暴落で買い、反発で売った投資家たち|2026年3〜4月の資金フローが語ること

2026年3月、中東ショックで日経平均は13%下落しました。
翌4月、16%の急反発で史上最高値を更新。

この2ヶ月間に、投資家は何をしたか。

国内株式型の投資信託には、3月に過去最大の+6,780億円が流入しました。
暴落のさなかに、押し目買いが殺到したということです。

ところが4月、反発を見届けた投資家たちは一転して利益確定に動きます。
国内株式型は628億円の流出超過。
7ヶ月ぶりの資金流出でした。

暴落で買い、戻ったら売る。
一見うまい立ち回りに見えます。

ですが実績で見ると、一番強かったのは何もしなかった人でした。
積立を止めず、利確もせず、淡々と買い続けた人が最もリターンを得ています。

👉 Just Keep Buying──淡々と買い続けることが、暴落局面の最適解だった。データがそれを示している。

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目次

2026年3月→4月、投資家は何をしたか

まず事実を並べます。

中東ショックの時系列

2月26日、日経平均は59,332円の史上最高値をつけました。
その2日後に局面が一変します。

  • 2月28日:米国・イスラエルがイラン空爆を開始
  • 3月4日:日経平均▲2,033円(歴代5位の下落幅)
  • 3月9日:日経平均▲2,892円(歴代3位の下落幅)。一時51,407円
  • 日経平均VI(恐怖指数):64台まで急騰(2024年8月以来の高水準)
  • 3月23日:一時50,688円
  • 3月末:約51,000円台で着地。月間下落幅▲7,786円(▲13.23%

2月の高値から3月の安値まで、わずか1ヶ月で約8,600円、14.5%が消えた計算です。
WTI原油は80ドルから120ドル近辺まで約50%急騰し、「有事」の空気が市場全体を覆いました。

そして4月の急反発

  • 4月:日経平均は月間+16.10%で史上最高値を更新。6万円を突破
  • TOPIX:+6.56%
  • S&P500:+10.42%

3月の下げをほぼ帳消しにした形です。

資金フローに何が起きたか

項目3月(暴落月)4月(反発月)
国内株式型+6,780億円(過去最大)▲628億円(7ヶ月ぶり流出)
うち225連動型大幅流入▲1,685億円
国際株式型+1兆560億円+1兆1,621億円
オルカン+2,900億円+2,956億円
S&P500+1,360億円+1,545億円

国内株式型だけが、3月の大幅流入から4月の流出へと反転しています。
特に225連動型(日経平均連動ファンド)から1,685億円が抜けており、利益確定売りの震源地が明確に見えます。

日本株ファンドへの資金殺到がなぜ起きるのか、その構造はこちらで整理しています。
「日本株ファンドに資金殺到──ランキング上位を理由に飛びつくな!」

一方、オルカンとS&P500は両月とも安定した流入を維持しました。
積立設定を変えなかった人が大半だったということです。

👉 同じ「暴落→反発」を経験しながら、国内株式型と国際株式型で投資家の行動は真逆に分かれた。

週次データが映す2種類の投資家

月次データは3月を「過去最大の流入月」として見せます。
しかし週次で見ると、風景はまったく違います。

残念ながら、投資信託の設定・解約の週次データは制度上公開されていません。
ここでは、JPX(日本取引所グループ)の投資部門別売買動向を使います。
株式市場での直接売買データですが、個人投資家の行動パターンを映す鏡として十分機能します。

第1〜3週:個人は合計1.6兆円の買い越し

個人合計うち現金うち信用日経平均終値
3月1週(攻撃直後)+8,329億円買い越し買い越し55,621円
3月2週(VI50超)+4,267億円買い越し買い越し53,820円
3月3週+3,383億円+1,230億円+2,153億円53,373円
3月4週(3/23に一時50,688円)▲145億円+3,172億円▲3,318億円53,373円

第1週から第3週まで、個人投資家は合計1兆5,979億円の買い越し。
下がれば下がるほど買い向かう、逆張りの教科書のような動きです。

第4週:同じ「個人投資家」の行動が真っ二つに割れた

問題は3月第4週(3/23-27)。
日経平均が一時50,688円まで沈んだ週です。

合算では▲145億円と、かろうじて売り越しに転換しました。
しかし中身を分解すると、2つのまったく異なる行動が見えてきます。

現金投資家(NISA・長期積立層)は、+3,172億円の買い越し。
4週間一度も崩れていません。
最悪の週でも買い続けています。

信用投資家(レバレッジ層)は、▲3,318億円の売り越し。
追証(追加証拠金)の差し入れができず、損切りに追い込まれた構造です。

この2つが相殺されて、合算の▲145億円という「かすかな売り越し」になっているだけです。

自分のリスク許容度がどちら側にあるかは、こちらで整理しています。
「リスク許容度とは?自分の許容範囲の見つけ方」

👉 暴落の底で売らされたのは、レバレッジをかけた層だった。現金で積み立てていた人は、最悪の週でも買いを止めていない。

なお、海外投資家は第2週から売りに転換し、第4週には▲1兆5,090億円という大量売り越しを記録しています(現先合算で▲2.1兆円)。
個人の現金層は、海外投資家の売りを吸収する側に回っていたということです。

反発月に何が起きたか──4月の利益確定売り

3月に買い向かった投資家は、4月にどう動いたか。

日経平均が+16.10%の急反発を見せた4月、個人投資家は4月中旬から6週連続の売り越しに転じました。
累計で2兆2,900億円。

3月に過去最大の流入を記録した国内株式型投信は、4月に628億円の流出超過。
特に日経225連動型から1,685億円が抜けています。

構造としてはシンプルです。

3月の暴落で押し目買い → 4月の反発で利益確定 → 差し引きで「安く買って中値で売った」

一見、損をしていないように見えます。
ですがこの行動には、見えにくいコストが積み重なっています。

「押し目買い→利確」はなぜ長期投資を壊すのか

再エントリーの壁

4月に日経225連動型を利確した人は、その後6万円を超えた日経平均に買い直せたでしょうか。

「もう一度下がったら入ろう」。
そう思った瞬間、長期投資はタイミング投資に変わります。

「下がったら買おう」がなぜインデックス投資の前提を崩すのかはこちらで掘り下げています。
「”下がったら買おう”と思った時点で、投資はブレている」

問題は「次の押し目」がいつ来るか誰にもわからないことです。
来月かもしれないし、3年後かもしれない。
その間、利確した資金は何も生まない現金として眠り続けます。

売るたびに消える20.315%

特定口座での売却益には、20.315%の税金がかかります。
NISA枠なら非課税ですが、利確した瞬間に枠は消化されます。

たとえば3月に100万円で買い、4月に116万円で売った場合。
利益16万円に対して約3.3万円の税金。
再エントリーの原資は112.7万円からのスタートです。

これを繰り返すたびに、複利の土台が削られていきます。

過去の暴落は、すべて回復している

暴落局面最大下落回復までの期間回復後1年のリターン
2020年3月 コロナショック日経▲31%(16,552円)約5ヶ月+50%超
2024年8月 急落日経▲12.4%/日(歴代最大)約2ヶ月+30%超
2025年4月 関税ショック日経▲7.83%/日約3ヶ月+25%超
2026年3月 中東ショック日経▲13.23%/月約1ヶ月(進行中)

※回復後1年のリターンは日経平均の概算値です。
2026年3月は回復直後のため進行中としています。

すべての暴落で、ホールドし続けた投資家は回復後に過去最高値を更新しています。
暴落のたびに利確して再エントリーした投資家は、そのたびに複利の土台を削り、タイミングを計り、精神を消耗しています。

👉 「暴落で買えた自分は正しい」。この成功体験が、次の利確を正当化する。これがタイミング投資の入口になる。

データが示す「淡々と積み立てた人」の実績

「暴落で一括投入するために積立を止めて現金を貯める」──この判断は本当に賢いのか。
実際の日経平均終値を使って、2つの戦略を比較します。

比較条件

  • 戦略A(毎月積立):2020年3月から毎月5万円を日経平均に積立。暴落が来ても淡々と続ける
  • 戦略B(暴落トレード):同じ毎月5万円を現金で貯め、暴落が来たタイミングで全額一括投入する

期間は2020年3月〜2026年5月の75ヶ月。
総投資額はどちらも同じ375万円です。

戦略Bには極めて有利な条件を与えています。
4回の暴落すべてを底値で完璧に拾えた前提です。
現実にはこのタイミングで買える保証はありません。

戦略Bの投入履歴(日経平均終値ベース)

暴落買い価格投入額待機期間
①コロナショック(2020/3)16,358円5万円
②2024年8月急落31,458円260万円52ヶ月
③関税ショック(2025/4)33,200円35万円7ヶ月
④中東ショック(2026/3)50,688円50万円10ヶ月

ここで見逃せない数字があります。

①のコロナショックでは、まだ積立を始めたばかりなので投入できたのはわずか5万円。
次の暴落②まで52ヶ月間、毎月5万円をひたすら現金で貯め続けることになります。

その52ヶ月間に、戦略Aは日経平均が18,917円→39,101円へ上昇する過程を丸ごと享受しています。
戦略Bの260万円は、その間ずっとゼロ成長の現金のまま眠っていました。

2026年5月時点の結果

戦略評価額リターン
A(毎月積立)約754万円+101%
B(暴落トレード)約708万円+89%

4回の暴落すべてを完璧に底値で拾っても、淡々と積み立てた人に46万円届かない。

しかも、これは戦略Bにとって最善のケースです。
現実には底値で買うことは不可能であり、この差はさらに広がります。

たとえば、各暴落の底値からわずか5営業日(1週間)遅れて買った場合。
戦略Bの評価額は約631万円まで下がり、Aとの差は約120万円に拡大します。
差が3倍近くに膨れ上がる最大の要因は、2024年8月の急落です。
底値31,458円の5営業日後には36,232円まで15%反発しており、260万円の投入額で約69万円分の購入力を失っています。
底値で買えたかどうかは「数日ずれただけ」の話ではなく、結果を根本から変える変数です。

なぜ「完璧な暴落トレード」でも負けるのか

圧倒的に大きいのは、待機期間の機会損失です。

戦略Bは75ヶ月のうち約69ヶ月を「次の暴落を待つ現金」として過ごしています。
その間、戦略Aの資金は市場にフル投資された状態で、上昇も下落もすべて経験しながら複利の恩恵を受け続けています。

暴落の底値で買えたこと自体は有利に働いています。
しかしその有利さは、待っている間に逃した上昇に比べれば小さい

日経平均は2020年3月の18,917円から2026年5月の63,339円まで約3.3倍になりました。
この上昇の大部分は、暴落と暴落の「間」に起きています。
暴落を待つということは、この「間」を捨てるということです。

👉 握力は精神論ではない。実際の株価データが「積み立てを止めない」を支持している。暴落トレードの最大の敵は、売買コストでも税金でもなく「待っている間に逃す上昇」だ。

設計された積立は、暴落時に「何もしない」で完結する

最後に、僕自身の話をします。

2026年3月、日経VIが64まで跳ね上がり、日経平均が51,000円台まで落ちた数週間。
僕は何もしませんでした。

正確には、「何もしない」以外の選択肢が設計上なかったということです。

余剰資金が存在しない設計

僕のポートフォリオは、生活防衛資金と生活費バッファを除いた運用資金は全額株式です。
「暴落用の待機資金」は持っていません。

生活防衛資金をいくら確保すべきかの考え方はこちらで整理しています。
「生活防衛資金はいくら必要?」

誤解しないでほしいのですが、現金を持つべきでないと言いたいわけではありません。
現金を含めた運用資金全体を、常に自分が理想とするポートフォリオに近い状態にしておく。
そうすると、「いつか使うかもしれない待機資金」は構造的に発生しないということです。

待機資金を持たないのは、意志が強いからではありません。
理想のポートフォリオが設計できていれば、現金比率も含めて配分は決まっている。
そこに「暴落のときだけ使う余剰資金」を置く場所はないということです。

もし待機資金を持つとどうなるか。
暴落が来たとき「今が底か?」「もう少し待つべきか?」という判断が発生します。
それはタイミング投資そのものです。

「何もしない」の根拠

僕が動かなかった理由は4つあります。

  1. Just Keep Buyingに腹落ちしている。 「いつ買うか」より「買い続けるか」。この原則を数字で確認し、納得してから積立を設計しました
  2. 自分のリスク許容度に余裕がある。 13%の下落で生活が脅かされるポジションにはいません
  3. まだ入金フェーズで、それが長期的に続く。 順序リスクの観点からも、資産形成期の下落はむしろ安く仕込める期間です
  4. 自分の行動が、自分の考える合理的な行動であると納得できている。

4つ目が一番大きいかもしれません。

暴落のときに問われるのは、「正しい行動は何か」ではなく「自分は自分の行動に納得しているか」です。
合理的だと納得できている行動は、恐怖が来ても揺らぎません。
納得できていない行動は、最初の下落で崩れます。

ちなみに、僕は日経平均を保有していません。
オルカン系に入っているだけです。
日経平均が6万円を突破しようが51,000円に落ちようが、僕のポートフォリオへの影響は「世界の5%が動いた」程度の話でしかない。

これも設計の結果です。

👉 暴落が来たら「何もしない」。それが設計された積立の強さであり、この記事のデータが示していることそのものだ。

▼ 暴落だけでなく「最高値」でも同じ原則が成り立つ理由を知りたい人へ

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「暴落を待って一括投入するより、今すぐ買い続けるほうが勝つ」──この記事で検証した結論の原典です。著者ニック・マジューリは膨大な過去データを使い、あらゆる「賢い買い方」を試した末にこの結論に辿り着いています。暴落のたびに心が揺れる人ほど、読後の握力が変わる1冊です。

【免責事項】
本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。
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この記事を書いた人

40代から資産形成に本気で取組み
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