オルカンを1本、毎月積み立てている。
でも、これだけで本当に分散できているのか。
S&P500やNASDAQ100も足したほうが安全なのでは——積立を続けていると、一度はこう考えます。
僕も口座ごとに違う指数を持っているので、この迷いはよくわかります。
ただ、答えはシンプル。
時価総額加重のインデックスを1本持った時点で、株式の分散はもう十分に効いています。
理由は、銘柄を増やしたときのリスクの下がり方に「頭打ち」があるから。
足し算を続けても、ある地点から先はほとんど何も変わりません。
- 分散投資でリスクが下がる仕組み(相関)
- 何銘柄でリスクの下がり方が頭打ちになるのか
- いくら分散しても残る「システマチックリスク」と、暴落との関係
- オルカンに別の指数を足すと、実際に何が起きるのか
分散投資でリスクが下がるのは「相関」があるから
分散投資の効果は、気分の問題ではありません。
数学で説明できます。
鍵になるのは相関です。
値動きが完全には揃っていない銘柄を組み合わせると、片方が下がったときに、もう片方が支える場面が出てきます。
全員が同じ日に同じ方向へ動くわけではない。
だからポートフォリオ全体の振れ幅(=リスク、標準偏差)は、1銘柄ずつの振れ幅を平均したものより小さくなります。
ここで、この記事が扱う「分散」の範囲を先に決めておきます。
扱うのは、株式の中での銘柄分散です。
A社・B社・C社……と、値動きの違う多数の株を持つこと。
株に債券や金を混ぜる「資産の分散」も、全体の振れ幅は下げます。
ただし、リターンも一緒に下がる。
個人がリスクの大きさを調整するなら、運用資金の中の株式と現金の割合で足ります。
この話はバランスファンドの記事で詳しく扱いました。
→ バランスファンドは意味ない?|手数料で買っているのは「分散」ではなく「配分を決めない権利」
なお、分散のうまさは「リターンを大きく削らずに、振れ幅だけを落とせる」点にあります。
では、銘柄を足せば足すほど、振れ幅は落ち続けるのでしょうか。
分散投資は何銘柄で十分? 理論上は約30銘柄で頭打ち
答えはノーです。
下がるのは途中まで。
最初の数銘柄を足すときの効果は大きい。
1銘柄から10銘柄に増やすと、リスクはぐっと下がります。
ところが20〜30銘柄あたりで、カーブはほとんど水平になります。
その先は50銘柄でも100銘柄でも、リスクはほぼ同じ。
「分散で消せるリスク」は20〜30銘柄程度でほぼ消しきってしまう、というのが古くからの研究の大まかな結論です。
実際の指数で確かめます。
代表的なインデックスのリスク(年率標準偏差・円ベース・過去20年)を並べました。
| 指数 | おおよその銘柄数 | リスク(20年) |
|---|---|---|
| 全世界株式(オルカン/MSCI ACWI) | 約2,900 | 18.6% |
| S&P500 | 約500 | 18.4% |
| NASDAQ100 | 約100 | 21.5% |
※myINDEX掲載値(2026年9月末・円ベース・年率)。NASDAQ100のみ配当を含まない指数の値。
見てほしいのは2つの対比です。
① S&P500とオルカン
銘柄数は約500から約2,900へ、6倍近くに増えています。
それでもリスクは18.4%と18.6%でほぼ同じ。
銘柄を大きく増やしても、リスクはもう動かない。
これが「頭打ち」の正体です。
② S&P500とNASDAQ100
こちらは逆に、銘柄数が約500から約100へ減り、しかもハイテクに偏っています。
するとリスクは18.4%から21.5%へ、はっきり上がる。
分散が足りない・偏っていると、リスクは目に見えて増えます。
十分に分散された段階では、足しても変わらない(①)。
分散が崩れた段階では、差がはっきり出る(②)。
2つを並べると、逓減カーブの意味が腹落ちします。
NASDAQ100のように銘柄を絞った指数を比べたい人は、具体的なファンドまで踏み込んだこちらへ。
30銘柄を超えても残る「システマチックリスク」と暴落
カーブが水平になった先にも、ゼロにならない部分が残ります。
これがシステマチックリスク(市場リスク)です。
リスクには2種類あります。
- 分散で消せるリスク:その会社だけの事情(不祥事・業績悪化・倒産など)。他の銘柄を持てば薄められる
- 分散で消せないリスク:景気後退・金利・戦争・パンデミックなど、市場全体を一斉に動かす要因。何銘柄持っていても逃げられない
30銘柄を超えると、1つ目のリスクはほぼ消えています。
そこから先、土台としてどうしても残るのが2つ目。
銘柄をいくら足しても、この土台は削れません。
では、暴落はどちらのリスクから起きるのでしょうか。
「暴落」を、仮に20%の下落と決めてみます。
すると、システマチックリスクがなくても暴落は起こります。
個別株なら、決算1回で20%下がることは珍しくありません。
数銘柄に偏ったポートフォリオなら、その会社たちの事情だけで全体が20%沈むこともある。
これは、分散していれば消せたはずの暴落です。
一方、市場をまるごと持っている人に来る暴落は、土台そのものが動いたとき。
リーマン・ショックやコロナ・ショックのように、景気や金融の不安が市場全体を一度に押し下げる場面です。
このとき「分散していたのに下がった」と感じるかもしれません。
でもそれは、分散の失敗ではありません。
分散で消せる部分はもう消してあって、残っているのは最初から引き受けている土台だけ。
そして株式のリターンは、この土台を引き受ける見返りとして払われています。
👉 分散で消せる暴落は、先に消しておく。消せない暴落は、リターンの代金として引き受ける。
それでも振れ幅が怖いなら、動かすのは銘柄ではなく、運用資金の中の株式と現金の割合です。
自分がどこまで耐えられるかの見つけ方は、こちらで整理しています。
分散投資の数学だけでは割り切れない「倒産」というリスク
ここまでは標準偏差の話でした。
標準偏差で測れば、約30銘柄でリスクの下がり方は頭打ちになる。
これは事実です。
ただ、標準偏差では捉えきれないリスクがあります。
個別株の倒産、つまり価値がゼロになる出来事です。
日々の値動きの振れ幅とは別物。
30銘柄を等金額で持っていて、そのうち1社が倒産したとします。
ポートフォリオは一気に約3.3%(30分の1)失われます。
500銘柄なら、同じ1社の倒産で失うのは約0.2%(500分の1)。
同じ出来事でも、衝撃の桁が違います。
| 等金額で保有する銘柄数 | 1社が倒産した場合の損失 |
|---|---|
| 30銘柄 | 約 3.3% |
| 500銘柄 | 約 0.2% |
2010年、日本航空(JAL)が経営破綻しました。
当時の日本を代表する大企業の一つです。
「この会社が潰れるはずがない」と思われていた銘柄でも、株の価値はゼロ近くまで失われることがある。
その実例です。
数学的には、「30銘柄のうち1社が消えても、1社足せば元の分散水準に戻る」と言えます。
でも、実際に持っていた1社がゼロになる衝撃は、平均値の話とは別の重さを持ちます。
だから僕は、標準偏差の理屈だけで「30銘柄で十分」とは言い切りません。
数学的には30で頭打ち。
それでも実務では、もっと広く持っておく。
これが、僕の線の引き方です。
そしてここに、時価総額加重インデックスの強さがあります。
構成銘柄が脱落すれば自動で入れ替わり、比率も時価総額に合わせて調整され続ける。
1社の倒産で全体が崩れない仕組みが、最初から組み込まれています。
だから、インデックス1本で分散投資は十分
👉 オルカンやS&P500のような時価総額加重インデックスを1本持てば、銘柄分散はもう十分に効いている。
何百銘柄を自分で選んで組み合わせる必要はありません。
市場をまるごと買うことは、相関の構造ごと分散を手に入れることと同じだからです。
残る問いは、その1本を「世界まるごと(オルカン)」にするか、「米国まるごと(S&P500)」にするか。
これは分散の優劣ではなく、何を信じるかの違いです。
分散が1本で片付くなら、ファンド選びで差がつくのは別の場所。
毎年確実に引かれるコストです。
「長期・分散」の次に来るはずの3つ目の原則は、こちらで書きました。
→ 「長期・積立・分散」に感じる違和感|投資の3原則から消えた「低コスト」
オルカンにもう1本足しても「分散」にはならない
「もっと分散しよう」と考えて、指数を足す人がいます。
オルカンにS&P500、S&P500にNASDAQ100、といった組み合わせです。
ただ、これは分散ではありません。
別々の指数でも、中身は大きく重なっています。
オルカンの中身はすでに半分以上が米国株で、組入上位にはS&P500と同じ米国の大型株が並びます。
オルカンにS&P500を足しても、銘柄はほとんど増えない。
増えるのは、米国への比率だけです。
S&P500にNASDAQ100を足した場合も同じ。
ハイテク大型株が二重に乗り、時価総額どおりのバランスが崩れます。
結果は、特定の国・業種・銘柄への傾き。
指数を足す意味は、リスクを下げる「分散」ではなく、リターンを狙ってどこかに賭ける「傾斜」です。
この切り分けは、こちらで詳しく整理しています。
念のため、複数の指数を持つこと自体は否定しません。
僕自身、口座ごとに違う指数を持っています。
NISAはS&P500中心、特定口座はオルカン中心、妻のiDeCoはNASDAQ100。
リターンを狙って、あるいは口座ごとのリスク許容度に合わせて傾けるのは、個人の自由です。
大事なのは、それが「分散」ではなく「傾斜」だと分かった上で持つこと。
僕が口座ごとの配分をどう決めたかは、こちらに書いています。
▼ 口座ごとのポートフォリオの決め方を知りたい人へ

まとめ:分散投資は「足す」ものではない
- 分散でリスクが下がるのは、相関の効果。数学で説明できる
- ただし下がるのは途中まで。約30銘柄で頭打ちになる
- その先に残るのがシステマチックリスク。暴落の土台でもあり、リターンの源泉でもある
- 標準偏差では測れない「倒産」を考えると、実務ではもっと広く持ちたい
- 時価総額加重インデックスは、その広さと入れ替えを最初から内蔵している
👉 分散は「足す」ものではない。市場をまるごと持った時点で、相関を踏まえた最適な分散はもう効いている。
明日できることを1つだけ。
2本以上の投資信託を持っているなら、それぞれの月次レポートで「組入上位10銘柄」を並べてみてください。
半分以上かぶっていたら、それは分散ではなく傾斜。
傾斜と分かって持つなら、それでいい。
分散の話は突き詰めると、「何を買うか」より前の「どういう順番で考えるか」に行き着きます。
投資全体の順番を一度整理したい人はこちらへ。
そこから先に必要なのは、銘柄を足すことではありません。
持ち続けられる比率を、自分で決めることです。
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本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資・保険の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。
