日本人(二人以上世帯)の貯蓄と負債の現状 資産形成を始めよう!

基礎知識向上委員会

お金の話って、身近な人でも聞きづらくないですか?
資産形成を始めたばかりの頃は、周りの状況が気になるものです。特に日本ではお金の話はタブー視される傾向が強いので、真面目に相談したいと思っても相談先がないのが現状です。とはいえ、SNSやYouTubeで発信されている情報は「資産⚪︎千万円達成しました!」とか、「新NISA年初一括360万円埋めました!」など、まるでこれからコツコツ頑張っていこうとする気持ちをへし折りにきているかのような派手なものが多く、モチベーションを下げる要因にもなりかねません。

そこで今回は、貯蓄と負債に関する日本の現状を正しく知ることで、「今からでも遅くない。1歩1歩資産形成を進めていこう」と前向きになれる情報をご紹介していきます。ぜひ最後までお付き合いください。

※この記事では特に注記がない場合、以下で公表されている情報を用いています。
  家計調査年報(2023年)貯蓄・負債編(二人以上世帯)


貯蓄・負債の全体像

データの前提

まずは今回使用する「家計調査年報(貯蓄・負債編)」のデータの前提条件について触れておきます。
総務省統計局が二人以上世帯の数に比例した確率比例抽出された全国168の市町村、8,076世帯で実施した調査結果を集計したものであり、環境要因による偏りが少ない「広く全国平均された」データとなっています。

調査世帯数の割り当て

二人以上世帯への調査は「世帯票」「家計簿」「年間収入調査票」「貯蓄等調査票」に記入する形式で行われ、2018年からはオンラインでも実施されています。調査対象世帯はこれらを6ヶ月にわたって記録します。特に最初の1ヶ月はかなり詳細データを記録するようですので、調査対象となった世帯はしっかりした家計管理ができるようになったりしそうですね。笑
データの集計については、分類(単身か二人以上世帯か、勤労者世帯かそうでないかなど)によって母数(調査対象の数)のばらつきを整理するなどややこしいことを行なっていますが、今回使用するデータが「十分全国平均である」と思っていただければいいと思います。

実際の調査票や細かな集計方法など気になる方は総務省統計局のホームページから確認してみてください。

貯蓄額の平均値・中央値

では実際のデータを見ていきましょう。まずは全体の貯蓄額の平均からです。「みんなどれくらい貯めてるの?」気になりますよね?
単身世帯は含まれていないデータですのでご注意ください。

2023年二人以上世帯の貯蓄概要

✅ 平均貯蓄額:1,904万円
✅ 年間収入:642万円
✅ 貯蓄額の年収比率:296.6%
✅ 貯蓄額の中央値:1,032万円
✅ 貯蓄額0の世帯を除いた中央値:1,107万円

えー😱みんなこんな貯めてんの!?
僕の最初の感想です。皆さんはいかがでしょうか?
僕と同じ感想を抱いた人でもここでやめずに最後まで読んでみてください。もう少し安心できると思いますので。笑

このデータは「貯蓄額」であり「資産額」ではないため、不動産等の現物資産は含んでいません。「現預金・有価証券・生命保険など」を集約した結果となっています。

負債額の平均値・中央値

続いて負債の全体像を見てみましょう。

2023年二人以上世帯の負債概要

✅ 平均負債額:655万円
✅ 年間収入:642万円
✅ 負債額の年収比率:102.0%
✅ 負債保有世帯の割合:39.3%
✅ 負債保有世帯の負債額の平均値:1,667万円
✅ 負債額0の世帯を除いた中央値:1,422万円

負債0の家計が60%もあるのかぁ😰同じ統計で「持ち家率」は86.5%となっているのですが、それでも負債保有率が40%を切っている。住宅ローンをがっつり抱える僕は、負債保有世帯の割合に一番驚きました。
負債の種類としてはやはり「住宅・土地のための負債」が最も多く、負債ありの平均値は非常に高額な印象です。「住宅ローン組む前に知りたかったなぁ」とか考えちゃいますね。

この後年代別データも見ていきますが、持ち家比率の低い20代と住宅ローンを完済した60代以降も含まれていることが大きく影響していると思われます。

貯蓄額別の分布図

平均値だけではイメージが湧きにくいので、貯蓄額別の分布図も見ていきたいと思います。

こうして分布を見ると、貯蓄額が平均(1904万円)を下回る世帯が2/3を占めています。10世帯に1世帯が100万円未満、5世帯に1世帯が300万円未満であることがわかります。
こうして見ると「少しずつでも頑張っていこう」そう思えてきませんか?

身も蓋もない言い方をしてしまうと、資産形成において周りと比べることにはなんの意味もないんですが、「結構みんな苦しんでいるんだ」そう思えることは心理的にはプラスになると思います。まずは必死で100万円貯める。それが実現できれば少なくとも1/10は抜け出せることになります。貯蓄がない人でも、まずはここを目標にしてみるのがいいのではないでしょうか?

ちなみに、金融広報中央委員会が二人以上の5,000世帯にインターネット調査を行った「家計の金融行動に関する世論調査2023年」では、貯蓄0が1,233世帯(24.7%)、金融資産保有額の中央値が303万円となっています。調査員等を挟まず回答者の主観がまとめられていますので、「まだ資産形成はこれから」という方には、こちらの方が実感に近いデータになっているかもしれません。


年代別貯蓄額・負債額

ここからは年代別データを見ていきます。冒頭に書いたように、「今から資産形成に取り組もう」そう思えるような見方も紹介していきますので、ぜひ皆さんも一緒に資産形成に取り組んでいっていただきたいと思います!

資産形成を始めるときにやるべきことについて、年代別に解説した記事も書いています。
ぜひ参考にしてみてください。

年代別 貯蓄額・負債額一覧

年代別のデータを一覧表にしたものがこちら。純資産の欄は単純に貯蓄額ー負債額を僕が勝手に追加したデータです。あらためてですが、この貯蓄額には不動産などの現物資産は含まれておらず、厳密な意味(簿記的な意味)での純資産ではありませんので注意してください。
それを考慮したとしても、40代まで負債額が貯蓄額を上回るというのは結構衝撃的なデータになっています。住宅ローンを組む前の自分に見せてやりたいですね。

ここで気をつけたいのは「とりあえず普通に生きていけば60代ではそこそこの資産を築ける」そう錯覚してしまうことです。これからは以下のような要因で、この一覧表の状況はどんどん悪化していくことが想定されるからです。

  • 住宅ローン完済年齢の高年齢化
  • 金利上昇による住宅ローン返済額の増加
  • 年金受給開始年齢の高年齢化
  • 年金受給額の減少
  • 税金や社会保障制度の改正による負担額の上昇

さらに、現在の平均値に届いたとしても、インフレにより相対的に価値が減少していることも間違いないでしょう。
決して無闇に不安を煽りたいわけではありません。「健全な危機感」を持って、少しでも早く資産形成に取り組むべし。そう伝えたいんです。ということで、次回からは年代別のデータをもう少し細かく見ながら、少しでも多くの人に「よし、資産形成に取り組んでいこう」そう思ってもらえるような考察もしてみたいと思います。


まとめ

では今回のまとめです。

2023年二人以上世帯の貯蓄額・負債額まとめ

✅ 平均貯蓄額:1,904万円
✅ 平均負債額:655万円
✅ 貯蓄額の中央値:1,032万円
✅ 貯蓄額0の世帯を除いた中央値:1,107万円

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✅ 2/3の世帯が平均以下
✅ 10世帯に1世帯が貯蓄額100万円未満、5世帯に1世帯が300万円未満
✅ 40代までは平均貯蓄額が平均負債額を下回る
✅ 「普通に生きていれば今後は安泰」とは言えない!

今回は二人以上世帯の貯蓄と負債の現状についてデータを交えて紹介しました。
最後に少し不安を煽るようなことも書いてきましたが、「健全な危機感」を持って、少しでも多くの人に資産形成に取り組んでほしい。そんな思いを込めて書いています。
次回からはさらに、年代別の詳細データを紹介しながら皆さんの背中を押せるような記事を書いていきたいと思いますので、よろしくお願いします!

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