「明日がここの初めての決算だけど信託報酬に見合っているのだろうか」。
10月15日、ノムラ・エマージング・オープンの掲示板に、こんな書き込みがありました。
4月に野村證券だけで売り出され、初日に1,043億円を集めた新興国株のファンドです。
半年たった今、純資産は約1,900億円。
そして10月16日に初めての決算を迎え、分配金は5円でした。
あの書き込みの問いに、数字で答えます。
結論から言うと、半年間の成績は、手数料0.15%の新興国インデックスファンドとほぼ同じでした。違ったのは、揺れの大きさです。
最高値からの下げは、インデックスの1.5倍。
購入時3.3%と毎年1.738%のコストで手に入れていたのは、韓国のメモリ株への集中でした。
- ノムラ・エマージング・オープンの骨格(販売会社・コスト・決算・参考指数)
- 設定から半年の成績を、新興国インデックスファンドと並べた結果
- 新興国の指数と比べて、中身のどこが違うのか
- 100万円を入れたら、コストがいくらかかるか
- 掲示板の口コミと、持っている人がこれからどうするか
ノムラ・エマージング・オープンとは|まず骨格を数字で見る
エマージングは、新興国のことです。
世界の株を時価総額(会社の値段の合計)で並べると、新興国の取り分は約12%。
残りは、日本を除く先進国が約83%、日本が約5%です(MSCI ACWI、2026年9月末)。
この3つを全部まとめたのが、オルカン(全世界株式)の中身。
ノムラ・エマージング・オープンは、そのうち新興国の12%の部分だけに投資するファンドです。
骨格を並べます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 正式名 | ノムラ・エマージング・オープン |
| 運用会社 | 野村アセットマネジメント |
| 実際の運用 | ルクセンブルク籍のファンドを通じて投資(運用は野村グループの海外拠点) |
| 販売会社 | 野村證券のみ |
| 設定日 | 2026年4月21日 |
| 購入時手数料 | 3.3%以内 |
| 信託報酬 | 実質 年1.738%程度 |
| 決算 | 年2回(4月・10月の16日)。初回の10月16日は分配金5円 |
| NISA | 成長投資枠の対象 |
| 為替ヘッジ | なし |
| ベンチマーク | なし(参考指数はMSCIエマージング・マーケット・インデックス) |
この表で一番大事なのは、最後の行です。
このファンドは、新興国の株価指数に連動することを目指していません。
プロが銘柄を選ぶアクティブファンドで、指数は「参考」として並べているだけ。
連動を目指していないのだから、評価の物差しははっきりしています。
👉 手数料を払ったあとで、新興国の指数に勝っているか。この記事はその1点で見ます。
ノムラ・エマージング・オープンの成績|半年で、指数ファンドとほぼ同じ
比べる相手は、eMAXIS Slim 新興国株式インデックス。
同じMSCIの新興国指数に連動するファンドの中で、純資産が一番大きい商品です(10月19日時点で約4,130億円)。
信託報酬は年0.1518%、購入時手数料はかかりません。
設定日の4月21日から、10月19日までの成績です。
| ノムラ・エマージング・オープン | eMAXIS Slim 新興国株式 | |
|---|---|---|
| 設定来 | +0.9% | +1.2% |
| 6月25日(ノムラの最高値) | +26.5% | +10.8% |
| 7月末 | +2.6% | +1.2% |
| 9月25日 | +13.4% | +9.5% |

6月の終わりには、指数に10ポイント以上の差をつけていました。
9月の時点でも、まだ勝っていた。
それが10月の下げで追いつかれ、半年の結果は、ほぼ横並びです。
※ノムラ・エマージング・オープンは海外のファンドを通して投資するため、市場の動きが基準価額に出るまで、Slimより1日遅れます。同じ日付で並べると比較がずれるので、ノムラの基準価額はSlimの1営業日後の値と並べています。分配金5円は足し戻しています
ここで、言えないことも書いておきます。
半年は、運用の腕を判断するには短すぎます。
この先、指数に勝つ年も負ける年もあるはずです。
それでも、半年で確かに言えることが1つあります。
基準価額で見た成績は、指数ファンドと同じ場所。
そこから購入時に払った3.3%の分だけ、手元のお金は少ない。
👉 「信託報酬に見合っているか」への半年時点の答えは、見合っていない、です。
ノムラ・エマージング・オープンの値動き|下げはインデックスの1.5倍
成績は同じでも、そこに至る道のりはまったく違いました。
| ノムラ・エマージング・オープン | eMAXIS Slim 新興国株式 | |
|---|---|---|
| 最高値からの最大の下げ | 約−20% | 約−13.5% |
| 1年あたりに直した揺れ(変動率) | 約34% | 約26% |
6月25日の最高値は12,645円。
10月19日の基準価額は10,082円です。
最高値の近くで買った人は、購入時手数料も含めると、4か月で2割を超える含み損です。
インデックスファンドの下げは、最も深かった7月末でも13.5%。
今は、最高値から12%ほど下の位置です。
同じ新興国に投資して、同じところに戻ってくる。
その途中で、1.5倍の深さまで沈んでいた。
掲示板には、7月にこんな書き込みがあります。
「今までマイクロンとKOSPIなんて気にしたことなかったのになあ」。
マイクロンはアメリカの半導体メモリの会社、KOSPIは韓国の株価指数です。
新興国のファンドを買ったのに、毎日見るのは韓国と半導体メモリ。
この揺れの理由は、中身を開くとわかります。
ノムラ・エマージング・オープンの中身|新興国の指数を、さらに「韓国のメモリ株」に寄せた60銘柄
新興国株は、もともと「アジアの半導体」
先に、指数そのものの中身を見ておきます。
新興国と聞くと、インドやブラジル、中国の成長を思い浮かべる人が多いはずです。
ところが、MSCIの新興国指数を国別に分けると、台湾が29%、韓国が21%。
この2か国だけで半分を占めます。
業種で見ても、情報技術(IT)が44%。
1位は台湾の半導体受託生産TSMCで、それだけで15.6%あります。
👉 新興国株を買うと、その半分は台湾と韓国、4割強はアジアの半導体を中心としたIT企業になります。
ここまでは、新興国のインデックスファンドを買っても同じです。
ノムラが指数と違うところ
では、ノムラ・エマージング・オープンは指数と何が違うのか。
9月末の月次レポートと、指数の公式資料を並べます。
| MSCI新興国指数 | ノムラ・エマージング・オープン | |
|---|---|---|
| 銘柄数 | 1,165 | 60 |
| 上位10銘柄の合計 | 39% | 57% |
| 台湾 | 29% | 17% |
| 韓国 | 21% | 31% |
| TSMC(台湾) | 15.6% | 9.9% |
| サムスン電子(韓国) | 8.5% | 9.6% |
| SKハイニックス(韓国) | 5.9% | 8.1% |
| SKスクエア(韓国) | 上位10社に入らない | 6.9% |
| マイクロン(米国) | 入っていない | 4.7% |

違いは2つです。
1つ目は、集中。
指数は1,165社に広がっていて、上位10社で4割。
ノムラは60社で、上位10社に6割近くを入れています。
2つ目は、賭ける向き。
台湾のTSMCを指数より減らし、韓国に寄せています。
サムスン電子とSKハイニックスは、どちらも半導体メモリの大手。
SKスクエアはSKハイニックスの筆頭株主で、マイクロンはアメリカのメモリ大手です。
メモリ大手3社だけで22%。
SKスクエアまで含めると、中身の3割前後が、半導体メモリの値動きに左右される計算です。
掲示板には、こんな書き込みもありました。
勧められたとき、担当者から「エマージングなので日本とアメリカは流石に入ってません」と言われた。
ところが、マイクロンが入っていて驚いた、という内容です。
目論見書には、新興国で稼ぐ先進国の会社も買える、と書いてあります。
目論見書のルールの範囲内です。
ただ、勧めた人も、買った人も、そこまで中身を見ていなかった。
6月に指数を大きく引き離したのも、10月に追いつかれたのも、同じメモリ株の上げ下げです。
👉 購入時3.3%と年1.738%で買っていたのは、指数を上回る成績ではなく、韓国のメモリ株への集中でした。
ノムラ・エマージング・オープンのコスト|100万円で、最初に3.3万円。毎年約1.7万円
コストを、100万円で具体的な金額にします。
| ノムラ・エマージング・オープン | eMAXIS Slim 新興国株式 | |
|---|---|---|
| 買うとき | 約3.3万円 | 0円 |
| 毎年(100万円あたり) | 約1万7,400円 | 約1,500円 |
| うち販売会社へ | 約8,800円 | ― |
毎年のコストは、約11倍。
しかもノムラの1.738%は信託報酬だけの数字で、売買の手数料などの「その他の費用」は含みません。
実際にかかった総額(総経費率)は、最初の運用報告書が出るまでわかりません。
販売会社に入る分も見ておきます。
信託報酬のうち、毎年0.88%(税込)は野村證券の取り分です。
持っているかぎり、100万円あたり毎年約8,800円が、勧めた会社に入り続けます。
仮に、2本がまったく同じ値動き(コストを引く前で年7%)をしたとします。
100万円を入れて10年後の残高は、Slimが約194万円、ノムラが約162万円。
同じ値動きでも、約32万円の差になる計算です。
※ノムラは購入時手数料3.3%を引いた残りを運用し、どちらも年7%から信託報酬を引いて10年複利で計算しました。値動きが同じだった場合の比較で、集中投資が外れたときの差は含まれていません
👉 ノムラ・エマージング・オープンは、指数に毎年2%近く勝ち続けて、やっと10年後に同じ場所に立てる商品です。
ノムラ・エマージング・オープンの評判・口コミ|掲示板の386件から
Yahoo!ファイナンスの掲示板には、10月19日までに386件の書き込みがあります。
約3割は、保有者が毎日の基準価額を報告する投稿です。
残りを時期ごとに読むと、温度がはっきり変わっていきます。
4〜6月:勧められて買い、上がって喜ぶ
設定直後に目立つのは、勧められて買ったという声です。
「野村の担当者からの勧めで購入しました」。
「ノムラの薦めで何も考えずにとりあえずここ買った」。
ほかの投資信託を売って、ここに乗り換えたという書き込みも複数あります。
一方で、早い段階から手数料を気にする声もありました。
「まずは手数料がでかいから 早くトントンな」。
6月、基準価額が2割以上上がると、空気は一気に明るくなります。
最高値をつける直前には、こんな書き込みがありました。
「オルカンより信託報酬高いがこのファンドの方が良さそうだ」。
7月〜10月:韓国とメモリ株を毎日見る
6月の終わりから、韓国のメモリ株が大きく下げ始めます。
7月末から8月にかけて、「損切り」「やっちまった感凄い」という書き込みが出てきました。
9月には、こんな声もありました。
「この銘柄は短期と決めて購入したのですがうまくいかないものですね。長期に気持ち切り替えて期待したいと思います」。
短期のつもりで買ったものが、含み損になったとたんに長期の投資に変わる。
多くの人がやってしまう動きです。
そして初回決算の前日、冒頭の書き込みが出ます。
「信託報酬に見合っているのだろうか」。
もちろん、前向きな声もあります。
「半導体やAIは次の技術が出てくるまでは成長する分野だと信じています」。
「ポテンシャルが高いから今の内に買い足ししたい」。
前向きな声の中身は、新興国というより、半導体とAIです。
分配金5円は少ない?
初回の分配金5円に、戸惑った書き込みもありました。
1万口あたり5円なので、100万円分持っていても500円ほどです。
このファンドは、もともと分配金をほとんど出さない作りです。
投資先の海外のファンドは「原則として分配を行なわない」と目論見書に書かれています。
分配金を生活費に回したい人には、向いていません。
「償還されない?」の心配は、今はいらない
お金の流入は、8月から横ばいです。
4〜7月で口数(ファンドの持ち分の数)が約1.8倍に増えたあと、8月以降はほとんど増えていません。
ただ、償還(運用の打ち切り)の心配は、当面いりません。
目論見書の条件は「口数が30億口を下回った場合など」で、今の口数は約1,900億口。
条件の60倍以上あります。
ノムラ・エマージング・オープンは持ち続けるべきか|損をしていても、市場平均へ乗り換える
僕の答えは、乗り換えるです。
最高値の近くで買って2割の含み損を抱えている人も、です。
判断の問いは1つだけ。
「この商品を、今日の基準価額で、もう一度新しく買うか」。
買わないなら、持ち続ける理由も同じだけ弱い。
すでに払った購入時の3.3%は、売っても持っていても戻ってきません。
戻ってこないお金を理由に、これから毎年1.7%を払い続ける必要はない。
売り方は、口座で変わります。
- 課税口座(特定口座)で含み損:売っても税金はかかりません。損は、ほかの利益と相殺できます
- 課税口座で含み益:税金は売るときに一度だけ。コストの差は、持っているかぎり毎年かかります
- NISAの成長投資枠:売った分の枠は、翌年に復活します
- どの口座でも:同じ窓口で、別の商品に乗り換えないこと。窓口の収入は、手数料の高い商品を売るほど増える仕組みだからです
乗り換え先は、市場平均と言える、十分に分散が効いたインデックスファンドです。
オルカン(全世界株式)なら、冒頭で見たとおり、新興国はすでに約12%入っています。
TSMCも、サムスン電子も、SKハイニックスも、時価総額の大きさに合わせて入っている。
👉 新興国が伸びれば、その分だけオルカンの中の新興国も大きくなります。新興国だけを別に買わなくても、取り残されることはありません。
それでも新興国を厚めに持ちたいなら、選ぶのはeMAXIS Slim 新興国株式のような指数型です。
ただ、それは「分散を増やす」ことではありません。
世界の中で新興国に傾ける、という選択です。
そう分かったうえで持つなら、止めはしません。
これから勧められている人へ
まだ買っていないなら、勧められたときに、この3つを聞いてみてください。
- 設定から半年、手数料を払ったあとで、新興国の指数に勝っていますか
- 指数より、どの国のどんな会社に寄せていますか
- 同じ新興国を、指数型のファンドならコストはいくらですか
答えは、この記事に全部書きました。
半年の成績は指数とほぼ同じ。
寄せている先は、韓国の半導体メモリ。
指数型なら、毎年のコストは約11分の1です。
まとめ|新興国のアクティブファンドを勧められたら、3つの問い
これからも、「プロが選ぶ新興国」のファンドは出てきます。
そのたびにレビューを探さなくて済むように、この記事の中身を3つの問いにして渡します。
- 手数料を払ったあとで、参考指数に勝っているか——ノムラ・エマージング・オープンは、半年で指数ファンドとほぼ同じ
- 指数より、何に寄せているか——韓国のメモリ株と、その筆頭株主。だから揺れは指数より大きい
- 同じ地域を、指数型ならいくらで持てるか——購入時0円・毎年約0.15%。オルカンなら、新興国はすでに約12%入っている
アクティブファンドが長く指数に勝ち続けるのは、プロでも難しいことです。
その話は、同じ野村の日本株ファンドを検証した記事で詳しく書きました。
→ 野村構造変化日本株ファンドの評判は?|中身と、コスト3.3%+1.573%を検証
ファンドの名前ではなく、参考指数との差と、寄せている先と、コストで選ぶ。ノムラ・エマージング・オープンから持ち帰ってほしいのは、その1つです。
【本記事の注記】
基準価額・純資産・分配金は投資信託協会と野村アセットマネジメントの公表値(2026年10月19日まで)、中身は野村アセットマネジメントの月次レポート(2026年9月末)、指数の構成はMSCIの公式ファクトシート(2026年9月末)から。
eMAXIS Slim 新興国株式インデックスの信託報酬は三菱UFJアセットマネジメントの交付目論見書から。
成績・揺れ・下落率は、基準価額から筆者が計算しました。
過去の値動きで、将来の成績を示すものではありません。
📚 「新興国も、オルカン1本でいい」に迷わなくなる1冊
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アクティブファンドを勧められるたびに、「今度こそ指数に勝つかもしれない」と迷いが生まれます。
世界の株をまるごと持つことがなぜ合理的なのかを、オルカンの仕組みからたどれる本です。
著者は、eMAXIS Slimシリーズを生んだ代田秀雄さん。新興国を別に足さなくていい理由を、作り手の言葉で確かめられます。
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本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資・保険の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。
