本238万円に対して約330万円になっています。
数字だけ見れば、悪い投資ではありません。

それでもやめた理由は、この投資が「超集中投資」だと理解したからです。
給与も資産も同じ会社に依存する構造は、長期の資産形成において合理的とは言えない。

当時すでに全世界株式などの投資信託に約2,000万円を投資していて、資産全体で見れば集中リスクはある程度薄まっていました。
それでも、より分散された投資に集約すること、判断のシンプルさを保つことを優先して、解約しました。

結果だけ見れば、そのまま続けていればもう少し利益が出ていた可能性はあります。
移行したインデックス投資のほうが、短期ではパフォーマンスが劣りました。

でもそれは結果論で、投資判断としての合理性とは別の話です。
お得に見える制度でも、構造として合理的でなければ選ばない。それだけです。

売却した資金は、全世界株式のインデックスファンドに置いています。

→ 投資は何から始める?商品選びを“最後”にする5つの手順


まとめ|持株会は「なんとなく」でやる制度ではない

僕の結論
  • 持株会は、収入と資産を同じ会社に集中させる構造的にリスクの大きい投資。奨励金は1回きりの割引で、集中リスクは持っている間ずっと
  • 奨励金は10%が最多で、20%以上は約11%の会社だけ。「高いから入る」が成立する人は少ない
  • 使うなら、単元株になったら売ってNISAのインデックスへ。売却は振替→特定口座→自社規程どおりに。定時定額の買付は適用除外でも、売却はインサイダー規制の対象(「知る前計画」で先に期日と数量を決めておく手がある)
  • やめどきは株価ではなく集中度で決める。退職時は退会になるので、単元と移す口座を先に確認

資産形成の基本は、長期・分散・低コストです。
この3つを満たすNISAやiDeCoを優先するほうが、多くの場合は合理的です。

→ NISAと確定拠出年金はどっちを優先?|40年シミュレーションの答えは「NISAが先、DCは後から」

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持株会を「お得かどうか」で考えている限り、入るかやめるかの判断は毎回揺れます。
この記事で「集中か分散か」を軸にしたのは、そこに判断の基準があるからです。

『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』は、自社株を含む個別株の集中がなぜ合理的でないか、普通の人が何を持てばいいかを、会話形式で一冊にまとめてくれます。読み終えると、持株会に限らず「勧められた金融商品」を自分の基準で断れるようになります。

僕自身、持株会をやめて全世界株式に集約する判断の土台になったのが、この本をはじめとする多くの名著で語られている「分散された低コストのインデックス1本で十分」という考え方でした。

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よくある質問

Q. 持株会の奨励金に税金はかかりますか?

かかります。
奨励金は給与所得として、支給時に給与と一緒に源泉徴収されます。
売却時の利益は譲渡所得で、特定口座(源泉徴収あり)なら約20%が口座内で処理され、原則として確定申告は不要です。

Q. 持株会の株を売ると会社にばれますか?

売却は持株会から証券口座へ振り替えたうえで行うので、持株会の事務局は引出しを把握します。
それ自体は問題ありません。

問題になるのは、自社の売買規程(事前届出や売買禁止期間)を守らずに売ること、そして未公表の重要事実を知った状態で売ることです。
定時定額の買付は規制の適用除外ですが、売却は対象です。

Q. 退職したら持株会の株はどうなりますか?

多くの持株会では退職=退会になり、単元株は自分名義の証券口座へ移し、単元未満の端数は持株会が買い取る扱いです。
規約で異なるので、退職前に事務局へ「単元数」「移す口座」「端数の扱い」を確認してください。

【免責事項】
本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資・保険の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。
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この記事を書いた人

ファイナンシャルプランナー(FP技能士)|東証プライム上場企業の会社員。
40代から資産形成に本気で取り組み、1年で純資産1000万円増を達成。
「今さら遅いかも…」と不安な方へ、データと実体験に基づく合理的な資産形成を発信しています。

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