投資信託の「繰上償還」とは?安心して持ち続けられるファンドの見分け方

投資信託を積み立てていると、ふとこんな不安がよぎることはないでしょうか。

「このファンド、20年も30年も持ち続けて大丈夫なんだろうか」
「もし途中で運用が終わってしまったら、僕のお金はどうなるんだろう」

実は、投資信託は”ある日突然なくなる”ことがあります。

「繰上償還(くりあげしょうかん)」と呼ばれる仕組みです。

長期で積み立てる前提のインデックス投資にとって、これは地味ですが見過ごせないリスクです。

この記事では、繰上償還とは何か・されると何が起きるのか・そして「安心して持ち続けられるファンドかどうか」を自分で見分ける判断要素を、順番に整理していきます。

👉 先に結論を言うと、安心して持ち続けられるかどうかは、ほぼ「純資産規模」で決まります。そして同じ指数に連動する商品なら、後発の格安ファンドより、規模で勝っている最大手を選ぶのが正解です。

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目次

投資信託の「繰上償還」とは──積立が、ある日強制終了される

投資信託には「信託期間」という、いわば”運用の期限”が設定されています。

最近のインデックスファンドは「無期限」のものが主流ですが、期限が決まっている商品もありますし、無期限であっても、一定の条件を満たすと期限を待たずに運用を打ち切ることがあります。

これが繰上償還です。

ポイントは、繰上償還は僕たち受益者(ファンドを買っている人)の意思とは関係なく決まるという点です。

「まだ持っていたい」と思っていても、運用会社が「この先このファンドを続けるのは難しい」と判断すれば、運用は終了します。

そして運用が終わると、その時点の基準価額で清算され、保有していた口数に応じたお金が現金で戻ってきます。

一見「お金は返ってくるんだから問題ないのでは」と思えますが、ここに落とし穴があります。

繰上償還されると、具体的に何が起きるのか

繰上償還は「お金が返ってくる」だけのイベントではありません。

長期投資家にとっては、次の3つのダメージがあります。

① 自分の意図しないタイミングでの強制現金化

繰上償還は「売りたくないのに売らされる」のと同じです。

もしそのタイミングが下落局面だったら、本来なら「待っていれば戻る」場面でも、含み損が確定してしまいます。

長期投資の最大の武器は「狼狽売りせず持ち続けること」なのに、その選択肢そのものを奪われるわけです。

② 複利が途切れ、課税口座なら税金まで取られる

戻ってきた現金は、自分で別のファンドに入れ直さなければ運用が再開しません。

その間は機会損失になります。

さらに課税口座(特定口座など)で持っていた場合、含み益があれば繰上償還のタイミングで利益が確定し、約20%(20.315%)が税金として引かれます

本来なら売らずに非課税のまま雪だるま式に増やせたはずの含み益が、強制的に税金で目減りするわけです。

これが「複利の流れが一度リセットされる」ことの正体で、次に買い直すファンドは、税引き後に減った元手からの再スタートになります。

③ NISA口座なら「非課税枠」を余計に食う

ここが意外と知られていません。

NISA口座で保有していたファンドが繰上償還されても、その時点の利益は非課税です。

問題はそのあと。

戻ってきたお金を再びNISAで買い直すと、元本だけでなく、値上がりした利益分まで「新しい投資元本(取得価額)」として非課税枠を消費します

つまり利益が出ているファンドほど、再投資で食われる枠が大きくなる。

売却した分の枠自体は翌年に復活しますが、「利益を乗せた金額で枠を埋め直す」ことになるため、長く非課税で寝かせるつもりだった枠を、想定より早く・大きく削られてしまうのです。

👉 繰上償還は「お金が返ってくる」だけのイベントではなく、複利・タイミング・非課税枠の3つを同時に削る、長期投資家にとって地味に痛いイベントです。

なぜ繰上償還は起きるのか──純資産が痩せた投信は「廃線」になる

では、どんなファンドが繰上償還されるのか。

ここを理解するために、路線バスを思い浮かべてみてください。

路線バスは、乗客がたくさん乗っていれば運賃収入で黒字になり、ずっと走り続けます。

でも乗客が減って赤字が続けば、どんなに地域に必要とされていても、いずれ「廃線」になります。

バス会社も慈善事業ではないからです。

投資信託もこれと同じ構造です。

  • 乗客 = 受益者(ファンドを買っている人)
  • 運賃収入 = 信託報酬(純資産に対して毎日かかる手数料)
  • 赤字路線の廃止 = 繰上償還

ファンドの収入源は、純資産総額に対してかかる信託報酬です。

純資産が大きければ、低い料率でも十分な収入になります。

逆に純資産が痩せ細ると、運用会社の取り分が減り、採算が合わなくなります。

多くのファンドには「受益権口数が一定の本数を下回ったら繰上償還できる」という条項があり、これが”廃線の引き金”になります。

ここで、規模の経済がどう効くのかを直感的に言い換えてみます。

ファンドの運用というのは、扱う資金が多くても少なくても、やること自体は大して変わりません。同じ指数に連動させるだけなら、変わるのは扱う数字の桁くらいです。

だとすれば、少ない純資産で運用しているファンドほど、同じ仕事のコストを少ない資産で負担することになり、率としてのコストは上がりやすい。

採算が悪化し、いずれ廃線リスクが高まる──この流れは、想像してみればごく自然なことだと思います。

実際、過去には「PayPay投信」シリーズが繰上償還されています。

「名前を聞いたことのある会社のファンドでも起こり得る」という証拠です。

「安心して持ち続けられるファンド」を見分ける判断要素

では、長期で安心して握り続けられるファンドかどうかを、どこで見極めればいいのか。

チェックすべきは次の6点です。

① 純資産総額の規模

最も重要な指標です。

純資産が大きいほど採算に余裕があり、繰上償還リスクは下がります。

② 受益権口数(純資産)のトレンド

規模そのものより大事なのが「増えているか・減っているか」です。

今は規模があっても、口数が減り続けているファンドは”乗客が減っている路線バス”です。

月次レポートで右肩上がりかを確認します。

③ 信託期間が「無期限」か

期限が区切られている商品より、無期限のほうが長期保有との相性は良いです。

④ 繰上償還条項の中身

目論見書に「受益権口数が◯口を下回ったら繰上償還できる」といった条件が書かれています。

条項そのものは多くのファンドにありますが、現状の口数がそのラインから十分離れているかを見ます。

⑤ 運用会社・販売網の体力

同じ指数連動でも、大手で販売チャネルが広いファンドはお金が集まりやすく、規模を維持しやすい。

逆に、聞いたことのない運用会社の商品は、そもそも「誰が買い支えるのか」という不安が残ります。

⑥ 基準価額の水準

極端に基準価額が低いファンドは、設定来のパフォーマンスや資金流出を映している場合があり、純資産の細りと合わせて黄信号になることがあります。

数字で見る”安全圏”の目安

「結局、いくらあれば安心なの?」という疑問に、ざっくりした目安を置いておきます。

あくまで一般論ですが、判断の出発点にはなります。

一般的には、繰上償還リスクを避けたいなら純資産総額が数十億円を下回るファンドは警戒したほうがいいと言われています。

特に純資産が50億円に届かず、かつ口数が減少傾向にある場合は注意です。

逆に、主要なインデックスファンドの最大手クラスは数千億円〜兆円規模に達しており、この水準なら繰上償還を現実的に心配する必要はまずありません。

なお僕自身は、オルカンS&P500NASDAQ100については保有するファンドの絞り込みが済んでいて、いずれも十分な純資産規模の商品を選んでいます。

なので、正直なところ日々この物差しを当てる必要はもうありません。

ただ、これから商品を選ぶ人にとっては、この「規模で安心を測る」感覚を持っておくだけで、地雷を踏む確率はぐっと下がります。

なぜ”後発の安い新ファンド”は構造的に勝てないのか──楽天プラスだけが例外だった理由

ここからが、この記事で一番伝えたいことです。

同じ指数に連動するファンドは、原則として規模で勝っている商品を選ぶのが正解です。

これは前章までの「繰上償還リスク」と裏表の関係にあります。

規模が大きいファンドは、信託報酬を下げる体力があり、繰上償還の心配もなく、さらに資金が集まることでもっと規模が大きくなる──いわば雪だるま式に強くなります。

一方、後から登場した格安ファンドは、信託報酬の安さで目を引いても、規模が小さいうちは廃線リスクを抱え、その規模を逆転するのは構造的にかなり困難です。

ここで一つ、はっきり注意してほしい罠があります。

これは過去の抽象論ではありません。

たとえばブラックロック・ジャパンの「つみたてiシェアーズ 米国株式(S&P500)インデックス・ファンド」(2023年11月設定)は、当初の信託報酬を年0.02860%という最安級に設定して資金を集めましたが、2026年5月から年0.06072%へ引き上げられています。

信託報酬の数字だけを見れば、同社が以前から運用している老舗の「iシェアーズ 米国株式(S&P500)インデックス・ファンド」(信託報酬 年0.06380%)より安く見える。

ところが、隠れコストまで含めた実質的な総コストで比べると、新しいほうが老舗を上回ってしまうのです。

「料率が安い」という看板につられて飛びつくと、いちばん損な選択になりかねません。

料率の表面だけでなく、隠れコストを含む実質コストと、引き上げ予定の有無まで確認する必要があります。

信託報酬と実質コストはどう違い、その差が30年でどれほど効いてくるのかはこちらで整理しています。

「投資信託の隠れコストとは?信託報酬では見えない実質コストの中身と見方」

さらに言えば、世の中には「一体これは誰が買っているんだろう」と疑問に思うレベルの、無名運用会社のファンドも存在します。

それでも多少は買われている。

おそらく営業力で売られているのでしょう。

運用会社や販売会社が何を考えてその商品を出し、どう売ろうとしているのか──その動きを一度想像してみると、「安いから」だけで選ぶことの危うさが見えてきます。

では、後発はすべてダメなのか。

例外が一つあります。楽天・プラスシリーズです。

楽天プラスは後発でありながら、業界最安水準のコストと十分な規模を両立させました。

理由は明快で、国内最大級のユーザーを抱える楽天証券でしか買えず、さらに楽天ポイントという強力な囲い込みの仕組みがあるから。

つまり「最大手の販売網×ポイント経済圏」という、他社が簡単には真似できない構造的な優位を持っていたわけです。

これは、純粋な後発の格安ファンドが規模で勝ち組に入った、極めて珍しいケースです。

正直に打ち明けると、僕自身はこの楽天プラスを主力にしています。

コストはポイントを含めても、おそらくeMAXIS Slimを逆転できる見込みは小さい。

ポイント制度もいつ廃止されるか分かりません。

それでも選んでいるのは、メインの証券口座が楽天であること、少し応援の意味もあること、そして「楽天グループが儲かれば、ユーザーである自分にも巡り巡って還元される」と納得できること。

個人の一票なんてほとんど影響しないのは分かっていますが、自分がそれで納得して長期保有できるという、自己分析込みの選択です。

ここで、「規模で勝っている最大手を選ぶ」=「ファンド選びはみんなと同じが正解」という話に、大事な但し書きを付けます。

ここで言う”みんな”とは、長年かけて資金が積み上がった最大手のことです。

今まさに話題で盛り上がり、みんなが飛びついている新規ファンドに「乗り遅れる」と感じて自分も買う、というのは真逆なので注意してください。

それは規模で選んでいるのではなく、ただ流行に乗っているだけ。

新しくて話題、というだけのファンドは、まだ規模も実績も積み上がっていません。

👉 「横並びが正解」の”横並び”は、流行ではなく実績。話題の新顔ではなく、長く買われ続けてきた最大手に並ぶ、という意味です。

そして最後に、自分でも少し可笑しいなと思う矛盾を一つ。

こうしてブログで発信する活動は、「差別化」こそが命です。

人と同じことを書いても誰も読んでくれません。

でも、ことファンド選びに関してだけは、「みんなと同じ」が大正解。

差別化を追い求めて格安の後発に手を出すより、おもしろみがなくても最大手に並んでおくほうが、長期では報われます。

投資家のジョージ・ソロスは、こんな言葉を残しています。

投資が面白くて仕方ないなら、たぶん大して儲かっていない。良い投資とは、退屈なものだ。
(If investing is entertaining, if you’re having fun, you’re probably not making any money. Good investing is boring.)

ファンド選びに刺激や手柄を求めた瞬間、たいてい道を外します。

もし投資を「楽しい」と感じているなら、それは危険なサインかもしれません。

発信では差別化を、投資では退屈な横並びを──この使い分けを、僕は受け入れることにしています。

まとめ:結局、どう選んで持ち続けるか

「指数で決まり、商品で差がつく」というファンド選びの全体像はこちらで整理しています。

本記事の「規模で選ぶ」は、その”商品で差がつく”部分の核心です。

投資信託の選び方|結局どれを選べばいい?

最後に、行動に落とせる形で整理します。

  • 繰上償還は、複利・売却タイミング・NISA枠を同時に削る、地味に痛いイベント。長期投資家ほど避けたい
  • 繰上償還が起きるかどうかは、純資産規模とその増減トレンドでほぼ決まる。痩せた投信は”廃線”になる
  • だから同じ指数に連動するファンドは、料率の安さだけで選ばず、規模で勝っている最大手を選ぶのが正解
  • 後発の格安ファンドが規模で勝つのは構造的に困難。楽天プラスは「最大手の販売網×ポイント」という例外的な強みで勝ち組に入った珍しいケース
  • ただし「横並びが正解」の意味を取り違えない。話題の新規ファンドに乗り遅れ感で飛びつくのは真逆

👉 結局のところ、「安いから」でも「話題だから」でもなく、「規模が大きくて、増え続けているから」でファンドを選ぶ。これが、何があっても握り続けられるファンドを選ぶ、いちばん確実な物差しです。

積み立てるファンドさえ間違えなければ、あとは淡々と続けるだけ。

繰上償還に怯えることなく、安心して持ち続けられる──そんな土台を、最初の商品選びで作っておきましょう。

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本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資・保険の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。

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この記事を書いた人

ファイナンシャルプランナー(FP技能士)|東証プライム上場企業の会社員。
40代から資産形成に本気で取り組み、1年で純資産1000万円増を達成。
「今さら遅いかも…」と不安な方へ、データと実体験に基づく合理的な資産形成を発信しています。

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