NISAに債券は入れるべき?「債券で守る」をNISA口座でやってはいけない2つの理由

2027年から、NISAのつみたて投資枠でも「債券中心・バランス型の投資信託」が買えるようになる予定です。

これを受けて、「これからはNISAでも”守り”を固められる」「株式だけじゃなく債券も非課税で持てる」という声をよく見かけるようになりました。

でも、ちょっと待ってください。

この記事でお伝えしたいのは、商品の良し悪しではありません。「債券で守る」という発想そのものを、NISAという器の中に持ち込んではいけない、という話です。

そもそも投資は「攻め」と「守り」で考えるものではありません。自分にとって必要なリスクを、トータルで設計するもの。

その設計の結果、仮に債券的なものが必要だとしても、それをNISAの中で持つのは2つの意味で合理的ではないのです。

👉 NISAに債券を入れない。リスクを下げる調整は、非課税の枠ではなく現金(無リスク資産)で設計する。 この記事を読み終えると、「債券入り投信が解禁されたから自分も…」という迷いが消えます。

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目次

2027年から、NISAに「債券入り投信」が入ってくる

まず事実関係を最小限だけ整理します。

これまでNISAのつみたて投資枠は、長期・分散・低コストの株式インデックスファンドが中心でした。

2025年12月にまとまった令和8年度(2026年度)の税制改正大綱では、対象となる投資信託の要件が「主に株式に投資するもの」から「主に株式又は公社債に投資するもの」へと広がり、債券中心・バランス型の投資信託もつみたて投資枠で選べるようになる方針が示されました。

ポイントは、これは「2025年末に決まった話」であって、実際に買えるようになるのは制度整備を経た2027年からだという点です。「2026年からもう買える」と先走らないでください。

狙いとして示されているのは、「リスク許容度が高くない若年層や高齢層などが投資の第一歩を踏み出せるよう、債券中心あるいはバランス型の投資信託の選択肢を充実させる」こと。

つまり「値動きが怖い人でも始めやすいように」という配慮です。

(※出典:金融庁「令和8年度税制改正について」2025年12月。具体的な対象商品・施行時期は今後の制度設計次第です。最新は必ず金融庁・各証券会社の公式情報で確認してください)

背景には、ここ数年で金利が大きく動いたことがあります。

日本の金利も、マイナス金利時代から見れば明らかに上がってきました。

「金利が戻ってきたなら、債券にも妙味があるのでは」という空気が、こうした制度変更を後押ししている面があります。

金利が上がると、なぜ債券が話題になるのか。その仕組みは金利と景気の関係を理解すると一気に腑に落ちます。

金利がわかると投資の景色が変わる|景気サイクルの読み方

ただ、「制度で買えるようになった」ことと「NISAで持つべき」ことは、まったく別の話です。

次の章から、その理由を分解していきます。

「株式=攻め、債券=守り」という分け方を、まず捨てる

世の中では、株式を「攻め」、債券を「守り」と説明することがよくあります。

僕自身、過去にこの言い方をしたこともあります。

でも、これは本質的に正しくありません。

投資でやっていることは、攻めでも守りでもなく、「必要なリスクをとる」という一点に尽きます。

リスクはとりすぎてもいけないし、とらなさすぎてもいけない。

自分が引き受けるべきリスクの総量を決めて、それをトータルで設計する。これが資産運用の本当の姿です。

なお、ここで言う「リスク」とは”危険”という意味ではなく、価格がどれだけ上下に振れるか=”振れ幅”のことです。この前提がないと「リスクの総量」という言葉がつかみにくいので、まず押さえておくと、この先がぐっと読みやすくなります。

投資の「リスク」とは標準偏差|”危険”ではなく”振れ幅”のこと

ではリスクの総量はどう調整するのか。答えはシンプルで、「リスク資産(株式)にいくらの金額を配分するか」で調整します。

  • リスクをとりたければ、リスク資産(株式)に回す金額を増やす
  • リスクを抑えたければ、リスク資産に回す金額を減らし、その分を無リスク資産(現金)に置く

リスク量は「株か債券か」という商品の組み合わせではなく、「リスク資産にいくら入れるか=金額」で決まる。これが設計の幹です。

👉 必要なリスクは、商品の種類ではなく”金額”で設計する。 株式100万円+現金100万円の人と、株式50万円+現金150万円の人の違いは、「攻め方」ではなく「引き受けたリスクの総量」の違いです。

ちなみに、この考え方は僕が勝手に言っているわけではありません。

経済評論家の山崎元さんが繰り返し説いてきた「リスク資産/無リスク資産」という整理(分離定理)とまったく同じです。

山崎さんも、株式を「攻め」、債券を「守り」とは表現しません。

個人の運用で変えるのは配分の中身ではなく、リスク資産に振り向ける金額の大小だけ──という立場です。

「攻め/守り」という言葉は耳なじみがいい分、判断を曇らせます。まずここを捨てるところから始めます。

【理由①】非課税の枠に、低リターンの債券を入れるのはもったいない

ここからが本題です。仮にあなたの設計上、債券的なもの(あるいは現金より少し利回りのあるもの)が必要だったとします。

それでも、それをNISA口座の中に入れるのは合理的ではありません。理由は2つあります。まず1つ目。

NISAは「運用で得た利益に税金がかからない」という、たった一つの強烈なメリットを持つ器です。

逆に言えば、期待リターンが高い(=値動きの大きい)資産に使うほど、非課税で得られるメリットは大きくなります

数字で見ると一目瞭然です。仮に成長投資枠で240万円を投じて、30年間運用したとします(年利は単純化のための仮定)。

入れる資産想定年利30年後の評価額非課税になる利益
株式インデックス5%約1,037万円約797万円
債券(個人向け国債10年並み)1.74%約403万円約163万円

同じ「非課税枠1単位」を使うのに、守られる利益が約797万円 vs 約163万円。差は歴然です。

非課税という最強の武器は、いちばんよく効く場所=期待リターンの高いリスク資産に使ってこそ意味があります。

低リターンの債券に枠を割くのは、「最強の武器を、いちばん効かない的に向けて撃つ」ようなもの。枠がもったいないのです。

👉 NISAの非課税は、期待リターンが高い資産ほど価値が出る。低リターンの債券に枠を使うのは、武器の無駄づかい。

【理由②】バランスファンドで債券を持つと、低コストの原則に反する

そして2つ目。こちらのほうが、より無駄が大きいと僕は考えています。

2027年に解禁される予定なのは「債券入りのバランス型投資信託」です。

つまり、株式と債券が最初から1本にパッケージされた商品。これを買うと、何が起きるか。

債券部分にまで、毎年の信託報酬(保有コスト)を払い続けることになります。

具体例で見てみます。代表的な債券入りバランスファンドに「楽天・インデックス・バランス(均等型)」があります。

中身は全世界株式50%+全世界債券50%で、信託報酬は年0.132%(税込・実質コストはもう少し上)。

ここで、「株50%:債50%」という同じ配分を、①バランスファンド1本で作る場合と、②株式ファンド+個人向け国債を別々に買って作る場合を比べます。仮に株500万円・債500万円とします。

作り方株式部分のコスト債券部分のコスト年間コスト合計
①バランスファンド1本(0.132%が全体にかかる)0.132%=約6,600円約13,200円
②オルカン+個人向け国債(別々)0.05775%=約2,888円0円(保有コストなし)約2,888円

同じ「株50:債50」なのに、年間コストが約1.3万円 vs 約0.3万円。差は年1万円。

30年なら単純累計で30万円以上、その分を運用に乗せ続ければ差はもっと開きます。

しかも、減っているのはコストだけではありません。

  • バランスファンドの中の債券は、外国債券や社債を含みます。為替リスク・信用リスクを負っているのに、それに対して毎年コストを払っている
  • 一方、個人向け国債(変動10年)なら為替リスクはゼロ社債よりデフォルトの可能性も低い、そして保有コストもゼロ

つまり、「債券を持ちたい」なら、バランスファンドという箱に入れて毎年手数料を払うのではなく、株式ファンドと個人向け国債を別々に持てばいい。同じ目的を、より安く・より安全に達成できます。

👉 同じ”株50債50″なら、バランスファンド1本より、株式ファンド+国債を別々に持つほうが安くて安全。バランスファンドは低コストの原則に反する。

リスクを抑えたいなら「現金」で。個人向け国債変動10年はアリ

ここまで読んで、「じゃあリスクを抑えたいときはどうすれば?」と思った方へ。

答えは最初に書いた通りです。リスクを下げる調整は、非課税の枠ではなく、無リスク資産=現金で行います。

その「現金の置き場」として、個人向け国債(変動10年)は十分アリな選択肢です。理由は3つ。

  1. 為替リスクがない(日本国債なので、円で持つ僕たちには素直)
  2. 社債よりデフォルトの可能性が低い(発行体が日本国そのもの)
  3. 1年以上保有すれば元本割れしない(中途換金でき、最低金利0.05%が保証される)

しかも、ここ数年で金利が戻ってきたことで、個人向け国債変動10年の利率も上がってきました。

時期適用利率(変動10年・税引前)
マイナス金利時代0.05%(下限)
2024年3月0.47%
2024年10月0.57%
2025年4月0.93%
2026年1月1.39%
2026年6月募集1.74%

約2年で3倍以上。

利率は「基準金利×0.66(下限0.05%)」で半年ごとに見直されるため、金利上昇局面では追随して上がっていきます。

普通預金に寝かせておくより、ここに置くのは理にかなっています。

ここで、こう思った方もいるはずです。「でも、NISAの外で国債を持ったら、利子に税金がかかるよね?」と。

その通りで、NISA外の利子には約20%(20.315%)の税金がかかります。

利率1.74%なら、手取りはおよそ1.39%に目減りする計算です。

ただ、それでも国債はNISAの外で持つ方が得です。

ここで効いてくるのが理由①と同じ「枠は有限」という話。同じNISA枠を100万円ぶん、30年間使ったとき、非課税にできる利益を比べてみます。

  • 株式(年5%)に使えば…利益は約332万円
  • 国債(年1.74%)に使えば…利益は約68万円

同じ100万円の枠でも、非課税で守れる果実は約5倍違います。

枠を利益の大きい株式に使うほど、非課税のメリットは大きくなる。

逆に、利益の小さい国債に枠を使うのは、その差額をまるごと取りこぼすのと同じです。

👉 国債を外で持って利子に税金を払っても、それは”その枠を株式に使えること”に比べれば誤差です。 守りの資産はNISAの外で、税金を払ってでも現金として持つ。貴重な非課税枠は株式に空けておく——これが、トータルで一番得をする置き方です。

ただし、これはあくまで「現金(無リスク資産)の置き場」としての国債です。

NISAの中に入れるリスク資産ではありません。

生活防衛資金や、当面使う予定の現金の一部の置き場として考えるのが筋です。

生活防衛資金をいくら確保すべきか、その置き場の考え方はこちらで詳しく整理しています。

生活防衛資金はいくら必要?最低ラインの考え方

では、より保守的な設計が必要なのは誰か

ここまで「NISAに債券を入れるな」と一貫して書いてきました。

でも、「リスク資産に回す金額を抑える=保守的に設計する」こと自体が悪いわけではありません。

とらなさすぎもよくないのと同じで、とりすぎもよくない

問題は、その調整を”どこで”やるかです。

では、リスク資産の比率を抑えめにすべきなのはどんな人か。判断の軸は2つだと僕は考えます。

① ゴールまでの距離(その資金を運用できる期間)
近いうちに使うお金(住宅頭金・教育費のピークや老後生活が目前に迫っているなど)は、暴落から回復を待つ時間がありません。

値動きの大きい株式の比率は下げ、現金(無リスク資産)を厚くするのが合理的です。

逆に、20年・30年と動かさないお金なら、リスク資産の比率を高く保てます。

② 自分自身のリスク許容度
これは数字だけでは決まりません。

30%の含み損を見ても淡々と積み立てを続けられる人もいれば、10%下がっただけで夜眠れなくなる人もいます。

握力を超えるリスクは、結局どこかで投げ売りにつながるので、自分の心がもつ範囲に収めることも立派な設計です。

自分のリスク許容度をどう見極め、どう高めていくかはこちらで整理しています。

投資におけるリスク許容度とは?許容範囲の見つけ方と高める3つの方法

ひとつだけ、正直に例外を認めておく

「生涯投資枠(1,800万円)を、どうやっても使いきれない」と確定している人なら、同じ金額を運用する前提では、条件次第でバランスファンドが有利になることもあります。

枠が余るなら、債券をNISAに入れて利子を非課税にしても、株式の枠を奪わないからです。

ここは素直に認めます。

ただ、これに当てはまる人は驚くほど少ない。2つのふるいにかかるからです。

  • 運用期間が20年・30年と残っている人は、「枠を埋められない」ことが確定しません。 収入が増えたり、相場が下げて買い増したくなったりして、「もっと株式に枠を使いたい」と思う日が来るかもしれない。そのとき債券で枠を埋めていると、株式に振り替えるのにロスが出ます。先に債券を入れるのは、「将来も株式を増やさない」という、まだ確定していない賭けと同じです。
  • 逆に、運用期間が極端に短くて枠を埋めきれないと確定している人は、そもそも株式を含むファンドを持つべきか怪しい。 暴落から回復を待つ時間がないなら、値動きの大きい株式の比率は下げるのが筋。バランスファンドの「株式部分」すら重いことが多いはずです。

この2つを通り抜けて、なお検討対象に残るのは——①運用期間が短く、②生涯投資枠を埋めきれないと確定していて、③それでも資産の半分ほどは株式でリスクを取りたい

この3つをすべて満たす、ごく一部の人だけです。裏を返せば、20年・30年という時間がある大半の人にとって、答えは変わりません。

👉 僕はこう線を引きます。 「期間が短い」「自分の握力では株100%がきつい」と感じるなら、リスク資産(株式)に入れる金額そのものを減らし、余った分を現金(個人向け国債を含む)に置く。NISAの中に債券を混ぜてリスクを薄めるのではなく、NISAの外で現金を厚くして総量を調整する。場所を間違えなければ、保守的な設計はまったく正しい選択です。

まとめ:債券が悪いのではなく、「NISAという器に入れない」だけ

最後に整理します。

  • 投資は「攻め/守り」ではなく、必要なリスクをトータルで設計するもの
  • リスク量は商品の種類ではなく、リスク資産(株式)に入れる金額で調整する
  • その設計上、仮に債券的なものが必要でも、NISAに入れるのは2つの意味で非合理
  • ①非課税の枠を、低リターンの債券に使うのはもったいない
  • ②バランスファンドで持つと、債券部分にまで毎年コストを払う=低コストの原則に反する
  • リスクを下げる調整は、非課税枠ではなく現金(無リスク資産)で。その置き場として個人向け国債変動10年はアリ

誤解しないでほしいのは、債券そのものが悪いわけではないということです。

問題なのは、それを「NISA」という、利益を非課税で最大化するための器に入れてしまうこと

器の使い方を間違えなければ、債券にも居場所はあります。それはNISAの外、現金の置き場としての国債です。

「2027年から債券入り投信が買えるようになる」というニュースに、もう揺れる必要はありません。

あなたがやることは変わりません。

NISAではリスク資産(株式)を非課税で育て、リスクを下げる調整は外側の現金で行う。 それだけです。

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この記事で繰り返し使った「リスク資産(株式)と無リスク資産(現金・個人向け国債)を分けて設計する」という考え方は、もともとこの一冊から学びました。インデックス投資の超王道を、これ以上ないほどシンプルに教えてくれる、資産形成の土台になる本です。

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本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資・保険の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。

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この記事を書いた人

ファイナンシャルプランナー(FP技能士)|東証プライム上場企業の会社員。
40代から資産形成に本気で取り組み、1年で純資産1000万円増を達成。
「今さら遅いかも…」と不安な方へ、データと実体験に基づく合理的な資産形成を発信しています。

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