「55歳で、年収が3割減る」。
これは事故ではありません。
多くの会社で、制度か賃金カーブのどちらかに最初から書き込まれている”予定”です。
もしあなたの積立計画が「60歳の定年まで今の給料が続く」前提で組まれているなら、この記事は先に読んでおいた方がいいです。
積める期間を、5年間違えている可能性があるからです。
この記事では、役職定年で実際にどれくらい下がるのかを数字で確かめ、収入の崖が「2段」あることを見た上で、積立の終点を「定年」から「役職定年」へ前倒しする逆算のやり方を書きます。
まだ迎えていない人は、このまま読み進めてください。
もう迎えた人は、「役職定年になってからでも間に合うこと」の章から読んでください。
設計図は同じ1枚で、入る場所が違うだけです。
👉 積める期間は、定年までではなく役職定年まで。5年短い前提で逆算し直すと必要な月額は増える。だから今が、あなたの人生でいちばん”積める”時期です。
- 役職定年で年収はいつ・どれくらい下がるのか(人事院・賃金構造基本統計の数字)
- 収入の崖は55歳と60歳の2段。手取りのピークは「今」である理由
- 積立の終点を定年から役職定年へ5年前倒しする逆算と早見表
- もう役職定年を迎えた人が今からできる3つのことと「順番」
役職定年とは|年収はいつ・どれくらい下がるのか
役職定年とは、課長や部長といった役職に年齢の上限を設け、その年齢に達したら役職を外れる制度です。
降格ではなく「制度上の卒業」なので、本人の評価とは関係なく、その年齢が来れば全員が対象になります。
どれくらいの会社にあるのか。
人事院の「令和5年民間企業の勤務条件制度等調査」では、役職定年制を導入している企業は全体の16.7%です。
ただし規模で見ると景色が変わります。
従業員500人以上の企業では27.6%、つまり4社に1社以上にあります。
何歳で外れるのか。
同じ調査で、課長級は「55歳」が40.3%で最多、部長級も「55歳」が33.5%で最多です。
次に多いのがどちらも「60歳」でした。
大企業の管理職なら、「55歳」がいちばん現実的な数字だと思っておいて間違いありません。
では、いくら下がるのか。
ここは調査によって幅があります。
- ダイヤモンドの独自調査では「年収1〜3割減」が53%で最多
- ダイヤ高齢社会研究財団の調査(2018年)では、役職定年を経験した人の約9割が減収
- 役職手当が丸ごと消える会社では、半減に近い人もいる
まとめると、減り幅は「2〜3割が中心、半減する人もいる、ゼロの人はほぼいない」です。
年収800万円なら160万〜240万円、月にして13万〜20万円が、55歳の誕生月を境に消える計算になります。
ここで「うちの会社は役職定年を廃止した」という人もいるはずです。
NECは2021年、大和ハウス工業は2022年に廃止し、同じ流れの会社は増えています。
ただ、廃止された会社でも、給料が55歳から下がらなくなったわけではありません。
それを次の章で確かめます。
👉 役職定年は「あるかもしれない事故」ではなく、大企業の管理職なら「4社に1社で、55歳に予定されている出来事」です。
(20代・30代の読者へ。あなたの親の給料が55歳前後で下がるのは、ごく普通のことです。)
役職定年の先にもう1段|収入の崖は「2段」ある
役職定年の話をすると、多くの人が「55歳で1回下がって、60歳の定年までそのまま」と想像します。
実際は違います。
崖は2段あります。
厚労省の「令和7年賃金構造基本統計調査」で、男性の年齢別の賃金(所定内給与・月額)を見てみます。
| 年齢 | 賃金(月額) | 55〜59歳との差 |
|---|---|---|
| 45〜49歳 | 42万700円 | — |
| 50〜54歳 | 43万7,500円 | — |
| 55〜59歳 | 44万5,600円(ピーク) | — |
| 60〜64歳 | 35万8,500円 | ▲19.5% |
| 65〜69歳 | 30万4,300円 | ▲31.7% |

役職定年制のない会社も含めた平均で、60代前半に2割減っています。
大企業に絞ると(男女計)、55〜59歳の46万5,900円から60〜64歳の35万7,700円へ、▲23%でした。
定年後に再雇用で働く人に絞ると、さらに落ちます。
共同通信のコラム(2026年5月)では再雇用後の年収は平均44%減、日経の調査でも「4〜6割減」が過半数と報じられています。
ここまでを重ねると、大企業の管理職の収入はこう動きます。
- 50〜54歳:ピーク
- 55歳:役職定年で▲2〜3割(1段目)
- 60歳:定年・再雇用でさらに▲4割前後(2段目)
- 65歳:年金へ
年収800万円で当てはめると、55歳で560万〜640万円、60歳の再雇用で330万〜360万円前後。
65歳の年金を待たずに、現役時代の半分以下になる計算です。
つまり、統計上の「55〜59歳がピーク」は、役職定年のある会社の管理職には当てはまりません。
あなたのピークは、55歳ではなく50〜54歳。
読んでいるのが48歳なら、手取りがいちばん多いのは「これから数年」であって、その先ではないということです。
そして厄介なのは、この2段の崖が、支出のピークと重なりやすいことです。
子どもの大学の学費、住宅ローンの残り、親の介護の始まり。
55歳前後は、多くの家庭で「出ていくお金」がいちばん多い時期に当たります。
給料を生む力(人的資本)は、年齢とともに目減りする資産です(会社員が収入を増やす方法は3つしかない)。
その減り始めが、思っているより5年早い。
それがこの章の結論です。
👉 収入の崖は55歳と60歳の2段。あなたが50歳前後なら、手取りのピークは「今」で、この先に増える局面は基本的にありません。
役職定年になってからでも間に合う対策|やりがちな3つの失敗の裏返し
ここは、もう役職定年を迎えた人の入口です。
先に言っておくと、別の設計図は要りません。
後で出てくる図2の3区分のうち、「支える」の区分から入るだけです。
減った後の人がやりがちな失敗は3つあります。
そして、その裏返しがそのまま「今からできること」です。
失敗①:積立を止める
手取りが減った月に、「一旦やめよう」と積立設定を止める。
いちばん多い失敗です。
裏返しは、月額を減らしてでも止めないこと。
55歳から65歳まで、まだ10年あります。
次の章の早見表の「10年」の行を見てください。
年5%の仮置きで、月5万円でも約776万円です。
「減ったからやめる」と「減ったから減額する」は、10年後にまったく違う結果になります。
減った手取りでの月額の決め方と、届かない時の選択肢の順番は、毎月いくら積み立てればいいかの逆算に書いています。
失敗②:減った分を、投資で取り返そうとする
「年収が200万減ったなら、運用で200万稼げばいい」。
この発想が、いちばん危ない。
収入が減ったということは、損をしたときに立て直す力が下がったということです。
リスクを取れる量は、増えるのではなく減る方向に動いています。
この行動は、実際に数字に表れています。
楽天証券の投資信託ランキングは年代別に絞れるのですが(ログイン後に見られます)、2026年8月31日〜9月4日の週の買付金額で、日経平均の値動きを4.3倍に増幅する「楽天日本株4.3倍ブル」は、全体では5位でした。
ところが年代で絞ると、20代では5位以内に入らず、50代で4位、60代以上では3位。
オルカンとS&P500の次に、レバレッジ型が来ています。
収入が減った年代ほど、相場で取り返そうとする買い方をしている。
この1週間だけの数字ですが、僕が見ている限り、この傾向は珍しくありません。
その商品がなぜ長期保有に向かないかは、日本株4.3倍ブルのリスクで書いています。
裏返しは、リスクは金額で調整し、運用資金はそのまま持つこと。
減った手取りで、守りのお金(生活防衛資金と特別費)だけを計算し直す。
運用資金は、増やしも減らしもせず、そのまま市場に置いておく。
取り返しに行かないことが、いちばん取り返せる道です。
この時期は「50代からの資産運用」「退職金の特別プラン」の営業が来る時期でもあります。
「今から挽回」の気持ちで手数料の高い商品を買わないでください(退職金の置き場所/ファンドラップはやめとけ)。
失敗③:生活水準が戻せない
役職手当込みの手取りで組んだ固定費は、手当が消えても自動では消えません。
通信費・保険・サブスク・車。
上がった生活水準を下げるのは、上げるより何倍も難しい。
これは昇給したのに貯まらない理由で書いた「ライフスタイルインフレ」の逆再生です。
裏返しは、固定費を「減った手取り」で作り直すこと。
地味ですが、1回やれば毎月効き続けるので、3つの中でいちばん効きます。
ここまでの3つは、失敗を防ぐ話です。
最後に、攻めの話を1つだけ。
👉 役職定年の後にできる最大の上乗せは、「積む」ことではなく「順番」です。
退職金をいつ・どの形で受け取るか。
iDeCoを一時金にするか年金にするか。
公的年金を65歳からもらうか繰り下げるか。
たとえば退職金とiDeCoの一時金は、受け取る順番と間隔によって、税金がかからない枠の使える額が変わります。
同じ資産でも、順番で手取りが変わる。
積む力が落ちた後は、ここが主戦場です。
順番の設計はそれだけで1本の記事になるので、ここでは「順番で手取りを作れる」ことだけ持ち帰ってください。
設計図は資産運用の出口戦略にあります。
役職定年までに資産形成を「完成」させる|積立の終点を5年前倒しする逆算
ここからが、まだ迎えていない人の本編です。
結論を先に書きます。
積立の終点を、「定年60歳」から「役職定年55歳」に書き換えてください。それだけで、あなたの計画は現実に合います。
資産形成の期間を、3つに分けて考えます。

- 積む(〜役職定年):毎月積める金額がいちばん大きい時期。運用資金を目標額まで積み終える
- 支える(役職定年〜定年):積立は減額してでも続け、取り崩しはしない。減った手取りで回る固定費に作り替える(前の章の話)
- 取り崩す(定年〜):受け取る順番を設計して使う(出口戦略)
多くの人が間違えるのは、「積む」の終点を定年に置いていることです。
役職定年があると、「積む」は55歳で終わり、55〜60歳は「支える」に変わります。
積立を増やせる時期は、思っているより5年短い。
5年の差がどれくらい効くのか、早見表で見ます。
年利5%を仮置きし、毎月積み立てた場合の到達額です(税・コスト未控除の概算。将来の利回りを約束するものではありません)。
| 残り年数 | 月5万円 | 月10万円 | 月15万円 | 月20万円 |
|---|---|---|---|---|
| 5年(50→55歳) | 340万円 | 680万円 | 1,020万円 | 1,360万円 |
| 7年(48→55歳) | 502万円 | 1,003万円 | 1,505万円 | 2,007万円 |
| 10年(45→55歳) | 776万円 | 1,553万円 | 2,329万円 | 3,106万円 |
読み方はこうです。
48歳・月10万円・「60歳まで」の計画なら、残り12年で到達額は約1,970万円でした。
同じ月10万円で終点を55歳にすると、7年で約1,000万円。
970万円足りません。
「55歳で積み終えた分を60歳まで置いておけば増えるのでは」と思うかもしれません。
置いておいた5年分の運用益を足しても約1,280万円で、差は埋まりません。
この差を埋める選択肢は3つです。
①今のうちに月額を上げる。
②目標額を見直す。
③働く期間を延ばす。
そして、選んではいけない4つ目が「運用利回りを上げにいく」です。
減った分を相場で取り返そうとする話は前の章で書いたとおりで、ここでも同じです。
同じ1,970万円を7年で積むなら、必要なのは月約20万円。
ほぼ2倍で、「無理だ」と感じる人が多いはずです。
ただ、無理だと分かるのが48歳か55歳かで、残っている選択肢の数が違います。
55歳で気づいた人に残っているのは、③働く期間を延ばすことだけです。
①は毎月積める金額がもう落ちていて選べず、②は目標を削るしかない。
だから多くの人が「定年後も働くしかない」に着地します。
48歳で気づけば、①②③を組み合わせられます。
教育費が終わる年から月額を上げる、目標を少しだけ下げる、働く期間を1〜2年だけ延ばす。
組み合わせれば、どれも極端にならずに済みます。
早く気づく価値は、月額を2倍にできることではありません。「働く期間を延ばす」以外の選択肢が、まだ選べる状態にあることです。
選択肢が複数ある状態は、待っていても来ません。
自分で設計するものです。
自分の数字で計算したい人は、年齢別貯蓄目標のシミュレーターで「目標年齢」を60ではなく55にして、逆算してみてください。
出てきた月額が家計に入らない時の選択肢の順番も、同じ記事の後半にまとめています。
ただし、「終点は55歳」は全員に同じではありません。
会社と家計の条件で、こう変わります。
- 役職定年制がある会社:終点=その年齢。就業規則で年齢と減額の目安を確認する
- 制度がない・明記がない・廃止済み:終点=55歳で仮置きする。制度がなくても賃金カーブは下がる(僕自身がこのケースです。次の章で)
- 住宅ローンが60歳以降に残る:「支える」期の固定費がいちばん重くなる要因。繰り上げ返済か投資かは、今の手取りではなく「役職定年後の手取り」で計算し直す
- 教育費が55歳前後に重なる:積立の終点をこれ以上前倒しできないなら、教育費は別枠で先に確保する
最後に、リスクの話を1つ。
役職定年が近づくと「守りに入って運用資金を減らそう」と考える人がいますが、僕はそこは動かしません。
減った手取りで計算し直すのは、生活防衛資金と特別費という「守りの金額」のほうです。
守りを先に確保し、残りの運用資金は市場に置いたまま。
役職定年の前後で変えるのは守りの計算であって、運用資金の中身ではありません。
👉 積立の終点を5年前倒しすると、必要な月額は増える。それを55歳で知れば残るのは「働く期間を延ばす」だけ、今知れば選択肢を組み合わせられる。その差が、この記事のすべてです。
僕の場合|役職定年の年齢は就業規則に書いていない。それでも「55〜60のどこかで下がる」前提で組んでいる
ここで一つ、僕自身の話をします。
僕は47歳で、東証プライム上場企業の中間管理職です。
この記事を書くにあたって就業規則を確認しましたが、役職定年の年齢は明記されていませんでした。
それでも、55〜60歳のどこかで給料が下がることは、社内の誰も疑っていません。
「60歳からの再雇用も含めると、めちゃくちゃ減るらしい」。
この話は、具体的な金額と一緒に語られることはほとんどないのに、”空気”としては全員が知っている。
統計と体感が、きれいに一致しています。
退職金は、今の時点でいくらになっているかを年に1回確認できる仕組みですが、役職定年の後にその増え方が鈍るのかは、確認できていません。
退職金が最終給与に連動する会社なら、役職定年で年収だけでなく退職金まで減ります。
自分の会社がどちらの型かは、役職定年の年齢と一緒に確認しておく価値があります。
もう一つ、数字ではなく観察の話です。
昔から、僕は「しっかりしている人ほど、早く辞めている」という印象を持っていました。
役職定年を待って、減った給料で残る人。
出向して働き続ける人。
その人たちに対して今の僕は、「なんでそこまでして働いているんだろう」と感じることがあります。
ただしこれは、その人たちへの批判ではありません。
自分への問いです。
自分がその年齢になったとき、給料以外の理由で働いていると言えるか。
設計が終わっていなければ、僕も減った給料で辞められない側になる。
そこが分かれ目です。
だから僕は、積立の終点を役職定年に置きます。
55歳で辞めるためではありません。
55歳になったとき、働く理由を給料以外から選べる状態にしておくためです。
僕自身は50歳でのサイドFIREを目標にしていますが、「役職定年から逆算した結果」というほど論理的なものではありません。
逆算してみたら、待つ理由が見当たらなかった。
それくらいの感覚です。
この設計図は辞めるためのものではなく、「待つ」か「選ぶ」かを自分で決められる状態を作るためのものです。
まとめ|役職定年は「予定」だから、設計できる
この記事の要点を3つに絞ります。
- 役職定年の減り幅は2〜3割が中心、半減する人もいる。大企業の管理職なら4社に1社で、55歳に予定されている
- 収入の崖は55歳と60歳の2段。50歳前後のあなたの手取りは、今がピーク
- 積立の終点は定年ではなく役職定年。5年前倒しで逆算すると必要月額は増える。それを今知ることに価値がある
まだ迎えていない人が明日からやることは、3つです。
- 就業規則で、役職定年の年齢・減額の目安・退職金が最終給与に連動する型かを確認する(明記がなければ「55歳・▲25%」で仮置き)
- シミュレーターの「目標年齢」を55に書き換えて、必要月額を出し直す
- 55歳以降の固定費表を「減った手取り」で作り直す(ライフプラン表の作り方)
もう迎えた人がやることも、3つです。
- 積立額を減らしてでも、設定を止めない
- 固定費表を、今の手取りで作り直す
- 退職金・iDeCo・年金の「受け取る順番」の設計へ進む(出口戦略)
👉 役職定年は事故ではなく予定です。予定なら、設計できます。設計が終わっていれば、55歳は「待つ」日ではなく「選ぶ」日になります。
📚 “役職定年で減るのは何か”が腑に落ちる1冊
※ 下記リンクは成果報酬型広告です。遷移先はAmazon・楽天の公式サイトです。
橘玲さんはこの本で、人生の土台を「人的資本・金融資本・社会資本」の3つに分けて考えます。
役職定年で減るのは、このうち人的資本です。この記事で書いた「積む→支える→取り崩す」は、人的資本が減る前に金融資本へ積み替えておく設計そのものだと、読み返して気づきました。
僕がこの本を読んで変わったのは、「働く理由」を給料だけで考えなくなったことです。
役職定年を「待つ」か「選ぶ」かという問いは、3つの資本のうちどれで生きるかを自分で決める話でもあります。
関連リンク【PR】
※ 下記リンクは成果報酬型広告です。遷移先は楽天証券・楽天カードの公式サイトです。
楽天証券で口座を開く(無料)
積立の終点までに運用資金を積み終えるなら、器はNISAの低コストなインデックスファンドです。手数料の安さと積立設定のしやすさで、長期の積立にも使いやすい証券会社です。
▶ 公式サイトで口座開設積立投資のカード決済でポイントが貯まります。
楽天カードを申し込む(無料)※広告
関連記事
積立の終点を55に置き換えて、自分の必要月額を出し直すシミュレーターはこちらです。

役職定年の後に効く「受け取る順番」の設計図です。

役職手当込みで組んだ固定費が戻らなくなる仕組み、ライフスタイルインフレの話です。

本記事は筆者の個人的な見解・実体験にもとづく情報提供を目的としており、投資・保険の勧誘を目的としたものではありません。投資にはリスクが伴います。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。特定の金融商品・サービスの購入を推奨するものではありません。
